育児介護休業法が改正され、令和4年から5年にかけて段階的に施行されます。改正に伴い、企業の雇用主側はさまざまな対応が必要です。
育児介護休業法改正に伴い必要となる対応例
・就業規則の見直し
・育児休業を取得しやすい雇用環境づくり
・育児休業の取得状況を把握可能な仕組みの整備
「改正の対応と言われても、具体的に何をすればよいのかわからない」
「対応に不備がありそうで不安」
そのように心配される方も多いでしょう。
育児介護休業法に違反していると、助言・指導・勧告の対象となる場合もあるため、注意が必要です。そこで今回は、育児介護休業法改正の要点を押さえて、雇用主として不備なく対応するためのポイントを、わかりやすく解説します。下記のポイントを押さえることで、誰でもスムーズに育児介護休業法改正に対応することができるようになります。
「雇用主としてやるべきことをわかりやすく知りたい」という方は、ぜひ当記事をご活用ください。
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目次
育児介護休業法のあらましと休業取得の現状
改正内容を確認する前に、そもそも育児介護休業法とはどのような法律なのか、なぜ改正されることになったのかを確認しておきましょう。
ここでは、育児介護休業法について、
・どのような法律か
・法律ができた背景
・法律の主な内容
・休業の取得状況とその原因
について、解説します。
育児介護休業法とは?
育児介護休業法とは、育児や介護と仕事を両立させ、働き続けることができるよう支援する法律です。育児や介護が必要な労働者も仕事を辞めることなくワークライフバランスを実現させられるよう、取得できる休暇が定められています。正社員だけでなく、派遣・契約社員やアルバイト・パートも対象です。
制定された背景
育児介護休業法制定には、上記の3つの背景があります。まずは、少子化対策の必要性です。合計特殊出生率が下がり続ける状況に歯止めをかけるため、出産・子育てをしても仕事を続けやすい環境づくりの一環として、国により休業制度が整備されました。次に、高齢化に伴う介護人口の増加です。親の介護に直面しても就労を継続し経済的に自立して生活できるよう、介護休業制度が作られました。最後に、企業における雇用の安定を確保するという視点もあります。少子高齢化による労働人口減少に出産・育児や介護による離職まで加わると、企業は安定した人材確保が難しくなる場合もあるでしょう。離職せず、一時的に休業して復職できる制度は、雇用主側にとっても負担軽減となるのです。
内容
育児介護休業法には、主に以下の4つの内容が定められています。
上記のような休業・休暇制度に加えて、制度を利用したことによって不当な扱いを受けることのないように定められています。
休業取得の現状
育児介護休業法で取得が推進されている休業・休暇ですが、特に男性の育児休業取得が進んでいないのが現状です。厚生労働省が実施する「令和2年度雇用均等基本調査」によると、令和2年の育児休業取得率は女性が81.6%・男性が12.65%でした。
※厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」より作成
男性の介護休業取得率は令和元年と比べると5.17ポイント増加しているものの、女性と比べると依然として低い取得率にとどまっています。なお、介護休業についても取得は進んでいないのが現状です。厚生労働省が実施する「令和元年度雇用均等基本調査」において、介護休業を取得した従業員がいた事業所の割合は、令和元年で2.2%にとどまりました。
取得が難しい原因
育児・介護休業の取得が難しい原因としては、収入が減少することへの懸念や、取得しにくい職場環境が考えられます。厚生労働省によると、育児休業を利用しなかった理由で多いものは、次のとおりでした。
このように休業取得が難しい現状の背景には、休業取得をしづらい職場の雰囲気や制度の未整備があります。
育児介護休業法改正のポイント
休業取得が難しい現状を改善し、男性の育児休業取得などを促進するために、育児介護休業法が改正されます。施行は、令和4年から5年にかけて段階的に実施される予定です。ここでは、法改正にスムーズに対応するために知っておくべき、
・改正の背景
・改正のポイント
・施行スケジュール
を詳しく説明します。
改正される背景
育児介護休業法改正の背景には、令和2年の男性の育児休業取得率が12.65%と育児休業取得が進まない状況に加え、出産や育児を期に退職する女性が多い現状があります。厚生労働省によると、出産まで有職で出産を機に退職した女性の割合は46.9%と半数近くが仕事を辞めている状況です。このような状況を踏まえ、「育児や介護と仕事を両立させ、働き続けることができるよう支援する」という育児介護休業法の趣旨をより実現しやすくするよう、今回の改正が行われます。
改正のポイント4つ
今回の育児介護休業法で、押さえておくべきポイントは次の4つです。
それぞれ、詳しい内容をわかりやすく解説します。
① 育児休業を取得しやすい雇用環境整備・個別の周知・意向確認の措置の義務付け
改正育児介護休業法の施行後は、男女ともに育児休業を利用しやすい職場環境を作るために、雇用主は次のいずれかを行わなければなりません。
厚生労働省は、できる限り複数の措置を講じるのが望ましいとしています。自社で実施可能な措置はどれかを、あらかじめ検討しておきましょう。また、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした従業員に対し、育児休業制度などについて以下の要領で個別の周知・意向確認をする必要があります。
② 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件を緩和
上記のとおり改正後は、引き続き雇用された期間にかかわらず、育児休業・介護休業を取れるようになります。なお、育児休業給付・介護休業給付も同様に要件が緩和されるため注意が必要です。
③ 男性版産休の新設
育児介護休業法の改正後は、以下のとおり男性版産休とも言える「産後パパ育休」が新設されます。
上記の男性版産休は、育休とは別に取ることが可能です。このように改正後は、新たに、子どもの生まれた直後から男性が休める制度が追加され、各家庭の状況に合わせた柔軟な休み方ができるようになります。
④ 育児休業の分割取得が可能に
男性版産休の追加に加えて、現行の育児休業制度も取りやすく変化します。
変更点は、・2回まで分割取得が可能に
・配偶者が1歳以降の育児休業を取得している場合、その休業の終了予定日の翌日以前の日を育児休業開始予定日とできるようになる
・特別な事情がある場合に限っては再取得が可能に
の3つです。
改正に合わせて規程の変更などの準備が必要ですので、早めに着手しましょう。
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改正はいつ?スケジュール
育児介護休業法の改正内容は、令和4年から5年にかけて段階的に施行されます。スケジュールは以下のとおりです。
すでに述べた改正内容に加えて、令和5年4月1日からは、常時雇用する従業員数が1,000人を超える事業主に対して、年1回の育児休業取得状況の公表が義務付けられます。
育児介護休業法改正で変わる男性の育休期間シミュレーション
育児介護休業法の改正によって、もっとも大きく変わるのが男性の育休期間です。そこでここでは、改正後の男性版産休・育休を取得した場合に、改正前と比べて休み方がどのように変わるのかイメージをつかんでおきましょう。
※厚生労働省「男性の育児休業取得促進等に関する参考資料集」より引用
上記のとおり、改正後は従来と比べて
・分割して休める
・休みの開始時期を柔軟に選べる
ようになります。
育児介護休業法改正で雇用主が対応すべきポイント
育児介護休業法の改正に伴い、就業規則の見直しなど雇用主側が対応すべきことが複数あります。けれど、改正内容を見ても結局何が必要なのか、わかりにくいですよね。ここでは、改正に必要な対応ポイントをまとめてわかりやすく紹介します。対応忘れがないよう、ぜひ参考にしてくださいね。
就業規則を見直そう
就業規則の見直しが必要になるのは、改正内容のうち
・【令和4年4月1日施行】有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件を緩和
・【令和4年10月1日施行】男性版産休(出生時育児休業)の新設
・【令和4年10月1日施行】育児休業の分割取得が可能に
の3点です。
施行は、早いもので令和4年4月1日からとなっています。就業規則の見直しに誤りや抜けがあると助言・指導・勧告の対象になる場合もあるため、時間に余裕を持って着手し確認を徹底すると安心です。
休暇を取得可能な雇用環境づくりをしよう
雇用環境などの整備が必要となる改正が、
・【令和4年4月1日施行】育児休業を取得しやすい雇用環境整備・個別の周知・意向確認の措置の義務付け
です。
雇用主側としては、①「育児休業を取得しやすい雇用環境整備」、②「個別の周知・意向確認の措置」の2つを行う必要があります。
①「育児休業を取得しやすい雇用環境整備」では、少なくとも次の4つのいずれか1つを行いましょう。
②「個別の周知・意向確認の措置」では、従業員から妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出があった場合に、以下の手順で個別に周知を行う仕組みづくりをしてください。
いずれも、令和4年4月1日までには準備をしておきましょう。
取得状況を把握可能な仕組みを整えよう
常時雇用する従業員数が1,000人を超える事業主については、以下の改正に伴い、年1回の育児休業取得状況の公表が義務付けられます。
・【令和5年4月1日施行】育児休業取得状況の公表が義務化へ
公表する内容は、①育児休業等の取得割合、②育児休業等と育児目的休暇の取得割合のいずれか1つです。
公表対象となる事業所では、令和5年4月1日までに対象者数の算定を終わらせておく必要があります。
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まとめ
育児介護休業法の改正に伴い、令和4年4月から令和5年にかけて、雇用主は就業規則の改正や雇用環境の整備など、さまざまな対応を行わなければなりません。漏れなくスムーズに育児介護休業法の改正に対応するためには、ポイントを押さえた早めの着手が必要です。当記事を参考に、育児介護休業法改正に確実に対応していきましょう。
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