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就業規則の「作成・提出・周知」。企業に課せられた3つの義務、怠っていませんか?

記事作成日2021/02/05 最終更新日2021/02/05

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就業規則は会社を大きく成長させるために、企業と従業員のルールをまとめたものです。
「就業規則がなくても会社が発展する企業風土」が培われるのが理想かもしれませんが、実際はそううまくはいきません。それどころか、就業規則には法律で定められた義務があり、企業の規模によっては絶対に作成しなければなりません。今回は、就業規則における企業に課せられた義務とそれぞれのポイントについて解説したいと思います。

就業規則の持つ役割とは?

就業規則とは、会社における使用者が労働基準法等に基づいて労働条件等を定めたルールブックのことです。
労働時間や残業規定、休日、社員の健康、副業規定などさまざまな内容を記載します。セクハラ、パワハラ、働き方改革など法改正によって記載が必要になる項目もあるため、定期的な見直しが必要です。

令和元(平成29)年に中小企業庁が行った「中小企業の雇用状況に関する調査」によると、8割を超える企業が就業規則を策定している一方で、13.8%が就業規則を策定していないという結果が出ています。
社員が1人しかおらず、毎日社長と顔を合わせている企業であれば必要ないのかもしれません。しかし、社員が多くなればなるほど、組織をまとめることは困難になります。会社内で発生しうるあらゆるトラブルは就業規則の定め方次第と言われることもあります。経営者は就業規則がそれほど重要な役割を担っていることを認識しましょう。

事実、賞与の支給日に会社を退職していた社員について、就業規則に「支給対象者は賞与の支給日に在籍している者」との記載があったためにトラブルに発生しなかった企業もあれば、就業規則に明確な記載がなかったため、『支給対象期間に在籍していた』という理由で退職した社員に対して賞与を支払わなければならなかったというケースもあります。

このように、就業規則を策定していても、内容に不備があったり、読み方次第で複数の読み取り方ができるような就業規則ではトラブルの元となるので注意が必要です。

就業規則策定の有無

「でもうちは大きな問題も起きたことないし…」
「時間をかけて作っても社員が見ていない…」
「社員を管理しているようで嫌だ…」
と思い就業規則にネガティブな印象を持っている経営者も少なくありません。

しかし、一つの大きな問題が表面化する時、水面下では小さな数多くの問題が発生しています。
「ハインリッヒの法則」という労働災害の発生に関する法則をご存知でしょうか。
【1件の事故・災害の裏には、29件の軽微な事故・災害が実は発生している。さらにその背後には300件の事件には至らないレベルの異常が発生している】という労働災害における経験則です。
一つの労使間トラブルが裁判沙汰になったとしたら、その背景には300近い不満が社員の中に渦巻いています。企業の信頼を得るのには大変な時間と労力を要しますが、失うのは一瞬です。トラブルは起きてからでは手遅れですから、予防の意味でも就業規則を定期的に見直しましょう。

ハインリッヒの法則とは

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就業規則の作成義務

では、企業に課せられた就業規則に関する義務を見ていきましょう。
まずは「作成の義務」です。就業規則は作っても作らなくてもどちらでも良いというものではありません。労働基準法の第89条によって以下のように義務づけられています。
「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない」
常時10人以上というのはパートタイマーやアルバイトも含みます。月に一度しか出勤しないアルバイトであっても1人にカウントされます。ただし、派遣元の労働者として登録されている派遣労働者はカウントされません。
また、小売店の店長などの管理監督者は、経営者と同等の扱いになるので労働者としてはカウントしないのではと考えるかもしれませんが、結論から言うと、従業員としてカウントされます。
管理監督者は労働基準法に定められた労働時間や休息、休日の制限を受けずに経営者と一体に扱われますが、経営者ではないので、管理監督者は常時雇用される従業員という扱いになります。
常時10人以上の労働者とは

最後に、常時10人というのは、事業場ごとのカウントとなります。
例えば3つの支店を持つ企業で、50人の従業員を雇っていたとします。事業場Aでは30人、事業場Bでは15人、事業場Cでは5人が働いていた場合、就業規則の作成義務が発生するのは事業場AとBで、事業場Cは作成する義務は発生しません。

もちろん、義務がないというだけで、作成してはいけないというわけではありませんし、同じ企業であれば就業規則も共通である場合がほとんどでしょうからまとめて届出を行っても問題ありません。

労働者のカウントは事業所ごと

就業規則の基本の「き」。構成要素とは

就業規則には、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」と、ルールを決める際には記載しなければならない「相対的必要記載事項」、そして、企業が任意に定める「任意的記載事項」があります。

●絶対的必要記載事項

主に以下の3つに分類されます。

1つ目は「始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項」です。
・勤務時間は何時から何時までか
・休憩時間の有無、時間、取り方
・休日の有無、有給休暇の取得方法、育児休暇、生理休暇など
・交代勤務を行う場合、交替期日・順序に関する事項

2つ目は「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」です。
・賃金について(基本給、各種手当)
・賃金の計算方法
・賃金の支払い方法
・賃金の締切日、支払い日
・昇給について
臨時に支払われる賃金は「相対的必要記載事項」に含まれます。

3つ目は「退職に関する事項(解雇の事由を含む)」です。
・退職、解雇、定年の事由
・退職、解雇、定年の手続き方法
労使間でのトラブルが最も発生しやすいのがこの項目です。
そのため、解雇については基準・手続きについてしっかりとした規定を作らねばなりません。
この点があやふやで解雇を実施した場合、訴訟などのトラブルに発展する可能性があります。
就業規則の絶対的記載事項1

●相対的必要記載事項

以下の項目を定める場合、記載が必要になります。
・退職手当に関する事項
・臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
・食費、作業用品などの負担に関する事項
・安全衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰、制裁に関する事項
・その他全労働者に適用される事項
就業規則の絶対的記載事項2

●任意的記載事項

法令では定められてはいないが、各企業が必要と判断した際に任意で記載するものです。例えば、経営理念や社是・社訓、就業規則に記載されている用語の定義などが挙げられます。

◎絶対的必要記載事項が記載されていない場合、労働基準法120条1号において30万円以下の罰金が科されますので注意が必要です。

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就業規則の提出・届出義務

作成の義務と同様に、常時10人以上の従業員を使用する使用者は就業規則を所轄の労働基準監督署(労働基準監督署長)に届け出なければなりません。
これは一度提出すればそれで終わりというものではなく、就業規則が改定されるたびに提出が必要です。

また、提出する際には労働組合からの意見書を添付する必要があります。
これは、労働基準法第90条に以下のように定められているためです。

『使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。』

労働組合がない企業は労働者の過半数を代表する者からの意見書が必要です。
労働者の過半数を代表する者の基準は以下になります。
●管理監督者ではないこと
●労働者の過半数を代表していること
●就業規則を作成・変更する際に、意見を聴取される旨を明らかにした上で実施される投票または、挙手などによって選出された人物

就業規則提出前に

意見を求める理由は、労働者の待遇が不利になるような使用者本位の内容ではないか、労働基準法に抵触する内容はないかといった点を労使双方が確認するためです。
ただし、労働基準法第90条には、「意見を聴かなければならない」とありますが、これは聞いた意見をすべて採用しなければならない、労働者の同意を得なければならないというわけではありません。
もしも、使用者が作成した就業規則に対して反発が多かったとしても届出は可能です。

しかし、あまりにも労働者を無視した使用者本位の就業規則に基づいて会社を経営しているようでは、その企業に未来はありません。
使用者も内容に問題があると感じれば修正に応じるようにしましょう。

現在、提出・届出はネットを介した電子申請システムを活用した手続きが可能なので、手間と時間を大幅にカットすることができます。

就業規則の周知義務

就業規則はとりあえず作って届出をすれば良いというものではありません。
従業員に周知、浸透してこそ意味のあるものになります。

労働基準法第106条にも、就業規則の周知を義務として定めています。

『使用者は、就業規則、労使協定、労使委員会の決議を常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない』

本社の事務室には保管してあるけれど、支社にはないという状況や、従業員がアクセスできないフォルダに格納されているようではNGとなります。
主な周知方法は以下になります。

その1.全従業員に配布する
もっとも確実な方法は全従業員一人ひとりに配布することです。この方法の難点はコストです。
就業規則は、無料でダウンロードできる厚生労働省労働基準局監督課の「モデル就業規則」で81ページあります。
かなりの量になるため、従業員数の多い企業、就業規則の変更が頻繁に行われる企業では向いていないかもしれません。

その2.各事業場の掲示板に掲示する
従業員の誰もが目にできる掲示板に就業規則を掲示する方法です。
こちらも量が多い場合は格納場所を掲示する、変更があった際には変更箇所のみを掲示するといった方法でも良いでしょう。

その3.各事業場に配置する
ポイントは「いつでも、誰でも、容易に取り出せる場所」に置くことです。
例えば、事業場の管理監督者の机の引き出しに入っており、就業規則を見たい時は許可を得なければならない。
そんな場所に置いてあったら従業員は誰も見ないでしょう。気軽に見られる場所に配置する工夫が必要です。

その4.PC内、インターネット上に格納する
社内にイントラネットが整備されている場合はネット上にアップロードし、誰でも閲覧できるようにすると良いでしょう。
変更の度にプリントアウトするコストもかからず、紛失の恐れもないためネット環境が整っているならもっとも利便性の高い方法です。

就業規則周知方法

就業規則の作成・見直しはTOMAにおまかせください!

就業規則には法律で定められたさまざまな義務があることがご理解いただけたと思います。
就業規則の作成には労働基準法をはじめとする法律の知識が不可欠です。労働法は2010(平成22)年から2020(令和2)年までの10年間で10回も改正されています。法律に明るくない経営者が独自で作成・変更を行うのはあまりおすすめできません。

●労務トラブルから会社を守る
●同一労働同一賃金に対応したルールの策定
●法令を遵守する長時間労働の削減
●労働生産性を向上させる規定 など

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