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医療DX化の波に乗る! 電子カルテの情報共有化について

記事作成日2023/08/02 最終更新日2023/08/03

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令和5年6月2日、内閣に設置された医療DX推進本部により、「医療DXの推進に関する工程表」が取りまとめられました。

オンライン資格確認をはじめとして、今後ますます医療DXに関する施策が推進されることが予想されます。

今回のブログでは、「医療DXの推進に関する工程表」で言及されていることの中でも、電子カルテの情報共有について、また電子カルテの導入のための支援策や、導入後の情報セキュリティについても触れていきます。

電子カルテの情報共有について

現在、電子カルテは病院や診療所内で、患者さんの診療実績の保存等を行うために利用されることが多いかと思います。この場合には自院の患者さんのデータを保存し、閲覧することが目的です。

今後は、全国の医療機関・薬局をつなぐオンライン資格確認等のシステムのネットワークを活用し、電子カルテ情報等を電子カルテ情報共有サービス(仮)に登録することで電子カルテ情報等を医療機関や薬局との間で共有・交換できるようになります。

電子カルテの情報が多くの医療機関等で共有されることで、救急現場での情報提供や受診の情報が把握できるようになるなど、より質の高い医療等の提供に資するものになります。

※2023年6月2日時点では、医療機関・薬局の間で共有するためのサービス名は「電子カルテ情報共有サービス(仮称)」としています。

そんな電子カルテの情報共有は、いつ頃から始まるのでしょうか。またどのようなことができるようになるのでしょうか。

電子カルテの情報共有はいつからはじまるのか

「電子カルテ情報共有サービス(仮称)」は、2024年度中に、電子カルテ情報の標準化を実現した医療機関等から順次運用を開始します。

電子カルテの情報共有によりできるようになること

電子カルテ情報共有サービス(仮称)では、大きく分けて3つのサービスが提供できるようになります。

・文書情報を医療機関が電子上で送受信できるサービス
・全国の医療機関・薬局で患者の電子カルテ情報(6情報)を閲覧できるサービス
・本人等が、自身の電子カルテ情報(6情報)を閲覧できるサービス

※6情報とは
傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、検査情報(救急及び生活習慣病)、処方情報

また、医療機関・薬局の間の情報共有だけではなく、自治体、介護事業所等との共有すべき情報についても今後検討していく予定です。
具体的には予防接種事務のデジタル化や母子保健に関して乳幼児健診や妊婦健診情報等の共有、自治体検診情報の共有などについても、自治体システムの標準化などの取組をすすめ、後に全国展開をしていくことになります。

電子カルテ導入の推移

令和2年までの電子カルテシステム等の普及推移は以下の図のようになっています。

病床数により電子カルテシステム等の普及率に差はありますが、令和2年時点でもおおむね半分近くで普及がすすんでいることがわかります。また、図表に記載されているオーダリングシステムでは、電子カルテと同様に病床数による普及率の差はありますが、半分以上で普及がすすんでいます。

(厚生労働省 医療分野の情報化の推進について より)

※オーダリングシステム:医師が診療した内容を、各部署が迅速に確認できるようにし、業務をスムーズに行えるようにするシステムのこと

電子カルテの情報共有の今後

電子カルテ情報共有サービス(仮称)については、「医療DXの推進に関する工程表」で以下のような工程が書かれています。

・2023年度中 仕様の確定と調達を行い、システム開発に着手
・2024年度中 電子カルテ情報の標準化を実現した医療機関等から順次運用を開始

電子カルテ導入済みの医療機関

すでに電子カルテが導入されている医療機関においては、今後標準規格に対応した電子カルテへの改修や更新が求められます。

電子カルテ未導入の医療機関

2030年には、概ねすべての医療機関において必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指しているため、今後電子カルテの導入について考慮する必要があると考えられます。
電子カルテ導入済みの医療機関だけでなく、電子カルテ未導入の医療機関も含めた医療機関に向けて、電子カルテ情報の共有のための支援策を検討していくということですので、今後の新しい情報に注目していく必要があります。

次に、現在電子カルテ導入のために使用できる補助金についても見ていきましょう。

電子カルテ導入のための支援策(2023年7月1日時点)

ここまで電子カルテの情報の共有についてご紹介してきましたが、現在使用できる補助金として「IT導入補助金」があります。

IT導入補助金とは、業務の効率化やDXの推進、セキュリティ対策のためのITツール等の導入費用を支援する制度です。このIT導入補助金には、通常枠、セキュリティ対策推進枠、デジタル化基盤導入枠の3つの種類があります。電子カルテは通常枠に該当します。通常枠の補助額は最大450万円/者で、補助率は1/2以内となっています。

【通常枠の今後のスケジュール】
4次締切:2023年7月31日(月)
5次締切:2023年8月28日(月)

IT導入補助金については、交付申請受付を行っている事務局が、8月1日交付申請受付分以降、前期事務局から後期事務局に担当がかわりますので、ホームページを見る際などは注意が必要です。電子カルテ情報の共有のための支援策は検討中のため、今後の新しい情報にも注目しましょう。

電子カルテの情報セキュリティについて

電子カルテを導入することで、情報漏洩などセキュリティ対策の心配もあるのではないでしょうか。厚生労働省のホームページでは医療情報システムのガイドラインが公表されています。今回はその中の一部をご紹介します。

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版

厚生労働省では「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」を令和5年5月に策定しています。こちらのガイドラインは、4つあり、それぞれの医療機関等における担当者ごとにガイドラインが策定されています。

概説編:ガイドラインの目的や対象、全体構成、各々のガイドラインの前提
経営管理編:意思決定を担う経営層が対象
企画管理編:医療情報システムの安全管理の実務を担う担当者が対象
システム運用編:医療情報システムの実装・運用の実務を担う担当者が対象

また、令和4年3月に策定された「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」の主な改定点は以下のようになっています。

(厚生労働省 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版 より)

小規模医療機関等向けガイダンス

厚生労働省のホームページでは小規模医療機関等向けにもガイダンスが特集されています。[特集] 小規模医療機関等向けガイダンスと題して、小規模医療機関等が医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに示されている安全管理対策を実施するために、必要な内容が示されています。

医療情報システムの安全管理に求められることや、小規模医療機関等が医療情報システムの安全管理に関するガイドラインについて留意すべき概要が記載されています。ぜひご覧ください。

情報セキュリティに関しては、IT導入補助金のセキュリティ対策推進枠が活用できます。

IT導入補助金のセキュリティ対策推進枠では、独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスを導入した場合に、サービス利用料の一部が補助されます。補助額は5万円~100万円で、補助率はサービス利用料の1/2以内となっています。(2023年7月1日時点)ガイドラインに加え、こちらもご確認ください。

【セキュリティ対策推進枠の今後のスケジュール】
4次締切:2023年7月31日(月)
5次締切:2023年8月28日(月)

医療DXが推進される中、支援策や情報セキュリティなどに関する新しい情報は今後も公表されることが予想されます。TOMAではブログやメルマガなどで医療に関する情報発信を行っておりますのでご覧ください。

また、過去のブログでは、補助金を受け取った際の経理処理のポイントについても載せていますので、あわせてご確認ください。
補助金を受け取った際の経理処理のポイントを解説 ~オンライン資格確認の機器購入を例に~

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