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後継者育成の成功のコツをステップごとに解説

記事作成日2017/12/16 最終更新日2022/09/28

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自社を引き継ぐ後継者育成の目処は立っていますか。

「後継者を引き受けてくれそうな身内も従業員もいない」「そもそも後継者が務まる候補が見つからない」といった理由から、後継者育成を後回しにしている中小企業もあるのではないでしょうか。後継者育成は会社の存続を左右する重要な業務です。いずれ決断のときがやってくる事業承継に向け、会社を任せられる適任者を代表者自ら育てていきましょう。

この記事では、新たに後継者育成を実施したいと考えている方へ向けて、後継者育成を成功させるためのコツや重視するべきポイントを解説します。社内外から自由なスタイルで後継者を選出できる現代だからこそ、代表者が真に信頼できる人材を適任者へと成長させる意識が大切です。

目次

少子高齢化に伴い後継者不足が騒がれている

顕著な人手不足など、随所で問題視される少子高齢化。日本の経済を支える中小企業にも、少子高齢化による影響が出ています。少子高齢化により生産年齢人口が減少傾向にある日本では後継者不足となる産業が後を絶たず、将来が危ぶまれる中小企業が増加しています。

東京商工リサーチが2019年に行った「後継者不在率」調査によると、後継者が定まらないまま企業活動を行う中小企業は、中小企業全体の55.6%を占めると言われています。

特に、後継者不在率が高い産業には「情報通信業」「サービス業他」「小売業」などが挙げられます。

後継者不在率が高い産業TOP3

産業 不在率
情報通信業 74.1%
サービス業他 61.6%
小売業 59.3%

参照元:2019年「後継者不在率」調査(東京商工リサーチ)

「情報通信業」では、比較的若年齢の代表者が多いことはうなづけますが、「サービス業他」と「小売業」においては、高齢の代表者も多く、後継者不在が事業の存続に支障をきたしているのが現状です。

実際、同社の調査により明らかとなった2018年の「休廃業・解散」した企業数は、過去もっとも多い46,724社。後継者不足によりサービス業や小売業の衰退が続けば、国内市場や経済にも悪影響が出ることが想定されるため、後継者不在で企業活動を続けている中小企業は、今のうちから会社の存続に向けた中長期的な後継者育成を進める必要があります。

事業承継による会社の存続には緻密な準備が必要となることから、代表者が高齢を迎えるまでに後継者を確定させ、承継準備を進めていくことが理想です。なかでも、「代表者が50代以上で後継者不在のまま企業活動を続けている中小企業」は、事業引継ぎまでに時間的余裕がある段階から後継者育成に力を入れ、納得いく形で会社を引き継げるよう計画しましょう。

以下では、後継者育成におけるコツを解説していきます。

後継者育成において大切なこと:急がない

後継者育成にかけられる時間的な猶予が短い企業ほど、「とにかく早く後継者を」と考えがちですが、後継者育成はスピードよりも質を重視し、急がないことが大切です。通常、後継者に事業を承継する際は5年ほどの準備期間が必要です。おおまかな内訳として、後継者としてのマインドセットや現場感のを養うのに2年程度、企業体制や経営にかかわる仕組みの教育に3年程かかるといえます。

このことから、後継者育成には長期に渡る育成が必要になるため、現代表者の引退時期が決定した段階から、後継者育成を意識した教育を進めていくことが重要となります。

例えば、現在45歳の代表者が65歳で引退する場合、後継者育成にかけられる時間は20年です。この期間により理想に沿った後継者を育成し、後継者としての責任感を持ってもらうことが重要となります。会社を引き継ぐ後継者を選出する際、条件が異なる以下の従業員から、誰を後継者に選出したいと感じるでしょうか。

・新卒入社から順調にキャリアアップを重ね、中間管理職に就く従業員
・新卒入社後、優れた成績でスピード出世した従業員
・会社の経営理念に深く賛同し転職した従業員

事業を承継する後継者には、会社の現場感を把握すると同時に後継者としての思考を持ってもらいたいものです。上記の従業員は全員、育成次第で後継者候補となれる素質を秘めています。現在の従業員が数十年あるいは数年かけて積むことのできるキャリアにおいて、後継者育成のための教育体制が整っているか、今の段階から環境を見直していきましょう。

代表者が重視する考え方や経営理念はできる限り時間をかけて従業員に引き継ぎ、能力や肩書きだけにとらわれない後継者育成を行うことが大切です。

後継者育成において大切なこと:柔軟な思考を

業態にもよりますが、通常、一般社員が会社でキャリアを積んでいくと以下のようにキャリアアップできます。

【 一般社員 → 主任 → 係長 → 課長 → 部長 → 役員 】

なかには、転職や人事異動によりいくつかの役職を飛ばして部長や役員となるケースもあるでしょう。管理職経験が浅い従業員を後継者にする場合、会社のトップに立つ人間としてのマインドや現場感覚が養われておらず、理想とするイメージだけが先行してしまう可能性があります。

後継者候補の従業員が会社のトップに相応しい人間性を持つためには、後継者育成の計画において従業員の素質をしっかりと見極め、どのような育成が適しているのか慎重に決定することが望ましいです。

後継者候補として選出した従業員を社内で教育する際は固定観念や経営に関する知識ばかりを優先せず、後継者自身が柔軟な思考を持てるよう人間性を養う教育を施しましょう。具体的には、以下のような人間性・スキルが身につく教育体制を整えることが大切です。

〈後継者候補の従業員に求める人間性や・スキル〉

・他者をまとめられるリーダーシップ

リーダーシップがとれる人というのは、周囲の人間から賛同・協力されるだけの魅力があります。会社のトップに立つ以前に、共に働く仲間として魅力に溢れているか、信頼性はどうかといった点を確認しましょう。

・責任感ある行動力

会社や部下の責任を自ら負えるような高い責任感を持ち、問題解決に向けて自主的に発言・実行できるだけの行動力があることが理想です。

・物事を客観的に捉えられる視点

会社のトップとして重要な判断が求められるとき、冷静かつ客観的に物事を見る視点が必要です。また、社内で起こる小さな問題や現場から生まれる貴重な意見を見落とさずに聞き入れるためにも、客観的な視点が欠かせません。

・夢や目標を形にする創造力

会社のトップになると先代から受け継いだ夢や目標を、自らが創り出すビジョンで実現していく必要があります。会社・顧客・社会に対して明確なビジョンを提示し、人の心を動かすだけの熱量ある創造力を持つことが大切です。

・円滑な人間関係を育むコミュニケーション能力

優れたコミュニケーション能力を培うには、テクニックだけでは補えない、深い自己理解や他者への理解が必要です。

後継者育成において大切なこと:社外で経験を積ませる

社内における後継者育成では、主に現代表者の思考や経営理念、業務内容への理解を深めさせることができます。自社についての理解を深めることは事業承継に向けて欠かせませんが、会社のトップに相応しい成長を遂げるには社外で経験を積むことがおすすめです。社外では、社内教育では得られない以下のような要素を伸ばすことができます。

〈社外教育で伸ばせる要素〉

・自社にない業務プロセスや専門知識

一定期間、他の企業で業務経験を積むことで自社にない業務プロセスや専門知識が身につきます。同業種であれば習得したスキルを自社で活かすことができ、他業種であれば新たな視点の発見や事業開拓に役立てられます。また、他企業で形成した新たな人脈は取引先に発展する可能性もあるため、事業承継後の恩恵も大きいといえます。

・コミュニケーション能力の向上

社外の人と交流することで会社のトップに欠かせないコミュニケーション能力を養うことができます。社外セミナーや講習会では体系的な学習をつうじて創造力を刺激でき、同じ志を持つ後継者候補の人たちと情報交換を行えます。

社外で積む経験や知識は、社内教育と並行して取り入れることで会社のトップとしてのマインドセットに役立つといった相乗効果も期待できます。後継者育成に役立つ社外セミナーや講習は以下のような機関で開催されているため、計画的に利用することがおすすめです。

〈後継者育成に向けたセミナーの開催場所〉

・民間の専門機関
・金融機関
・中小機構
・商工会議所 など

〈セミナー・講習会の主な内容〉

・組織づくり
・財務管理
・経営戦略
・リーダーシップ研修
・マネジメント研修 など

後継者育成において大切なこと:まずは小さな成功から

会社のトップとなる素質を持つ従業員を発掘し、教育体制を整えて後継者育成を行えば事業承継が成功するかというと、一概にその限りではありません。

例えば、後継者候補となる従業員に重圧がかかれば精神的なプレッシャーから事業承継に消極的になります。通常の業務と並行したハードな教育プログラムでは、肉体的・精神的な負担から心が折れてしまう可能性もあるでしょう。教育と称して慣れない業務や管理を任せることも、事業承継への意欲を削ぐ要因となるため注意しましょう。

後継者育成では候補者となる従業員のキャパシティとメンタルヘルスを考慮し、小さな成功体験をさせることでスキルアップを見込めます。

具体的には、以下のような環境を重視した教育プログラムを計画することがおすすめです。

・後継者候補となる従業員が意見しやすい風土づくり

代表者が従業員を先導するリーダーシップスタイルの中小企業は多くあります。現場の従業員が上司や代表者に意見を主張しやすい環境が整っていれば、従業員が持つ悩みの早期発見につながり、精神的な負担を軽減させられます。従業員の働きやすさや職場環境を見直し、スキルアップを目指すためのモチベーションを保てる風土を目指しましょう。

・成功の瞬間に立ち会わせる

成功経験に乏しい従業員を成功の瞬間に立ち会わせることで、上に立つ人間の姿勢やマインドを従業員が吸収しやすくなります。成功の瞬間に立ち会うことは、代表者の思考や経営理念への理解を深めることにもつながります。

・自ら成功することを体験させる

現場で利益が生まれる瞬間を従業員自ら作り出すことができれば、次の成功を生むための原動力になります。無理のない範囲で、かつ自信につながる成功を体験させ、「どうすれば成功につながるのか」「どうすればもっと大きな成功を成し遂げられるのか」と、従業員が自主的に成長しようとする姿勢を維持させることが大切です。

後継者育成において大切なこと:社内の体制を整える

中小企業で後継者育成を実施する際は、代表者と後継者候補だけでなく、会社全体で教育体制を整える必要があります。一般社員である後継者候補をキャリアアップさせて後継者育成を行う場合、先に挙げた各役職を実際に経験させ、業務への理解を深めさせる必要があるためです。

ただし、キャリアアップの過程で営業活動や経営にまつわる経験しか積むことができないと、経理や人事など基幹部門を支える業務内容や役割について適切な理解を得にくくなります。

このようなことから、後継者育成は単なるキャリアアップと異なり、会社全体の業務内容や役割を網羅的に深く理解させることが大切です。育成の過程では実際に各部門に一定期間以上配属し、各現場において適切な教育者を設置することが望ましいです。

以下では、後継者育成のために見直すべき社内の体制を確認しておきましょう。

・各部門に適切に権限が分散しているか

組織上必要な部門ではあっても、実際は代表者が管理している、意思決定しているといった部門があれば、該当部門は適切に機能しているとはいえません。各部門のトップとなる役職者に適切な権限と責任を与えましょう。

・役割が不明確な部門が設置されていないか

役割や業務が不明確で企業活動に不必要な部門が設置されていれば、廃止します。これにより人員を適切に配置でき、不足する教育者や役職者を補うこともできます。

・各部門の人材配置や稼働状況は適切か

能力ある従業員が効率的にキャリアを重ねられていないなど、人材の配置が適切でない場合は組織の力を最大限発揮できていない可能性があります。人材の配置が適材適所となるよう人材の配置を見直し、部門ごとの能力を高めることで経営戦略を立てやすい風土を作りましょう。

後継者育成において大切なこと:経営理念・ビジョンの見直しを行う

創業時、創業者により作られる経営理念は、基本的に変わることはありません。しかし、時代や市場の変化とともに経営理念や経営ビジョンの見直しを行う企業も増えてきています。なかでも事業承継は経営理念や経営ビジョンの見直しを行うタイミングとして最適で、現代表者の意思や思考を引き継いだ見直しができると、後継者育成では以下の点で良い影響を与えやすくなります。

・会社についての理解を深めるきっかけになる

創業当時より引き継がれた経営理念や経営ビジョンの歴史を知ることで、会社への理解が深まります。「先代が受け継いできたバトンを引き継ぐのは自分だ」という認識が高まると責任感や使命感が生まれ、事業承継に前向きな姿勢を持たせることができるでしょう。

・自主的に企業目標を意識させられる

経営を握る会社のトップとしての強い責任感が生まれると、新たな経営理念や企業目標を自主的に意識できるようになります。教育の過程で見えた会社の課題や社会における存在意義を考え、後継者自らが会社のさらなる発展を目指せます。

・計画的かつ現実的なビジョンを創造させられる

後継者自身が考案した経営理念や企業目標は、企業活動において大きな原動力になります。現実的で創造力豊かな経営ビジョンを立案できれば、後継者としての一歩を踏み出せます。

後継者不在の状況が続いてしまう背景には、現代表者の経営に対する姿勢も影響している場合があります。

例えば、「創業当時から受け継がれてきた経営理念を変えるつもりがない」「自分を超える人材(後継者候補)が見つからない」といったように、過去や自身を比較対象として変化を拒んでしまうと、後継者育成を進めることが難しくなってしまいます。

引退を見据えて会社の存続を願うのならば、代表者としての責任を全うするよりも「会社をもっともよく知る理解者」としての立ち位置を意識し、後継者育成をサポートしてみてはいかがでしょうか。

経営理念について詳しく知りたい方は以下をご参照ください。⇒理念・クレド導入コンサルティング

後継者育成において大切なこと:右腕(補佐)の育成・採用も忘れずに

自身の右腕といえる信頼の厚い従業員はいませんか。引退・事業承継により後継者を育成する際は、次の会社のトップとなる後継者の補佐役にあたる人材の育成も忘れずに行いましょう。こうした人材は後継者にとって唯一の同志となり、次世代の企業活動を支える重要な存在です。

時期としては、事業承継により自身が引退をした後に、後継者をサポートできるチームが確立している状態を目安にしましょう。社内に適切な人材がいない場合は今の段階から新たな人材の採用に力を入れ、後継者育成と並行して教育体制を整えていくことが大切です。

また、現代表に右腕と呼べる存在がいるのならば、事業承継と同時に引退ができると、後継者率いる新たなチームとの衝突を未然に防ぐことにつながります。後継者にとって尊敬すべき存在といえる現代表の右腕が事業承継後も現役で残る場合、右腕が実質的な権限を握ってしまう可能性があるためです。

こうした状況は会社内に派閥や確執を生みやすく、円滑な企業活動に影響をきたす場合もあるため注意しましょう。会社内で権力が分散すると、右腕を務めていた役員による指示と後継者による指示が異なり、現場の混乱を招く「権力の二重構造」が起きてしまう可能性もあります。

引退・事業承継についての計画を進める際は、現代表と後継者それぞれの右腕の存在を考慮した計画を立案しましょう。

後継者育成における重要なポイント

後継者を選出するにあたり、どのような人物を選べばいいか分からないという方もいるのではないでしょうか。一般的に、事業を承継させる後継者には以下の選択肢があります。

・血縁者や親族

息子や娘、娘婿や甥などを後継者に選定します。多くの中小企業では血縁者への事業承継が行われていますが、血縁者にあたる子孫が複数いる場合は後継者の座をめぐるトラブルに発展させないよう配慮することが大切です。また、後継者を血縁者や親族から選出する際は候補者の意思に反した一方的な決定とならないようにすることも重要です。

・社内の役員や従業員

後継者に相応しい血縁者や親族がいなくても、役員や従業員から候補者を選定できます。実際の業務成績から優れた素質や経営能力が認められる場合は、後継者候補としての育成に力を注ぎ、事業承継に向けた準備を進めましょう。

ただし、社内の人材を後継者として選出する場合、現代表が所有する株式や債権、事業用資産などの譲渡で資金的な問題が生じる可能性があります。社内の人材を後継者にする計画では、事業を承継させるために必要な資金面の配慮も忘れずに行いましょう。

・外部の人材

血縁者や社内の役員に後継者候補が見つからない場合、外部の人材を後継者に選出することも可能です。主要取引のある金融機関や業務上の取引先、コンサルタントなどそのジャンルは多岐にわたりますが、いずれの人材も代表者や会社から見て「第三者」であることから、客観的な視点で理論的な経営を行える人材といえます。

また、他の企業で代表者を務めた経験があるなど、経営にかかわる専門知識を持った人材を見つけることもできます。

後継者は社内の人間にこだわる必要はありません。役員や勤続年数の長い従業員が会社への理解が深いとはかぎらないため、経営の安定や企業の成長を目指すのならば、経営者として高いポテンシャルを持った外部の人材を候補に加えることもおすすめです。後継者選出や後継者育成に不安があれば、税理士やコンサルタントの力を借りて適切なアドバイスを受けましょう。

まとめ

少子高齢化により、中小企業を先導する代表者の高齢化、生産年齢人口の減少が問題視されています。後継者不在で役員の高齢化が進めば、企業の存続が危ぶまれる事態に発展するためです。後継者育成では十分な時間をかけて風土づくりや組織の見直しなどを行い、会社全体の体制を整備していくことが必要です。

中小企業のオーナーなどはこうした組織改革に大きな時間を取れないケースが多いため、将来を見据えた事業計画を進めるなら、TOMAが提供する事業計画策定セミナーを利用してみてはいかがでしょうか。当セミナーでは、経営・財務・企業再生を軸に、経営理念や経営ビジョンの見直しを含めた事業計画の策定をサポートいたします。

経営計画に関する情報収集

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