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会社都合の休業日に年次有給休暇の取得の申し出があった場合の取扱いについて

記事作成日2021/06/23 最終更新日2021/08/19

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2021年4月25日から始まる第3回緊急事態宣言が発令されたことに伴い、東京都では、飲食店等の一部業種に対し、営業時間短縮及び休業要請への協力を呼び掛けています。また、緊急事態宣言の発令に伴い、2021年5月~7月の期間において、雇用調整助成金の特例措置が延長されることが公表されました。
こうした経緯を受けて、現在、多くの企業が休業を実施しています。今回は、休業を実施する際の労務管理上のお悩みとして多くご質問をいただく、会社都合の休業日に年次有給休暇の取得の申し出があった場合の取扱いについて、解説いたします。

Q:会社都合の休業を実施する日に、従業員が年次有給休暇(以下、年休)の取得を希望する場合、認める必要がある?

A:会社都合の休業を実施する日に、従業員が休業命令前に年休を申請していた場合は、当該年休の取得を認める必要があります。ただし、休業を命じた後に従業員からの申請があった場合は、年休の取得を認める必要はありません。

【解説】

労働基準法第39条に定める年次有給休暇は、従業員が年休の取得を申し出た日について、就労義務を免除する制度です。また、年休の取得は、会社の承認を要するものではなく、従業員から申し出があった場合には、原則として、そのとおりに年休を付与する必要があります(従業員は、年休を取得日の前日までに指定しなければなりません)。したがって、会社都合の休業を命じるよりも前に、従業員が年休の取得を申し出ていた場合、当該休暇の取得を認めなければなりません。
一方で、会社都合の休業を命じた事後に、従業員が年休の取得を申し出た場合は、会社はこれを認める必要はありません。これは、年休は、労働日について、就労義務を免除する制度であるため、会社が休業を命じることにより、既に労働が免除されている日に対し、重ねて年休の権利を行使することはできないことになります。

【ワンポイントアドバイス】

労働基準法第26条では、休業期間中の賃金の支払いについて、「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定めています。一方で、年次有給休暇を取得した場合の賃金は、通常の賃金等を支払う必要があり、それぞれ支給すべき賃金額が異なることから、年次有給休暇を取得した場合に支給される賃金よりも、休業した場合に支給される賃金の方が低い場合には、従業員が、年次有給休暇の取得を希望するケースがあります。
会社都合の休業日について、事後に年次有給休暇の取得を希望した場合、会社はこれを認める必要がないことは、先に述べたとおりですが、従業員との合意の上で、会社が年休の取得を認めることは問題ありません。状況に応じ、柔軟に対応するとよいしょう。
TOMAでは、休業措置の対応、その他、人事労務に関する企業のお悩みについて、幅広く解決のご支援を行っております。お気軽にお問い合わせください。