事業承継は、早めに準備を始めることが必要です。事業承継を成功させるには、これからの経営の仕方や体制、会社が目指す方向性など、後継者とともに考えながら引き継いでいくべきことは想像以上に多く、複雑で時間もかかります。
そのため、計画をつくり、“見える化” しておくことも重要です。早い段階から準備を進め、長期的な視点で考えましょう。この記事では、事業承継について取り組むことを順を追ってご説明します。
目次
引き継ぐ時期を決めることから始めましょう
時間的な余裕が選択肢を増やす
事業承継を考える際、まずは「いつまで自分が経営者として働くのか」という時期を決めることが必要です。身体的な点や判断能力などの予測も踏まえて、引退するタイミングを設定しましょう。
それから、「辞める時期までに、何をしなければならないか」ということを考えていきます。
事業承継で考えるべきことは、非常にたくさんあり、しかも複雑です。代表的な経営資源である「ヒト・モノ・カネ」、さらに事業のノウハウや取引先の信用など“目に見えない資産”を引き継ぐのは簡単ではありません。ですから、早めに取り組み始めて、時間的な余裕が長いほど、実施可能な対策の選択肢が増えます。
時間に余裕がある場合
たとえば、時間に余裕があるなら、後継者の選出や育成をじっくり行うことができます。さらに、後継者への権限移譲や経営体制の構築などに注力することも可能になります。
また、多くの中小企業において、事業承継は相続とも密接な関係があります。そこで、株式を含めた財産の分割や税務面についても十分に検討することが大切です。たとえば、株式の譲渡を長期間にわたって計画的に行うなど、贈与税を抑える方法もあるので有効活用しましょう。
さらに、「自社株式や経営権を長男に譲るならば、次男には何を残せるか?」など、家族内でのバランスも考慮する必要があります。この点においても、すぐに結論を出せるものは少なく、時間的な余裕を持ちながら判断していくことが必要です。
具体的な検討項目の最優先は“後継者”
引き継ぐ時期を決めたら、次に検討すべきことは、事業承継において最も大切な“後継者”についてです。後継者を決めることで、経営の引き継ぎ方や、会社組織のつくり方など、さまざまな具体的プランが見えてきます。
たとえば、その後継者の能力を考慮して、「どのような補佐や経営体制が必要か」ということを明確にできます。また、現在の経営者である自分と後継者との関係性から、権限移譲の方法や“目に見えない資産”の引き継ぎ方なども自ずと決まってくるでしょう。
さらに、「後継者が親族か否か」によって株式の譲渡の仕方が異なりますので、その点でも後継者を決定することが重要になります。
後継者を決めたら遺言書を作成
後継者を決めたら、遺言書を作成することが重要なポイントです。必要な項目をすべて明記する必要はなく、後継者に自社株式を渡したい場合は、株式に関する内容だけでも問題はありません。万が一の事態が起きたときでも、“経営権=自社株式”の承継を、自分が決めた通りに行えるようにしておくことが大切です。
事業承継計画をつくってから実行しましょう
事業承継を考える過程で出てきた重要項目や決定事項は、関係者の頭のなかだけにとどめるのではなく、明文化を行いましょう。事業承継計画書として“見える化”しておけば、行うべきタスクを失念してしまうリスクをなくすことができます。また、随時修正も容易にできますし、必要に応じて社内で共有化しながら計画を実行していくことも可能です。
必要書類について
最後に事業承継において必要になる書類を改めて確認しましょう。現社長が所有する自社株式の引き渡しについては、会社法などの法律で定められた書類が必要となります。また、株式の承継には大きく分けて親族内に承継するケースと親族外に承継するケースがあるため、それぞれのケースにおいて必要となる書類が異なります。違いは以下の通りです。
親族内承継の場合
親族に承継するケースにおいて必要になると想定される書類は以下のとおりです。
<現状の確認>
・株主名簿
<現社長の生前>
・株式贈与契約書
・株式譲渡契約書
・遺言書
<現社長の相続発生後>
・遺産分割協議書
親族外承継の場合
従業員など第三者に承継するケースにおいて必要になると想定される書類は以下のとおりです。
<現状の確認>
・株主名簿
<現社長の生前>
・株式譲渡契約書
・遺言書
親族内承継と親族外承継の大きな違いは以上の通りです。親族外承継においては、贈与や相続で株式を引き渡しせずに譲渡で引き渡すことが多いため、「株式贈与契約書」や「遺産分割協議書」は不要となるケースが多くなります。
まとめ
以上のように、事業承継をうまく行うためには、多岐にわたる内容について、一つ一つについて時間をかけて検討していかなければなりません。そして決定した内容に応じて、適切に書類を準備しておく必要があります。また、事業承継には相続という側面もあるため、第三者による客観的な視点や専門的な知識・ノウハウも重要です。
事業承継は現時点では緊急性がなくても、事業の存続にとって重要事項であるため、専門家と一緒に早めに着手していきましょう。詳細についてはTOMAにお気軽にご相談ください。サービスの詳細はこちらになりますのでぜひご覧ください。