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人手不足の原因と中小企業が実施するべき対策

記事作成日2020/07/17 最終更新日2021/10/08

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近年、人材不足という課題に直面している企業が増えています。そして、中小企業においてはその傾向が特に顕著といえます。この記事では人材不足がおこる背景とその対策についてお伝えしていきます。

人手不足はなぜ起こる?

人手不足の原因①生産年齢人口の減少

一般的にいわれている人材不足がおこる背景として、人口の減少、特に主な労働力の担い手といえる生産年齢人口(15歳~64歳以下)の減少があげられ、この傾向は今後益々加速していくことでしょう。

人手不足の原因②就労者数は増加傾向

しかし、その一方で実際に働いている就労者の数は近年増加している傾向にあります。以下は就業者数と就業率の推移です。

増加の要因として、「シニア」、「女性」があげられます。定年の延長・再雇用、共働き世帯の増加などにより労働人口は実は増えているのです。この場合は就労時間や業務内容が限定的な働き方であることが大半だと考えられますが、今後この傾向は益々、顕著になっていくのではないでしょうか。

人手不足の原因③求人倍率は高止まり

働き手側から見ると労働人口が増えていることがわかりました。では、企業側からみた場合はどうでしょうか?

以下は失業率と有効求人倍率の推移です。失業率はリーマンショックがあった時期をピークに年々減少していますが、求人倍率は逆に増加しています。

人手不足の原因④中小企業の人材不足が顕著

次に従業員規模別の求人数をみてみましょう。
1~29人の企業が右肩上がりなのに対して、500人以上の企業はほぼ横ばいなのがわかります。
このことから人手不足は特に規模の小さい会社ほど人材不足であると推察できます。

では、実際に中小企業経営者が人手不足について、自社の状況をどのように認識しているのでしょうか?

以下は中小企業基盤整備機構が中小企業の経営者等約37,000人にとったアンケートです。
7割以上が人手不足を実感しており、そのうちの半数以上が深刻な状況であるという結果が出ています。

中小企業に人員不足がもたらす影響

ここまでで、中小企業が人員不足に直面しているという事を紹介してきました。
それでは、人手不足が企業にあたえる影響とはどのような事が考えられでしょうか?

先の中小企業基盤整備機構のアンケートによると「人材の採用が困難」、「売上減少」、「商品・サービスの質の低下」が上位となっています。

「人手不足倒産」といった最悪の事態に陥る前に対策を考える必要があります。

人手不足対策~労働力不足を乗り越えるために必要な事~

人手不足を解消する為の対策を、「採用」と「既存社員」という視点から紹介していきます。
・採用について
・既存社員について

人材採用の方法

まずは採用の方法について、主だったものを以下に整理しました。
自社の状況や予算に合わせて、どの方法を選択するかを検討しましょう。

・自社WEBサイトの採用ページ
とくに費用がかからないが
WEBサイトへのアクセス数が少ないと効果は期待できない

・ハローワーク
公的な機関の為、費用が掛からないが
近年では活用している求職者が少ない為、あまり効果は期待できない

・求人サイト
近年では最も主流な方法。多くの求職者は転職サイトを活用している
掲載料がかかり、競合が多いため、求職者の目に留まり、魅力を感じる求人内容が求められる

・人材紹介会社
求める人材をエージェントから紹介してもらう
入社が決まった時点で紹介料を支払う事が一般的

・リファラル採用
既存社員の紹介による採用
メルカリ等の有名企業が推進していることで近年注目を集めている

・ソーシャルリクルーティング
Twitter,facebook,などのSNSを通じた採用方法

求人を出す際のポイント

ただ闇雲に求人情報を出すだけでは効果は期待できません。
求職者が何を求めているかを考えたうえで求人情報を出しましょう。
実際に転職した人達が転職先へ求めてたものが何か?を知る事で、人材を採用するうえでのヒントが見つかるかも知れません。

以下のアンケートは大企業、中小企業への転職者それぞれの転職理由について、前職・現職の規模別に整理されたものです。


どのグループも「仕事の内容に興味」、「労働条件が良い」、「能力・個性・資格を生かせる」が上位となっています。これらを求人広告を出すときや採用面接時の参考にしてみてはいかがでしょうか?

例えば「仕事の内容」について、自社のサービス・商品が提供する価値などを改めて定義し、価値観や存在意義を「言語化」し、「訴求」するための方法を考える。
一見当たり前の事のようですが、意外とできていない会社が多いものです。

また「労働条件」については、昨今の働き方改革の影響で労働時間や有休休暇の取得など、関心・興味が高い人が多いでしょうから、法改正に対応した就業規則等をつくるのは当然の事として、転職希望者が魅力を感じる条件を提示できるか、が今後より一層重要になってくるでしょう。

既存社員への取り組み

既存社員への取り組みとして、以下の観点で対策を検討しましょう。
・離職防止
・業務改善
・アウトソーシング

離職防止

企業から見ると人手不足な昨今ですが、社員の立場からみると「売り手市場」であり、会社に不満を抱えていたり、キャリアアップを考えている人にとっては、転職を検討する絶好の機会です。人手不足の対策として新たに人材を採用する事以上に今いる社員が辞めずに在職し続けてもらうことが重要です。

離職防止のために取り組むべき対策や考え方を以下にご紹介します。

人事制度の構築

社員が会社に対して持つ不満要因として、よく挙げられるのが「人事評価への不満」です。逆に言えば、公平性があり、かつ働くモチベーションがUPするような制度構築が必要です。

中小企業では人事制度自体がない、あるいは制度はあるが形骸化しており、経営者の一存で社員の人事評価が決まるケースが多く見受けられます。経営者の主観や好き嫌いで評価が決まるようでは、公平性がなく、社員が納得感を得られるはずがありません。

経営理念、クレドの作成

経営理念とは企業の使命や存在を言語化したものであり、経営者の哲学を可視化し、社員へ共有するために必要不可欠です。またクレドとはラテン語で「信条」「志」を意味し、通常以下3つの構成要素からなると言われています。リッツカールトンホテルが導入していることで注目を集め、採り入れる企業が増えています。

■クレドの構成要素
(1)ミッション:会社の使命・目的・存在価値
(2)ビジョン:中期的(3~5年)な会社の目標、理想の姿
(3)バリュー:ミッションやビジョンを達成するために必要な行動指針。通常10~15項目程度を設定

また、経営理念やクレドは作成するだけでは意味がありません。いかに社員へ浸透させるかが重要です。
理念・クレドが社員に浸透し、会社への帰属意識が向上する事により、離職防止としての効果を発揮します。

クレドについて詳しく知りたい方は以下の記事もご参照ください。

⇒クレドが社員の意識を変える! 基本の「き」から徹底解説

OKR(Objectives and Key Results)の導入

OKRとは、インテルやGoogleなどが導入し、近年注目を集めている目標設定・管理方法です。

「会社」、「チーム/部署」、「個人」の階層毎に「目標」と「望む結果」を設定することが特徴で、各階層の目標と結果が連動しているため、会社と社員のエンゲージメント向上が期待できます。また、「何をしたら」「どのような評価」を受けるかが、明確になるため、社員のモチベーションUPにも繋がります。

従業員満足度調査

従業員が何に不満を持っているかを企業として把握し、退職してしまう前に未然に防ぐ必要があります。上司や経営者が社員と面談して不満を直接聞こうとしても本音を話してくれるとは限りません。日本人の気質として、面と向かって不満を述べる人は多くはないのでしょうか?

従業員が本音を出しやすくするために匿名性を担保することがポイントと言えます。
TOMAでも、外部の会社に調査を依頼して年2回従業員満足度調査を実施しています。

業務改善

人手不足が原因で業務が滞ってしまう、あるいは既存社員の負担が増え、長時間労働が状態化している、そのような状況に置かれている中小企業は多いのではないでしょうか。そのような状況は企業にとっても社員にとっても望ましいはずがありません。

また、現在は働き方改革により、法律で残業時間の上限が定められ、長時間労働の是正がかつてないほど厳格に求められています。いうならば、「人手不足だが、労働時間を短く」することを全ての企業が求められている、というわけです。

そこで、必要なのが、業務改善をすることにより、効率化することです。ここでは業務改善における4つのステップをご紹介します。

業務改善のための4ステップ

step1:業務の可視化
「誰が」「何を」
「どれくらい」を把握

step2:業務の標準化
属人性を無くし、誰でも業務が行える

step3:業務の効率化
無駄を無くし
付加価値の低い業務を削減

step4:業務の高付加価値化
付加価値の高い業務への投下時間を増やす

業務改善について詳しく知りたい方は以下記事もご参照ください。

⇒業務棚卸表の作り方【エクセルフォーマット例付】 業務改善の第一歩業務棚卸表のサンプルがダウンロード出来ます。

アウトソーシング

人材採用ができない場合、マンパワー不足を補う選択肢の1つとしてアウトソーシングがあります。
BPO(Business Process Outsourcing)サービスが普及し、BPO市場も年々成長を続けています。

現在では様々なサービスを提供する企業が存在し、経理や給与計算などのバックオフィス業務だけでなく、マーケティングや営業など幅広い業務をアウトソーシングすることが可能です。ここでは、アウトソーシングを検討するうえで注意すべきポイントを紹介します。

業務内容

現在の業務を棚卸をして、委託する業務を明確にします。
依頼業務を曖昧にするとトラブルの元になりますので依頼しない業務との線引きを明確にしておくことが大切です。

費用対効果

コストもアウトソーシング先を選定するうえで重要なポイントです。
サービスが低品質でありチェック作業などかえって工数が増えてしまっては本末転倒ですので、費用対効果でコスト・品質両面から検討しましょう

最後に

今回は人手不足の現状と原因・対策について、ご紹介しました。TOMAでは人手不足を解決するための仕組みづくりやアウトソーシング等のご支援を行っております。ご興味がある方はお気軽にお問合せください。