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税務判決を紹介します。

記事作成日2017/01/23 最終更新日2017/01/23

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この度、最近の税務判決から過去の判決の事例を月に1~2回ほど紹介していくことになりました。

今回ご紹介するのは平成22年裁決です。決算賞与の損金算入時期について争われた裁決になります。

【概要】

本件は、納税者(以下「A」という。)が損金の額に算入した使用人に対する未払の決算賞与について、税務署が、当該決算賞与は実際に支払った日の属する事業年度において損金の額に算入すべきであるとして法人税の更正処分等を行ったのに対し、税務署が、当該決算賞与はその対象とした事業年度の利益に対応した費用として事業年度末日に債務が確定するから当該各事業年度において損金の額に算入すべきであるとして、その処分等の全部の取消しを求めた事案です。

【Aの主張】

本件施行令(法人税法施行令第72条の3)は、法人の利益調整を防止する要請からなされているものであるから、利益調整でないことが明らかな本件各決算賞与については本件施行令によらず損金の帰属年度を判断すべきである。この事案の場合、事業年度終了の日において税引前利益が生じることにより決算賞与に係る債務が自動的に確定するから、決算賞与は本件各事業年度の損金の額に算入されるべきである。

【判断】

使用人賞与については、原則として実際に支給をした日の属する事業年度の損金の額に算入する(第3号賞与)こととしている。その例外として法人の資金繰りが悪化している等の事情で賞与が未払状態になっている場合には、たとえ未払いであっても損金の額に算入することとしている。(第1号賞与)

また、事業年度終了の日において各人別に支給額が通知され、たまたま支給が遅れているような場合にまで一切損金算入を認めないのは適当ではないことから、一定範囲で通知をした日の属する事業年度においても損金の額に算入することを認めている。

取扱いの統一性を確保し恣意性を排除する観点から、各人別に同時期に支給を受けるすべての使用人に対して支給額を通知していること、1か月以内の支給及び損金経理を要件として規定している。(第2号賞与)  本件施行令は、使用人賞与の実情や支給実態にかんがみ、使用人賞与の損金算入時期を具体的に定めるとともに、これを使用人賞与一般についての統一的な基準として規定することにより、課税の明確性及び統一性を図ったものである。

ここで国税庁のホームページに掲載されている決算賞与の要件を見てみます。

【決算賞与要件】

(1) 労働協約又は就業規則により定められる支給予定日が到来している賞与(使用人にその支給額が通知されているもので、かつ、その支給予定日又はその通知をした日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理したものに限ります。) その支給予定日又はその通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度

(2) 次に掲げる要件の全てを満たす賞与  使用人にその支給額の通知をした日の属する事業年度

イ その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。

(注1) 法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、こでいう「通知」には該当しません。

(注2) 法人が、その使用人に対する賞与の支給について、いわゆるパートタイマー又は臨時雇い等の身分で雇用している者(雇用関係が継続的なものであって、他の使用人と同様に賞与の支給の対象としている者を除きます。)、その他の使用人を区分している場合には、その区分ごとに支給額の通知を行ったかどうかを判定することができます。

ロ イの通知をした金額を通知した全ての使用人に対しその通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること。

ハ その支給額につきイの通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。

【結論】

今回の裁決においては、上記要件(2)にあるように納税者が事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払いをしていないことから、2号賞与に該当しませんでした。

また具体的な決算賞与の支給予定日が労働協約又は就業規則に定められていなかったので、上記要件(1)の1号賞与にも該当しませんでした。結果、3号賞与に該当することになり実際に支払われた日の属する事業年度において損金の額に算入されることとなりました。

賞与について、原則として実際に支給した日の属する事業年度の損金の額に算入することとなっているため、今回の裁決のように要件を満たしていなければ課税の明確性及び統一性のため、未払い計上をした期に損金として算入することはできません。

また未払いを計上し、1か月以内に支払う場合に、現金で支給するようなことがあれば社員の方に受領印を頂いていると税務調査があった際に指摘を受けずに済むでしょう。

最後に、決算賞与を支給することにより節税や従業員のモチベーションアップなどのメリットなども考えられますが、今回の裁決のように決算賞与を支給しようかどうか考える際は税理士に相談されることをおすすめ致します。

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