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【税務コラム】会計・税務双方から見る貸倒引当金の計上について

記事作成日2019/02/18 最終更新日2021/10/13

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昨年12月に発表された平成31年税制改正大綱において、公益法人等・協同組合等に対する貸倒引当金の繰入限度額の割り増しの特例の廃止(一定期間の経過措置有り)が盛り込まれていましたが、今回は普通法人についての貸倒引当金設定を会計上の引当金計上の4つの要件と、税務上の引当金計上の要件の二つに分けて説明いたします。

会計上の引当金計上の要件

会計では、引当金の計上は以下の4つの要件を満たした場合に設定する必要があります。

①将来の特定の費用又は損失である
②その発生が当期以前の事象に起因している
③その発生の可能性が高いものである
④その金額を合理的に見積もれる

会計上は適正な期間損益計算を目的とし、将来の特定の費用又は損失であったとしても、当期の収益と対応するものや、当期以前にその原因が作られるような場合には早めに費用として計上しておこうという考えから、貸倒引当金についても設定をしていくことになります。

引当金額の程度は、債権をその危険性に応じて下記のように3つに区分し、それぞれに応じた引当金の設定を行います。

貸倒れの危険性(低)・・・一般債権⇒総括引当法

貸倒れの危険性(中)・・・貸倒懸念債権⇒個別引当法

貸倒れの危険性(大)・・・破産更生債権等⇒個別引当法

(注)総括引当法は貸倒れの危険性の低い債権をまとめて貸倒実績率等を用いて貸倒れの見込み額を計上するものであり、個別引当法は個々の債権ごとに回収可能性を見積もり、その回収不能額を引当金として設定する方法をいいます。

税務上の引当金計上の要件

法人税法では費用の見積もり計上は基本的に認めておらず引当金の計上も原則的には認められておりません。(今回は損金計上についての細かな部分は割愛させていただきます。)

しかし、貸倒引当金については期末資本金の額が1億円以下の普通法人(期末において資本金の額が5億円以上である等の大法人による完全支配関係のあるもの等を除く。)その他一定の法人については一定の限度の範囲内で貸倒引当金の損金算入が認められています。

法人税法では貸倒引当金の繰入限度額について、個別評価金銭債権と一括評価金銭債権に区分して計算することとなっています。

個別に評価し繰入限度額を計算するもの

①会社更生法、民事再生法等の申し立てが行われた場合等・・・同事由が生じた金銭債権のうち、担保等による取立て等の見込み額を除いた残額の50%

②その債務者について債務超過の状態が相当期間継続し事業に好転の見通しがない場合や、災害等により多大な損害が生じた場合などで、その債権について取立て等の見込みがないとき・・・その回収不能と見込まれる金額

③会社更生法による更生計画認可の決定等に基づき、弁済猶予又は賦払弁済される場合・・・その事由が生じた事業年度終了の日の翌日から5年を超えて弁済される金額

会計より厳密にいつ個別に評価するのか、どのような状態のときにどのくらいの限度が定められているのかがお分かりいただけたと思います。

一括して評価し繰入限度額を計算するもの

個別に評価されない金銭債権については、それらの債権を一括して評価し繰入限度額を計算します。この場合の貸倒引当金の繰入限度額は以下のいずれかの方法で算定します。

①実績繰入率に基づく計算
    期末における一括評価の対象となる金銭債権の額×貸倒実績率

②法定繰入率に基づく計算
(期末における一括評価の対象となる金銭債権の額-実質的に債権とみられないものの額)×法定繰入率

①については自社の得意先の過去の貸倒れの実績に応じて率が決まるため、得意先の貸倒れの実績がない場合には限度額が0ということになりますので②の方法で計算することになります。

②については、一括評価の対象となる金銭債権の額から実質的に債権とみられないものの額を差し引き、業種ごとに定められている法定繰入率を用いて繰入限度額を計算します。

なお、実質的に債権とみられないものの額とは、同じ法人に対して債権と債務がある場合等その金銭債権と相殺的な性格をもつものを言います。

貸倒引当金については、設定した年度には上記で計算した限度の範囲内で損金に算入できるものですが、翌事業年度においては同額を戻入れ益金として計上し、期末の金銭債権に基づき改めて損金を計上いくことになります。また、個別評価金銭債権の取り立て見込みの有無の判断についてはその証明に関して対立しやすいところですので注意が必要です。

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