経営者の方でも「税務調査の具体的な内容についてあまり知識がない」「結果がいつ頃になるのかわからず不安」という方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、税務調査のはじまりから終了までの一連の流れを解説します。また、税務調査の結果はいつ頃出るのか、会社側は結果を受けてどういった対応をとればよいのか、税務調査終了間際の基礎知識も併せてご覧ください。
目次
そもそも税務調査の目的とは?
税務調査は、企業にとって負担の大きな調査となります。「できれば避けたい」と思うのも、無理はないことかもしれません。
しかし、税務署が税務調査を行なうのは、適切な税金申告を促進し、平等な税金徴収をするためです。納税者から提出される申告書のなかには、疑問点や不明点などが認められるものがあることから、内容を確認する目的で税務調査が実施されます。
税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類がありますが、税務調査の大半を占めるのは任意調査です。任意調査の多くは税務署職員が担当しますが、国税局の「調査部」や「資料調査課」などの部署が担当するケースもあるようです。
任意調査は、納税者の同意を得て実施されることが前提になっており、税務署職員がいきなり書類を確認することはありません。
ただし、「任意」とは付いているものの、税務署職員には納税者に対する「質問検査権」が認められ、納税者には「受忍義務」があるため、厳密には強制に近いものです。したがって、納税者は調査への協力を拒否することや、質問に対する黙秘権を行使することはできません。仮に拒否したり虚偽報告をしたりすると、罰則が適用される可能性もあります。
しかし、故意に不正を働くことなく、ルールに則って正しく申告・納税していれば、心配する必要はないでしょう。
一方、強制調査は、巨額の脱税が疑われる納税者に対して行なわれる調査で、「マルサ」と呼ばれる国税局査察部が担当します。調査の事前連絡は一切なく、裁判所の令状にもとづいて強制的に調査が実施されます。
調査対象となった場合は調査を拒否できず、悪質な脱税行為が特定されると検察庁に告発され、刑罰が科される可能性があります。
税務調査のおもな流れ【全6ステップ】
税務調査のおもな流れは以下のとおりです。
【ステップ1】税務署から事前通知を受ける
一般的には、まず税務署から電話で調査を実施する旨の事前連絡がありますが、通知は義務ではないため、連絡がないケースもあるようです。
税理士が申告書に「税務代理権限証書」を添付して申告している場合は、税理士宛に通知があります。
【ステップ2】調査実施日の日程を調整する
事前通知を受けたあとは、税務署側と調査実施日の調整をします。実施日については、会社側のタイミングに合わせて調整することが可能です。
また、税理士に調査の立ち合いを依頼することもできます。
【ステップ3】必要書類を準備する
税務調査には次のような書類が必要になります。
・帳簿関係 総勘定元帳・現金出納帳・入出金振替伝票・売掛帳・買掛帳など ・売上関係 見積書・契約書・請求書・領収証・納品書など ・仕入関係 見積書・契約書・請求書・領収証・納品書など ・経費関係 請求書・領収証など ・人件費関係 社会保険関連の書類・出勤簿・賃金台帳・源泉徴収簿と扶養控除等申告書・役員報酬や役員退職金関係の資料など ・その他 税務申告書類や税務届出書の控え・保険証書・賃貸借契約書・リース契約書・会社の経歴がわかる資料(パンフレットなど)・登記簿、定款など |
準備した書類には一通り目を通しておくことが大切です。顧問税理士がいる場合は、税理士とともに書類に不備がないか十分確認しましょう。メモや付箋などがあれば内容を再度確認して、不要なものは外したり消したりしておいたほうがよいかもしれません。
さらに、調査当日に質問されそうな項目を想定するなどして、事前準備を徹底しておくと、税務調査に対する不安の軽減に役立つでしょう。
【ステップ4】調査を受ける
調査当日は、税務署の調査官が訪問します。調査官との面談の際には余計なことは話さず、聞かれたことのみ答えることが大切なポイントです。
一般的に、書類の確認作業は面談後に行なわれますが、調査官は税務署に必要な書類を持ち帰り、訪問後もその書類をもとに調査が進みます。
【ステップ5】税務署の指摘があれば対処する
実地調査で確認できなかったところがあれば、税務署から電話や郵送で連絡があります。このやり取りに対する回答や交渉は、事業者自身、もしくは顧問税理士が対応することになります。
【ステップ6】調査結果を受ける
税務調査の結果についてはいずれかの結果(申告是認・修正申告・更正)になります。それぞれの詳細については、後述します。
税務調査の結果はいつ頃出る?
税務調査の結果は、実地調査が済んでから短い場合で約1週間で出ます。企業の規模が大きくなるほど結果が出るのに時間がかかり、大企業では数ヵ月を要する場合もあります。
また、否認事項の数によっても、税務調査の結果がいつ頃出るのかが変わります。
さらに実地調査の数日後に、調査官から追加の書類提出を求められるかもしれません。場合によっては銀行や取引先への事実確認を行なうこともあり、会社によって税務調査の結果が出るタイミングは異なります。
税務調査の結果|着地点には3つのパターンがある
前述のとおり、税務調査の結果には、「申告是認」「修正申告」「更正」の3つの着地点がありますが、それぞれの内容は次のとおりです。
申告是認
税務調査の結果、内容に修正すべき事項がない場合に適用されるのが申告是認で、納税者には「申告是認通知書」が送付されます。是認通知は、会社が間違いなく適切な申告を行なったという証になり、取引先や金融機関からの信頼にもつながるでしょう。
修正申告
税務調査のなかで、税務署から指摘を受けた際に自らの誤りを認め、自主的に本来払う税金の申告をやり直すことを「修正申告」といいます。
修正申告の際には、税務署に修正申告書を提出し、不足分の税額や延滞税、過少申告加算税などを納めることになります。
しかし、納税者にとって修正申告は義務ではないため、結果に少しでも納得できないことがあれば、指摘された部分をしっかりと確認するようにしましょう。なぜなら、この結果を安易に受け入れてしまうことにはリスクもあるからです。
修正申告を受け入れるか否かは、税理士などの専門家の助言を仰ぎながら、十分に検討を重ねることが大切です。
更正
「更正」とは、税務調査のなかで税務署から指摘を受けたものの納得できず、修正申告に応じなかった会社に対して、税務署側が申告の誤りを正すことを指します。
実際の税務調査では、まず誤りがある箇所に関して修正申告を行なうよう税務署に告げられます。その指摘に関して不満や納得できないなどの理由で納税者が何もしない場合は、税務署側が更正を実施することになります。
指摘された申告の誤りを自ら正さず、税務署側が誤りを正すとなると税務署からの印象が悪くなるのではないか、と思う方もいるでしょう。しかし、更正されたからといって、税務署から印象が悪くなったり、不当な扱いを受けたりすることはありません。
修正申告と更正では、支払う追徴税額は同じです。つまり、自分で誤りを認めて修正申告をしても追徴課税が減額されるわけではありません。裏を返せば、税務署からの指摘に納得できず、更正処分になったとしても追徴課税が増額されるわけではないのです。
税務調査の結果に対する対処法
税務調査の結果が告げられたら、その結果に応じて適切な対応を行なうことが大切です。なお、調査終了の際の手続きには、国税通則法第74条の11が適用されます。以下の3つのパターンに当てはめてみて、税務署の判断結果を客観的に理解しましょう。
「申告是認」なら対応は不要
申告内容に特に問題がなければ、「申告是認」となり、会社宛に書面で報告が届きます。
是認の報告が届いた場合、特に何もする必要はありません。
ただし、是認のなかには処分保留によるものがあります。処分保留の項目については、会社側が自主的な是正を行なうのが望ましいです。調査結果の分析や是正のタイミングは、税理士と話し合いながら決めましょう。
税務署長等は、国税に関する実地の調査を行なった結果、更正決定等をすべきと認められない場合には、納税義務者であって当該調査において質問検査等の相手方となった者に対し、その時点において更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知するものとする。(国税通則法第74条の11-1) |
指摘を受け入れて「修正申告」を行なう
調査の結果、指摘事項の修正が望ましい場合には、税務調査官から「修正申告」を勧められます。指摘を受け入れて修正申告を行なうと、法人は申告内容の誤りを認めたことになり、修正指示にもとづいて納税する義務が発生します。もし修正申告の提出後に納得のいかない点が見つかっても、異議を申し立てることはできません。
したがって、税務署に修正申告を求められた際に「なんだか面倒だし、これでいいや」と納得しないまま修正申告を提出することは避けましょう。指摘された誤りをしっかりチェックし、納得したうえで修正申告をするか更正をするか決めることが大切です。
前項の規定による説明をする場合において、当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は期限後申告を勧奨することができる。この場合において、当該調査の結果に関し当該納税義務者が納税申告書を提出した場合には不服申立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した書面を交付しなければならない。(国税通則法第74条の11-3) |
「更正」となった場合、不服申立ても可能
税務調査官の指摘事項に納得することができない場合には、修正申告に応じないという選択肢もあります。その際には、税務署に不服申立てを行ないます。不服申立てとは、税務署による指摘に納得できない場合に国税不服審判所などに訴訟を起こすことです。
その後の国税不服審判所の判断に不服がある場合には、地方裁判所への訴訟も可能です。ただし、更正により訴訟までいくと手続きに莫大な時間がかかるうえ、労力も必要になります。したがって、顧問の税理士や担当者としっかり相談して、訴訟をするかしないかを判断することをおすすめします。
国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容を説明するものとする。(国税通則法第74条の11-2) |
税務調査はどのように終了する?
税務調査終了のタイミングは、調査官が現地の調査をもとに報告書を作成し、署内で問題ないと判断されたときです。あとは税務署が法人に是認報告を行ない、完全に終了となります。
もし問題があれば、調査官は会社側に指摘事項を伝えて、会社が追加の税金を納めます。否認事項がきちんと修正された時点で、税務調査は終了です。
また、現地の聴き取りだけで税務調査が終わることはないため、注意しましょう。その場で調査官から伝えられるのは、「経費の計上で指摘が入るかもしれません」といった程度です。帳簿のチェック後、納税金額をすぐに算出してもらえるわけではありません。
まとめ
税務調査の結果が出るまでにかかる日数は、企業の規模によっても異なりますが、短い場合では1週間ほどで出ることもあります。
税務調査を少しでも早く終わらせるためには、帳簿などの書類や資料をしっかりそろえ、調査に素直に協力することが大切です。ただし、結果への対応については、慎重に判断を行ないましょう。
また、税務調査への対応に不安がある場合には、税理士の助けを借りることをおすすめします。専門家にサポートしてもらうことで、税務調査に対する準備や対応がしやすくなるでしょう。
TOMAの「税務調査立会サービス」では、経験豊富な税理士に加え、数名の国税局OB税理士が連携して、企業の税務調査のサポートを行なっています。税務調査を円滑に、優位に進めるために、通知から調査終了までのすべての対応を手厚く支援します。
税務調査について気になることや疑問点がある場合は、ぜひ一度お気軽にご連絡ください。