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人材育成・人材定着にお悩みの方必見! 目標管理制度(MBO)と評価面談(1on1)の適切な運用で人材育成を加速させる

記事作成日2023/04/10 最終更新日2023/09/12

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社員が思うように成長してくれない、苦労して教育した社員が定着しない、新入社員の育成方法がわからない。
このような悩みを抱えている企業は少なくないでしょう。

そんな時は一度、自社の人事評価制度に目を向けてみることをお勧めします。あなたの企業には確立した人事評価制度があり、しっかりと運用されているでしょうか?

単純なノルマ制度や昇給・昇進が上司の一存のみで決まるような旧世代の人事評価制度では社員の成長、定着率の向上は見込めません。また、人事評価制度が構築されていても、その意味を真に理解し運用できていないのであれば、本来期待した効果が得られません。

今回は社員育成で大きなウエイトを占める人事制度のうち、評価制度とは何か、近年導入する企業が増え実績を残している目標管理制度(MBO)と評価者面談(1on1)について解説します。

「人事制度」が社員の育成・定着につながる

そもそも人事制度とは『等級制度』、『評価制度』、『賃金制度』の総称です。

『等級制度』社員の役割と責任を明確にする制度
『評価制度』社員を評価し、課題を抽出する制度
『賃金制度』社員の給与・賞与を決める制度

これら3つが互いに連動・機能することで、人材育成を促進させることができます。
では、なぜ私たちは人材を育成するのでしょうか。

これはいうまでもなく企業が永続的に繁栄するためです。そのため、人事制度とは【経営理念や経営計画を実現するために日々の業務の効率化を図る仕組み】と言い換えることもできます。

人事制度の最重要キーワードは「見える化」

すでに人事制度を構築済の企業も、これから構築する企業も、人事制度を構築する上で最も重要なキーワードは「見える化」です。人事制度は日々自社のために働いてくれている社員が自身の成長をイメージできるものでなければなりません。

そして、評価に対して不公平を感じさせないシステムであることが大切です。

人事制度を構築する際には経営層のみが密室で話し合うのではなく、プロジェクトチームを編成しオープンな場で、労使双方にコミュニケーションをとりながら作ることが求められます。

人事制度の目的は経営理念や経営計画を実現する人材を育成すること

では、人事制度の目的とは何でしょうか。

前述した通り、人事制度の目的は経営理念や経営計画を実現する人材を育成することです。人事制度を構築することで以下2つの目的を果たすことができます。

目的1:人材評価機能

仕事における結果はもちろん、仕事に取り組む姿勢や過程を「人材評価項目」に基づいて社員を評価することで、会社からの評価に対する処遇格差の根拠が明確になります。なぜその評価になったのか「見える化」することで、社員のモチベーション向上、不満の解消に繋げます。

目的2:育成機能

社員に一律の目標をもたすのではなく、一人ひとりの役割や責任、能力に基づいて目標設定を行います。目標をクリアしたら更なる課題を、クリアできなければ目標をクリアするための課題を再設定することで、より効率的に人材を育成することが可能です。

近年変わりつつある評価制度

評価制度とは、人事制度を構築する要素の一つで、人材育成や定着率の向上、モチベーションの向上に寄与する制度です。日本では従来、社員が保有している能力や資格などに合わせて評価する「職能資格制度」が主流でした。

しかし、この制度は社員の潜在的能力を図ることが難しく、年功的な運用になる傾向があります。たとえ高い能力や難関資格を有していても、それだけでは会社に貢献しているとは言えません。近年は能力をどう行動につなげ結果(業績)を出すかを評価することが主流となっています。

評価制度の目的 ~物理的報酬か心理的報酬か~

自社の経営理念や経営計画を実現するための独自の評価制度を構築することがなぜ必要なのか。これは社員の育成・定着・確保に有効だからです。

一般的に「社員のやる気を引き出したい」と思った時には昇給、昇進、昇格など『物理的報酬』を思い浮かべるかもしれません。しかし、中小企業において賃金水準だけで人材を育成・定着させるには限界があります。

実は、アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論」によると、会社に「認めてもらっている」、「自分の成長を上司に褒めてもらえた」という『心理的報酬』の方が、昇給、昇進、昇格などの『物理的報酬』よりも高い満足感を得られることがわかっています。

評価制度においては、社員に「心理的報酬」を与え、働きがいを高める施策が必要です。心理的報酬のない昇給、昇進、昇格などは、会社に対する不満の解消にしかなりません。

部門目標達成のカギ・目標管理制度(MBO)とは

評価制度には、業績評価、行動評価、コンピテンシー評価、360度評価、目標管理など様々な方法があります。
どの評価制度にもメリット、デメリットがありますが、人材育成において効果が高いと言われているのが目標管理制度(Management By Objectives and Self Control=MBO)です。

目標管理制度(MBO)は、経営学者のピーター・ドラッカーが提唱した【社員一人ひとりに目標を設定させる】評価制度です。一人ひとりの設定目標が部門目標へとつながり、部門目標を達成させることは全社目標(経営理念・経営計画)の実現につながります。

目標は社員一人ひとりの役割や責任、能力に合わせ部門目標の実現につながるように設定します。自分が組織の一員であり、【個人の成長=会社の成長】であることを自覚させるためです。

目標を立てたらどうすれば達成できるか、過程についても検討しましょう。その際、上司はサポート役に徹し、部下の成長を導くことが大切です。一定期間が過ぎたら、目標はどれだけ達成できたのかを確認し、更なる成長に向けた目標設定を行います。

目標管理制度(MBO)のメリット、ノルマ管理との違い

目標管理制度(MBO)を導入することのメリットについて以下に記します。

メリット1:能動的に動く社員の育成

社員自身に目標をどう達成するかを考えさせることで、上司や他人から「やらされる」仕事ではなくなります。

メリット2:着実な人材育成が望める

現在保有している知識・能力より少しレベルの高い目標を設定することで、計画的にレベルアップをすることができます。

メリット3:仕事へのモチベーションの維持・向上につながる

自分が今何をすべきか、会社に何を求められているかが明確になります。目標を達成し、上司から認められれば「心理的報酬」が得られるだけでなく、結果が昇給・昇進へつながれば、仕事へのモチベーションも上がります。


目標を立て、達成を目指すというと、『ノルマ管理と何が違うの?』と感じるかもしれません。

ノルマ管理は上司から一方的に目標を与えられる受動的な管理方法である点や、達成=善、未達=悪と社員個人の意見が入る余地が一切ない点、常に上司の指示を仰がなければならないなど性質が全く異なります。

スマート&ファスト-目標管理制度(MBO)を運用する際の原則

目標管理制度(MBO)で目標を設定する場合、容易に達成できる目標では人材の成長は見込めませんし、実現不可能な目標を立てても意味がありません。目標を設定する際には、以下の原則に沿うことが重要です。

SMARTの原則

様々な研究によって、高確率で社員のパフォーマンスを向上させることができるとされているのが「SMARTの原則」です。それぞれの文字を頭文字とした5つの要素に合わせて目標を設定することが重要とされています。

Specific(具体的であること)
誰が読んでもわかる、明確で具体的な表現で書く。

Measurable(測定可能であること)
達成度合いが本人にも上司にも判断できるよう、内容を定量化して表す。

Achievable(達成可能であること)
希望や願望ではなく、達成可能な内容かどうかを確認する。

Realistic(現実的であること)
自分が属する部署の目標、さらには会社の目標に関連しているかを確認する。

Time-bound(期限が明確であること)
いつまでに目標を達成するか、期限を設定する。

FASTの原則

もう一つ、目標設定の原則として有名なのが「FASTの原則」です。「SMARTの原則」が実現可能性を重視する一方で、「FASTの法則」は野心的でチャレンジングな目標に重きをおきます。

【世界一を目指していれば、日本一にはなれるかもしれない】という考え方で、少し実現が困難だと感じる目標を設定する方が高いパフォーマンスを発揮することができるという考え方です。
FASTの原則の要素は以下になります。

Frequent
頻繁に議論されるものであること

Ambitious
不可能ではない範囲で野心的な目標であること

Specific
具体的であること

Transparent
組織の全員から見えるよう透明性が保たれるものであること


企業の特徴や規模、業種、職務環境によって目標の立て方は異なります。
目標設定の原則は自社の業態に合わせて行いましょう。

目標策定のポイント、やってはいけないNGワード

具体的に目標を策定する際には、5W1H(何を、誰に対して、いつまでに、どのような方法で、どのような状態にする)を意識して設定するとより具体的になります。また、結果や成果だけではなく、結果を導くためのプロセスも設定すると目標がより明確になります。

目標に記載すべきではないNGワード

一方で、以下のワードを使うと目標が曖昧になり、達成意思の低下につながるので気をつけましょう。

【NGワード】
努める 頑張る 目指す 極力 可能な限り なるべく できるだけ 臨機応変に 積極的に 迅速に 随時 効率化する 強化する 徹底する 支援する 協力する 助言する 調整する 心がける 意識する

評価者面談(1対1面談・1 on 1)

目標管理制度(MBO)でもう一つ大切なのが目標の設定、進捗確認、評価です。その方法として最適なのが評価者面談(1対1面談・1 on 1)です。

評価者面談(1 on 1)とは月に1回、あるいは週に1回など、定期的に短時間で行うミーティングのことで、上司と部下のコミュニケーションの場として人材育成に広く活用できる面談です。評価者面談では、大まかに時期に分けて、以下の内容を確認するのがよいでしょう。

【期初】
・どんな目標を立てるのか
・どう行動することで目標を達成させるのか

【期中】
・目標達成に向けどんな行動をしているのか
・達成に向けて悩みはないか
・順調に進捗している場合には賞賛を、そうでない場合にはアドバイスを

【期末】
・目標達成度についての評価
・次の期に向けた目標設定

評価者面談(1 on 1)については以下でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
【テンプレートあり】やる意味のない1対1面談はもう終わり!目的・進め方・失敗しないポイントを大公開!

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※本記事は2023年4月に執筆したものです。