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コーポレート・アイデンティティを確立して企業の存在価値を高める

記事作成日2021/02/06 最終更新日2022/04/08

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日本では1980年代から広く知られるようになったコーポレート・アイデンティティ。言葉は聞いたことがあってもイマイチ意味を理解していない人も多いのではないでしょうか。今回は、いまさら人には聞けないコーポレート・アイデンティティについて解説したいと思います。

そもそもコーポレート・アイデンティティとは何か?

コーポレート・アイデンティティ(Corporate Identity、以下:CI)とは、社内外に自社の独自性を表すメッセージやデザインを発信することで、企業の存在価値を高める企業戦略です。

CIの概念が生まれたのは1950年代のアメリカと言われています。モダンアートが人気を博すようになると、象徴的なロゴマークを掲げることで企業が自社をブランディングする流れが生まれるようになります。

また、1960年代に入ると、新聞雑誌、テレビなどマスメディアの発展がその流れを一層加速させます。現在では、ビジネスに取り組む上で、社内外に自社の存在価値を可視化させるCIは重要な要素となっています。

CIの歴史

○コーポレート・アイデンティティのロゴマーク例

赤い下地に黄色で「M」と書かれた看板を見たら、あのファストフード店を思い出す。
三本線の靴やジャージといえば、あのスポーツブランド。
黒い猫の描かれたトラックといえばあの宅配業者。

テレビや新聞、通勤電車や街中、パソコンやスマホと朝から晩まで無数の広告に触れている現代人にとって、パッと見た瞬間に「あの会社」とわかるロゴマークの訴求力、広告価値は計り知れません。

また、CIはロゴマークだけではありません。自社の事業領域、USP(Unique selling proposition=他社と比較した際の差別化ポイント)、社会的責任を端的に表したメッセージやスローガンを発信することもCIの一つです。

インパクトのあるロゴマーク=CIと思われがちですが、CIとは顧客・企業・社会との良好な関係を築くためのツールなのです。

コーポレート・アイデンティティを構成する3要素

では、コーポレートアイデンティティはどんな要素によって構成されているのでしょうか。

まず、CIは

・マインド・アイデンティティ(MI)【理念の統一】
・ビヘイビア・アイデンティティ(BI)【行動の統一】
・ヴィジュアル・アイデンティティ(VI)【視覚の統一】

の3つに大別されます。次からはそれぞれの特徴について見ていきたいと思います。

●マインド・アイデンティティ(MI)【理念の統一】

企業が経営を続ける理由、創業者の想いや経営哲学、経営を突き詰めた先にある理想像などを表したものです。ミッションや経営理念、社是・社訓と同義と考えても良いかもしれません。

働く全社員が根底に持つべき想い・思考でもあるので、行動指針やクレドを作成する、あるいは社内報やイントラネットを使い常に社員が意識できるような施策を打ち浸透を図ることが大切です。

なぜなら、CIを社外に効果的に訴求するためにはまず、社内の意識が変わることが大前提だからです。マインド・アイデンティティを意識し、営業をかければ顧客にその姿勢が伝わります。

開発者の想いが詰まった商品であれば、消費者の心を揺さぶることができます。広報担当者が信念を持って外部に発信することで、CIは社会全体に広がるのです。会社の想いは内側から発し、伝わるものなのです。

●ビヘイビア・アイデンティティ(BI)【行動の統一】

ビヘイビア(behavior)とは「ふるまい、態度、行動」といった意味です。会社の基盤となるマインドを実現するために、どんな行動をすれば良いのかを具体的に示した指針になります。ビジョンや中期計画に近いものと考えればわかりやすいでしょう。

・何年後までに経営規模をどこまで大きくするのか。
・社員数を何人にするのか。
・業界シェア何%を目指すのか。
・SNSなどの情報発信ツールをどう活用していくのか。

社員一人ひとりがどういった意識を持って行動すれば良いのかを表すことが、ビヘイビア・アイデンティティの目的です。

●ヴィジュアル・アイデンティティ(VI)【視覚の統一】

CIの集大成とも言えるのがヴィジュアル・アイデンティティです。視覚的なロゴマークや印象的なブランドロゴ、キービジュアル、キャッチコピーによって自社のブランディングを行います。

社名のフォントやカラー、ゆるキャラなどマスコットキャラクターもヴィジュアル・アイデンティティに当てはまります。ロゴマークやキービジュアル、マスコットキャラクターなどは商標登録し、知的財産として扱われます。

CIの構成要素

自社の存在を言い換えた理念を基に行動し、他社と一線を画す商品・サービスをブランディングされたロゴやメッセージとともに発信することで、顧客や社会全体との良好な関係を築くことを目指すのです。

CIが確立することは企業のイメージアップ、売上伸長といったメリットだけではなく、社員の仕事に対する取り組み方が前向きになったり、商品・サービスの品質が向上したり、就職希望者が増加するといった相乗効果が期待できます。

CIのメリット

コーポレート・アイデンティティに欠かせないもの

どうせ作るならより良いコーポレート・アイデンティティを作りたいとどんな経営者も思うはず。ではそのCIに欠かせないものとは一体何でしょうか。

まず、時代の流れや流行に左右されない確固たる信念を込めることです。100年経っても変わらない普遍性のある言葉や価値観であること、そして、独自性があることが重要です。さらに同業他社と比較した際に、自社の特徴が表れているか、差別化ポイントが明確になっているかに気をつけてください。

CIに欠かせないもの

ミッションやスローガンにおいては、ただ単にきれいな言葉を並べても意味がありません。コピーの中に事業領域、USP、社会的責任が抑えられているかがポイントです。

コーポレート・アイデンティティを作るには経営理念の見直しから

では、具体的にCIはどのようなステップを踏んで作れば良いのでしょうか。

ステップ1.経営理念(ミッション)・中期計画(ビジョン)の作成、見直し

経営理念や中期計画がない企業はまず作成することから始めましょう。すでにある場合は、普遍性のある理念の再確認、中期計画の見直しを行います。自社の取り組みがステークホルダーとの関係や時代・社会の流れに反していないか、受け入れられるかをポイントに見直します。

また、自社内の意見も取り入れ、経営層と現場にギャップがあるかも調べておくと良いでしょう。インナーブランディングにおける対策が立てやすくなります。

理念の見直しが終わったら、それをデザイン、スローガンとして具現化します。自社にデザインやコピーライティングに長けた人材がいれば自社で、そうでない場合は専門家に依頼します。

デザイン、スローガンが完成したらそれに合わせて会社紹介のパンフレットを作成したり、ホームページをリニューアルしたり、自社商品、設備にロゴマークをプリントしたりと広報ツールを大幅に改定します。

ステップ2.インナーブランディング

最も重要なステップと言っても過言ではありません。CIの浸透を図り、社員一人ひとりの意識を改革しなければ外部発信しても効果は期待できないからです。

クレドカードやブランドブックといったツールを作成したり、朝礼や会議などでの周知、各部署における普及活動の提案・実施、イントラネットによる定期報告、社内報による活動紹介などさまざまなアプローチによって、少しずつ企業文化の醸成を図ります。

ステップ3.アウターブランディング

社内への浸透と並行し、外部へのPR活動も率先して行います。商品のロゴをはじめ、SNSやHPによる情報発信、プレスリリース、広告発信などあらゆる方法で訴求を行います。

特に、顧客と直接関わる営業や販売といった部門では、インナーブランディングによる意識改革の成否が大きな影響を及ぼします。

ステップ4.検証、改善

一定期間の訴求活動が終わったら、CIの評価をします。

●社内文化の醸成がどれだけ進んでいるか。
●ステークホルダーへの訴求力は十分か。
●顧客との間にギャップはないか。

これまでの活動を振り返り、順調なものはさらに発展させ、改善点は修正を行い、より良いものに変えていきましょう。

CIは社内外へ働きかけることが大事

コーポレート・アイデンティティはクレドで浸透させる

以上、コーポレート・アイデンティティは、その成果の如何によって、企業が発展するか衰退するかが左右されるといっても過言ではない、重要な企業戦略であることがお分かりいただけたと思います。1970年代に日本に伝わってから、半世紀以上経った今でも通用する考えです。

コーポレート・メッセージやアイデンティティの確立に大切なものは、経営理念に対する社員の共感と浸透です。TOMAでは、そのためのツールとしてクレドの作成をおすすめしています。初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

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