今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大やそれに伴う休業要請の影響を鑑み、国や一部の地方自治体では助成金等の制度拡充が行われました。
今回は、助成金等を受け取った際の税務上の取り扱いについてご紹介します。
目次
助成金等を受け取った際の消費税の扱い
地方公共団体等から助成金等を受け取った際の消費税は不課税です。
つまり、消費税の課税対象とされる取引に該当しません。
法人の場合
【消費税法基本通達5-2-15(補助⾦、奨励⾦、助成⾦等)】
事業者が国⼜は地⽅公共団体等から受ける奨励⾦若しくは助成⾦等⼜は補助⾦等に係る予算の執⾏の適正化に関する法律第2条第1項《定義》に掲げる補助⾦等のように、特定の政策⽬的の実現を図るための給付⾦は、資産の譲渡等の対価に該当しないことに留意する。
しかしながら、助成金等を受け取った際、その助成金等を活用した経費支払金額のうち消費税に相当する一定の金額を返還しなければならない場合があります。
消費税の返還が必要となる場合
助成金等は上記記載の通り、資産の譲渡等の対価に該当しないため、原則、「消費税」については、「不課税」となります。
ところが、助成金の対象になる支払いには、材料の仕入や専門業者に支払うサービス料など、消費税の課税対象にあたるものがあります。そうすると、助成金等を受給した事業者が、消費税の確定申告をするとき、その際に算出した「仕入控除税額」に、助成金等の一部が含まれることがあります。
国の視点から考えると、助成金等を交付して消費税を還付することになるため、その分を重複して支給していることとなります。 これを調整するために、控除対象仕入税額のうち助成金等に係る部分(消費税の確定申告において控除対象仕入税額に算入した金額に限る)について、返還が必要となります。
こちらについては返還の手続きが必要となりますので、ご不明点がありましたら専門家にご相談ください。
申告・納付時の課税関係
本章では、対象を法人と個人に分けた上で、主な助成金等の課税関係をご紹介します。
法人の場合
【新型コロナウイルス感染症の影響により創設等がされたもののうち、法人税の課税対象となり得るもの】
・雇用調整助成金
・持続化給付金
・東京都の感染拡大防止協力金
・小学校休業等対応助成金
・産業雇用安定助成金
・事業再構築補助金
・事業復活支援金
法人が東京都の感染拡大防止協力金等の助成金の給付を受けた場合には、給付の原因となった事象(休業等)が発生した年度の益金に算入します。(法人税法基本通達2-1-42)
つまり、助成金等を含めて計算したその年度の所得は、法人税の課税対象です。
【法人税法基本通達2-1-42(法令に基づき交付を受ける給付⾦等の帰属の時期)】
法⼈の⽀出する休業⼿当、賃⾦、職業訓練費等の経費を補填するために雇⽤保険法、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇⽤の安定及び職業⽣活の充実等に関する法律、障害者の雇⽤の促進等に関する法律等の法令の規定等に基づき交付を受ける給付⾦等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった⽇の属する事業年度終了の日においてその交付を受けるべき⾦額が具体的に確定していない場合であっても、その⾦額を⾒積り、当該事業年度の益⾦の額に算⼊するものとする。
・計上時期の注意
給付が決定してから振込み日を待つ間に、決算日を跨ぐ場合も大いに考えられます。
その場合にも、上記の法令の通り、受け取る予定の助成金等の金額を見積り、給付の原因となった事象が発生した年度に収益計上する必要があります。
個人・個人事業者の場合
個人や個人事業者の場合、助成金の目的や根拠となる法律によって所得税の課税関係が異なります。
非課税とされるもの
【新型コロナウイルス感染症の影響により創設等がされた助成金等のうち非課税のもの】
・特別定額給付金
・子育て世帯への臨時特別給付金
・東京都のベビーシッター利用支援事業における助成
・企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置における割引券
上記の助成金等は、以下の基準のいずれかに該当するため、所得税は非課税です。
①助成金の支出の根拠となる法令等の規定により、非課税とされるもの
②その助成金が次に該当するなどして、所得税法の規定により、非課税所得とされるもの
・学資として支給される金品
・心身又は資産に加えられた損害について支給を受ける相当の見舞金
課税対象になり得るもの
【新型コロナウイルス感染症の影響により創設等がされた助成金等のうち課税対象となり得るもの】
・雇用調整助成金
・持続化給付金
・東京都の感染拡大防止協力金
・小学校休業等対応支援金
・産業雇用安定助成金
・事業再構築補助金
・事業復活支援金
この他にも、以下の基準のいずれかに該当するものは課税対象になり得ます。
①事業所得等に区分されるもの
事業者の収入が減少したことに対する補償や賃金の支払いなど、事業活動の補填を目的として支給されるものなどを指します。助成金等を含めた所得が赤字になる場合には、税負担は生じません。
②一時所得に区分されるもの
事業に関連しないが、臨時的に一定の所得水準以下の方を対象にするなど、一時に支給される助成金等を指します。ただし、その年の一時所得の合計が50万円を超えない限り、所得税の課税対象にはなりません。
③雑所得に区分されるもの(上記①、②に該当しない助成金)
一般的な給与所得者については、給与所得以外の所得が20万円以下である場合の確定申告は不要です
注意点
・計上時期
個人事業者の場合も法人の場合と同様に、給付が決定した事業年度の収入に算入する必要があります。
【所得税法基本通達36・37共-48(法令に基づき交付を受ける給付金等の処理】
雇⽤保険法、[中略]~経費を補填するために交付を受ける給付⾦等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった⽇の属する年分においてその⾦額が具体的に確定しない場合であっても、その⾦額を⾒積もり、当該年分の事業所得の⾦額の計算上、総収入金額に算⼊する。この場合において、その給付の対象となった休業⼿当等を製造原価に算入しているときは、当該給付⾦額のうち製造原価に算⼊した休業⼿当等に対応する⾦額をその製造原価から控除することができる。
・その他の助成金等の支給を受けた場合
もし仮に、上記以外の助成金等の支給を受けたが、課税関係の判断をつけられない場合は、国税庁や支給元の地方公共団体等の情報を確認するか、専門家にご相談ください。
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まとめ
今回は、助成金等の税務上の取り扱いについてご紹介しました。
法人の場合は原則的に収益として計上されますが、個人や個人事業者の場合はその助成金等の目的の違いなどから課税関係が異なり、少し複雑だという印象を受けられたかもしれません。
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