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個人版事業承継税制の適用には十分な検討を

記事作成日2019/08/13 最終更新日2022/06/13

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個人版事業承継税制が創設されました

税制改正で新たに「個人版事業承継税制」が導入されました。一定の条件下で、先代から引き継ぐ事業用資産にかかる税金が猶予される制度で、従前法人向けの制度があったものの、今回の改正で個人版が創設されました。

制度のポイント

〈メリット〉
(1)後継者の事業承継時の現金負担がゼロ
納税額の全額(100%)が猶予されます。また、猶予期間中に後継者の死亡等があった場合、猶予税額は免除となります。
(2)建物だけでなく、診療機器も対象
・土地(400㎡まで)、建物(800㎡まで)
・機械・器具備品(診療機器を含む)
・車両・運搬具、生物、無形償却資産など

〈デメリット〉
(1)10年間の時限措置
2019年1月1日~ 2028年12月31日の間に行われる相続・贈与が対象です。相続だけでなく生前贈与も対象となっています。
(2)事前認定が必要
後継者は、2019年4月1日~ 2024年3月31日の5年間に個人事業承継計画を都道府県に提出して、なおかつ経営承継円滑化法に基づく認定を受ける必要があります。
(3)猶予期間中は3年ごとに届出が必要
事業継続して、制度適用を受け続けるためには継続届出書を3年ごとに税務署へ提出する必要があり、提出がないと猶予税額全額とそれまでの利子税を納付する必要があります。
(4)小規模宅地特例との選択制
個人宅地等の相続税を減額できる制度として小規模宅地等の特例制度がありますが、本制度と併用はできません。
(5)事業廃止・譲渡すると納税が復活する
納税猶予を継続するためには、事業継続して事業用資産を保有することが必要です。事業の廃止や、対象資産を売却した場合は、猶予税額の一部または全額の納付になります。

適用には十分な検討を

今回創設され、相続対策として注目される個人版事業承継税制ですが、適用までの手続きはもちろん、適用後の届出についても手間を要することもあり、一時的な税負担が軽くなるとはいえ、十分な検討が必要です。法人向け事業承継税制も、時間をかけて改正されてきた経緯があるので、個人版事業承継税制も現実の状況に合わせて改善されていくことが期待できます。


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