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税務調査の調査対象になりやすい法人の特徴とは?おもなチェック項目も紹介

記事作成日2024/07/29

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きちんと税金申告をしているつもりでも、いざ「税務調査が入る」といわれると、ドキッとしてしまう方も多いのではないでしょうか。調査そのものはもちろんのこと、準備を整えるための手間も時間も必要となります。「できれば避けたい……」というのが、納税者側の本音なのかもしれません。

そこで今回は、税務調査の対象になりやすい会社の特徴や、チェックされるポイントなどについて詳しく解説します。

税務調査とは?概要をおさらい

税務調査とは、会社が税務申告した内容が正しいかどうかを確かめる調査です。おもに税務署職員が調査を担当し、「質問検査権」という権利に基づき調査を実行します。

そこでまずは、税務調査の基本情報についておさらいしていきましょう。

税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類がある

税務調査には、「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。

・任意調査:納税者の同意によって税務署職員が行なう
・強制調査:悪質な不正が疑われる場合に、予告なく国税局査察部(通称マルサ)が行なう

強制調査が実行されるケースは限られているため、一般的に「税務調査」という場合は任意調査を指します。

また、任意調査には、予告のない「無予告調査」と、予告がある「事前予告調査」があります。無予告調査は強制調査と同じように予告なく実施されますが、任意調査はいずれの場合でも納税者の同意が必要です。そのため、強制調査のように通知や予告なく調査が実行されることはありません。

税務調査のタイミングを読むのは難しい

「税務調査は夏~秋(7~12月)に多い」といわれることがあります。しかしそれは、あくまでも傾向であり、春や冬に税務調査が実行されるケースもあります。いつ、どの法人に調査が入るかは、予測できません。

さらに、税務調査の事前通知の時期にも法令の規定はないため、通知が届くタイミングにはばらつきがあります。ただし、調査を受ける法人がしっかり準備できるよう、調査日までに時間的余裕が設けられるのが一般的です。目安としては、調査日の2〜3週間前に事前通知が行なわれることが多いでしょう。

事前通知は、電話による口頭説明が基本です。 電話による事前通知が困難だと認められる場合のみ、書面による事前通知が行なわれます。ただし、調査対象者からの要望によって、通知方法が変わることはありません。

税務調査の対象になりやすい法人の特徴

税務調査は、毎年すべての企業に対して行なわれるわけではありません。基本的には、「税務署管轄エリア内の対象法人を順番で回っている」と考えて良いでしょう。つまり、「まだ一度も来たことがない」という場合は、単純に「まだ順番が回ってきていないだけ」とも考えられます。

ただし、事業内容や過去の調査状況、売上などによっては、「通常よりも税務調査に選ばれやすい」ということもあります。そこで、税務調査の対象になりやすい法人の特徴を紹介します。

税務調査の対象になりやすい法人の特徴

売上が急激に伸びている

これまで売上が上がったり下がったりを繰り返していた企業が、突然売上を大幅に伸ばした場合、税務署からのチェックを受けやすい状態になります。「急激に売上が伸びている裏には、何かあるのでは?」という疑念から、調査が入りやすくなるのです。

また、売上を多く上げている会社に対して申告漏れを指摘すれば、より多くの追徴課税を得ることができます。このような理由から、赤字の会社よりも黒字の会社の方が、税務調査の対象になりやすいのです。

過去に追徴課税を支払ったことがある

過去の調査で申告漏れや誤りを指摘され、追徴課税を支払っている場合も、税務調査の対象になりやすいです。過去の問題が解決されているかどうか、チェックするのも税務署の仕事だからです。

該当する場合には、一度調査を終えたからといって、気を抜かないようにしましょう。

売上の変動が大きい

事業や景気などの影響によって売上は上下しますが、売上の変動が大きい法人は税務調査の対象になりやすい傾向にあります。これは、納める税金を少なくするために、意図的に売上を操作していると疑われてしまうからです。

したがって、前年度よりも売上が大きく下がっている場合には、税務調査の通知が来るかもしれません。

売上が増加した割に利益が少ない

法人税などの納税額は、売上から経費などを差し引いた利益をもとに算出されます。つまり、売上が増えても最終的な利益が同じであれば、法人が納める納税額は増えません。

そのため、売上が増加していても、利益が変わらない、利益の伸び率が小さいといった場合には、申告ミスや意図的な利益の過少申告が疑われやすくなります。

同業他社と比較して利益率が低い

税務署は、さまざまな企業の売上や利益を把握しており、業種ごとに詳細なデータを保有しています。

したがって、同業他社と比較して売上や利益率が低いなど、突出した数値があるとミスや不正を疑われ、税務調査の可能性が高まるでしょう。

「少しだけ赤字」「少しだけ黒字」という状況が続いている

一年間経営を行なった結果、「ほんの少しだけ赤字」「ほんの少しだけ黒字」となることは珍しくありません。しかし、こういったケースも税務調査の対象になりやすいです。これは、「数字を不正に調整しているのでは?」と疑われやすいからです。

また、「赤字の会社は税務調査の対象にならない」と考える方もいますが、この認識は誤りです。経営状態が赤字であっても、税務調査に選ばれる可能性はあるため、正しく申告することが重要です。

その他申告内容に不審な点がある

上記に加え、申告内容に以下のような不審点や疑問点がある場合も、税務調査が入りやすくなる傾向にあります。

・ 前年度と比較して、在庫や売掛金が激減した
・ 前年度と比較して、買掛金や未払金が激増した
・ 勘定科目に大幅な変動があった
・ 貸借対照表の項目に異常な数値、変動があった
・ 退職金や貸倒損失など、比較的大きい一時的損失があった
・ 消費税の還付を受けた

特定の業種に当てはまっている

税務調査では、以下のような業種が対象になりやすいとされています。

・ 病院や医療関係
・ 不動産業
・ 建設業
・ パチンコ店
・ 宗教法人
・ 弁護士法人
・ 風俗業
・ 飲食業
・ IT関連業

これらの業種に当てはまる場合には、いつ調査が入っても大丈夫なよう、特に念入りに準備を整えておきましょう。

税理士が不関与で外部のチェックが入っていない

確定申告の際には、税理士のサポートを受ける企業も多いはずです。しかしなかには、すべてを社内で完結しているケースもあるでしょう。

このような場合には、申告時に外部のチェックが入っていないことになります。申告段階から税理士がサポートしているケースと比較して、当然ミスも多くなりがちですから、税務調査の対象になりやすいといわれています。

税務調査でチェックされやすいポイント7選

ここでは、税務調査でチェックされやすいポイントを、勘定科目などに分けて解説します。

税務調査でチェックされやすいポイント7選

売上

税務調査では、過去3年程度の売上や経費、利益などの伸び率が比較されます。現金や預貯金の動き、納品書などを参考に、計上の時期に不明瞭な部分などがないか、計上されていない売上がないか、といった点が確認されます。

仕入

仕入の量が増えると、経費が増え、利益が減るため、納める税額も少なくなります。そのため、架空の仕入を行ない、税額を減らす不正行為を行なう事業者もいます。税務調査では、仕入を利用した不正を防ぐため、仕入の実態や計上時期などが細かくチェックされます。

在庫・棚卸資産

社内のみで管理する在庫や棚卸資産は、第三者が確認しにくいこともあり、不正の手段として利用されることが多い傾向にあります。在庫や棚卸資産が少ないと、税額も少なく算出されるからです。

したがって、税務調査では在庫や棚卸資産の不正な操作の有無、評価方法の適切性なども確認されます。

交際費

交際費は、経費の一つに含まれるため、交際費が多くなるほど利益は減り、それに伴い課税額が少なくなります。しかし、交際費に計上できる費用には一定の基準があり、どのような費用も交際費として計上できるわけではありません。

そのため、税務調査では、幹部の私的な出費など、交際費に分類されない費用を交際費として計上していないかなどもチェックされます。

人件費

社員の給与といった人件費は、多くの法人にとって経費の大半を占める項目です。法人には、雇用した従業員の氏名や住所などを自治体へ提出する義務があるため、基本的に不正に利用されることはありません。

しかし、社会保険への加入義務のないアルバイトなどについては、住所や氏名などの情報を提出する必要がないため、人件費の架空計上に利用されるケースがあります。したがって、実体のない人件費が計上されていないか、役員報酬や退職金の金額は適正か、といった点が厳しくチェックされます。

修繕費

施設や建物などの修繕費は、ほかの項目よりも大きな金額が必要となるため、税務調査では詳細にチェックされます。特に、計上する時期の間違いが多いため、架空の修繕費が存在しないかだけでなく、計上時期が適切であるかどうかもよく見られるポイントです。

グループ間取引

大企業では、グループ企業間で赤字と黒字を交換するよう取引し、黒字を圧縮することで税額を減らす不正が行なわれることがあります。このような不正を正すために、グループ間取引の金額や実態などは詳細に確認されるでしょう。

税務調査(任意調査)を拒否することはできる?

任意調査には「任意」という名称が付いていますが、調査を拒否するのは非常に難しいでしょう。なぜなら、税務署職員は「質問検査権」を有しており、法律に基づいて納税者へ税務調査のための検査や書類の提示・提出を求めることができるためです。

また、納税義務者には受忍義務があり、任意調査の拒否や虚偽の報告、調査官の検査・採取・移動を禁止する行為を行なうと、1年以下の懲役または50万円以下の罰金を科されるおそれがあります。

罰則を受けてまで任意調査を避けたい人はいないため、任意調査であっても事実上拒否することはできず、強制に近い調査といえるでしょう。

まとめ

税務調査は、申告内容にミスや不正がないかを確認するために行なわれる調査です。そのため、売上や在庫の状況など、さまざまな項目を細かくチェックされます。さらに、税務調査の実施時期は予測できず、原則拒否することもできないため、日頃から正確な税務の実施や精度の高い申請書を作成することが重要です。

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