コロナ禍で減少した税務調査件数はコロナ以前の水準に戻りつつあり、医療機関への税務調査も増えてきています。
「税務調査」と聞くとどうしても身構えてしまう先生方が多いかと思います。本ブログでは、医療機関に税務調査が入った際によく見られる点についての事例と税務調査への対策についてご紹介します。
近年の税務調査の状況
まず初めに、近年の税務調査の状況ですがコロナ禍において件数が減少していた実地調査も徐々にコロナ以前の水準に戻りつつあります。下の表は国税庁から公表されている税務調査の結果をもとに調査件数や追徴課税額をまとめた表となります。こちらをみると、令和2年を境として、法人税・所得税ともに調査件数は増加してきています。
税務調査でよく見られる点
事例その① 交際費の損金不算入額
■交際費の損金不算入額の判定
法人税法の定めによると、交際費は原則、損金算入することができません。しかし、法人の区分に応じて一定の特例措置が設けられています。
■出資金がない持分なし医療法人ではどのような判定するのか?
持分なし医療法人は、上記の表に当てはめることができないため出資の金額に準ずる額の計算式を用いて判定します。(措置法施行令第37条4)
(期末総資産簿価-期末総負債簿価-当期利益)×60%
(期末総資産簿価-期末総負債簿価+当期欠損金)×60%
株式会社や持分の定めのある医療法人とは異なり、決算のたびに判定が変わる可能性があるため税務官に注意深く見られます。
■個人事業主の交際費の取り扱い
【所得税法第37条】“必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るために直接要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする” |
所得税法第37条において、個人事業(事業所得)の必要経費については上記のように定められています。業務を行う上で必要な経費は全て必要経費とすることができます。つまり、接待交際費についても法人のような上限は定められていないこととなります。
接待交際費としての経費が増えてくると、当然、税務調査で事業に関係しない個人的な支出がないかどうかについては調べられることになるため注意が必要です。
事例その② 棚卸資産
医薬品などの在庫を多く抱える医療機関や調剤薬局では、棚卸資産について重点的に調査する傾向にあります。棚卸資産の管理は、自社で行うため容易に数量操作を行うことが可能です。そのため、税務調査官も重点的に調べます。一例ですが、下記のような棚卸表があったとします。
Excelなどのツールを用いて棚卸表を作成する場合、品名・単価・数量とExcelの数式をきちんとメンテナンスしなければ事実とは異なる内容の棚卸表となる可能性が高いです。当然、税務調査官からも金額の計算が間違っていないか指摘をされます。
特に品名のメンテナンスを忘れてしまう場合が多く、既に仕入を行っていない品目がそのまま残ってしまうケースが非常に多くなっています。その他、実際に質問された例としては下記が挙げられます。
・実地棚卸はいつ行っているか?
→実地棚卸をきちんと期末に行っているかの確認
・実地棚卸高と帳簿棚卸高に差異がある場合はどのような処理をしているか?
・期限切れ在庫の処分方法は?会計処理はどうなっているか?
→会計処理が適切に行われているかの確認
税務調査に備えるためには…
書面添付制度の活用
税務調査を受ける可能性を低くするための方法として書面添付制度の活用があります。
書面添付制度(税理士法33の2)とは、税理士が作成した申告書に対し、どのような調製を行ったか等の情報を書面に記載して提出できる制度です。税務署に対し、きちんと税務申告を行っている旨を税理士側がアピールできる書面でもあります。
この制度を活用している場合は、税務調査の前に税理士側が書面添付の記載事項について意見を述べる機会(意見聴取)を獲得できます。
書面添付制度の最大のメリット
この意見聴取で調査官の調査したい論点が解決されれば、税務調査が省略となる場合があります。また、税務調査が入ることとなったものの、調査の日数が短くなった場合も実際にありました。
TOMAでは、税務調査に備えて書面添付制度の活用を推進しています。また、決算3か月前に担当者及び上司を含め、お客様の課題や節税対策、税務調査対策について考える決算検討会というものを実施しています。
税務調査については、以下のブログも是非お読みください。
さらに、税務調査が入った場合には税務調査立合サービスも行っていますので、あわせてご覧ください。
また、以下より、税務調査チェックシートがダウンロードできますのでご活用ください。
税務調査対策をしたい、税務調査について不安があるなどの場合は、下記よりTOMAへ是非ご相談ください。