海外展開企業向け会計&税務情報

日本の非居住者が株式譲渡した場合の課税対象

2018/05/11

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会社の経営権を比較的簡単に買い手に譲渡できる株式譲渡。その譲渡所得にはもちろん課税がなされますが、日本に居住していない場合の課税はどのようになるのでしょうか?

そもそも非居住者とは何か、日本の非居住者が日本国内の株式を譲渡した場合の課税対象はどうなるのかなど、ご紹介していきます。

 

■非居住者とは「1年以上海外転勤等により出国した者」

 

日本の所得税法では、国内に1年以上生活の本拠地がある人を「居住者」と呼び、それ以外の人を「非居住者」と呼んでいます。つまり、非居住者とは、1年以上海外転勤する予定の給与所得者等のことを指します。かなりざっくり言うなら、「1年以上日本国外に住む人」というイメージです。

 

■日本の非居住者が日本国内の株式を譲渡した場合、課税される6つの条件

 

日本国内にPE(恒久的施設)を持たない日本の非居住者が国内株式を譲渡した場合、特定の場合以外は日本では課税されません。

では、その課税されてしまう条件はどういったものなのでしょうか。

その6つの条件を見ていきましょう。

(1) 買集めによる株式等の譲渡

(2) 事業譲渡類似の株式等の譲渡

(3) 税制適格ストックオプションの権利行使により取得した特定株式等の譲渡による所得

(4) 不動産関連法人の一定の株式の譲渡による所得

(5) 日本に滞在する間に行う内国法人の株式等の譲渡による所得

(6) 日本国内にあるゴルフ場の株式形態のゴルフ会員権の譲渡による所得

上記(1)~(5)に該当する場合は、申告分離課税で15%所得税が、(6)については総合課税として最高税率45%の所得税が課税されます。住民税は非居住者なのでかかりません)。しかし、このうちいずれにも該当しない株式譲渡であれば、日本では課税されません。

また一部では、そのうえ「シンガポール居住者であれば、シンガポールでも株式譲渡所得に課税されない」という説があります。本当にそうなのか、以下でご紹介していきます。

ただし、2016年7月1日以後に国外転出をする一定の居住者が1億円以上の有価証券等を所有している場合には、その含み益に所得税が課税されますので注意が必要です。

 

■シンガポール居住者になれば、株式譲渡所得に課税されない場合もある

シンガポールでは、株式譲渡がキャピタルゲイン(株式や債券を売却したことにより得た利益)に当たる場合には課税しないことになっています。キャピタルゲインの定義ははっきりしていませんが、過去の判例から「保有期間や取引の継続性」「株式購入時の動機」「売却理由」などにより判断される可能性が高いと言えます。

また、日星租税条約第13条第5項によると、『1から4までに規定する財産以外の財産の譲渡から生ずる収益に対しては、譲渡者が居住者である締約国においてのみ租税を課することができる。』とあります。

(「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定 第13条第5項」より引用 http://www.houko.com/00/05/H07/008.HTM)

つまり、第13条1項から4項に該当しなければ、原則として居住地国においてのみ、課税することができるということなので、「シンガポールでのみ課税される=キャピタルゲインなので非課税」となり、この場合は日本からもシンガポールからも非課税となります。

その第13条1項から4項のうち、特に株式譲渡に関する4項は以下の通りです。

4 2の規定が適用される場合を除くほか、

(a) 一方の締約国内に存在する不動産を主要な財産とする法人の株式(公認の株式取引所において通常取引されるものを除く。)又は一方の締約国内に存在する不動産を主要な財産とする組合、信託若しくは遺産の持分の譲渡から生ずる収益に対しては、当該一方の締約国において租税を課することができる。

(b) 一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の株式の譲渡によって取得する収益に対しては、次のことを条件として、当該他方の締約国において租税を課することができる。

(i)当該譲渡者が保有し又は所有する株式(当該譲渡者の特殊関係者が保有し又は所有する株式で当該譲渡者が保有し又は所有するものと合算されるものを含む。)の数が、当該課税年度中又は当該賦課年度に係る基準期間中のいかなる時点においても当該法人の株式の総数の少なくとも25パーセントであること。

(ⅱ)当該譲渡者及びその特殊関係者が当該課税年度中又は当該賦課年度に係る基準期間中に譲渡した株式の総数が、当該法人の株式の総数の少なくとも5パーセントであること。

(「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定 第13条第1~4項」より引用 http://www.houko.com/00/05/H07/008.HTM)

これらに該当せず、譲渡所得がキャピタルゲインと認められれば、日本からもシンガポールからも課税されません。

非居住者の場合、株式譲渡をしても一定の条件に当てはまらなければ課税されない場合があります。中でも、シンガポール居住者の場合は、さらにシンガポールからも課税されない場合があります。ただし、これらの条件判断はかなり複雑であるため、実際に株式譲渡を行う際には必ず事前に専門家に相談しましょう。

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