「有限会社」と「株式会社」について、その違いを明確に理解できている人は意外と少ないのではないでしょうか?今回は事業継承における「有限会社」と「株式会社」の違いを解説いたします。
目次
そもそも、「有限会社」とは何か?
厳密に言うと、現在「有限会社」はもう日本に存在しません。ですが、世の中に『有限会社○○』といった会社が存在しているのも事実です。では、有限会社を名乗っている会社はいったい何なのでしょうか?
有限会社とは、かつて日本において認められていた会社形態のひとつです。2006年に有限会社法が廃止されたことに伴い、今はもう新規設立は認められていません。ですが、当時すでに存在していた有限会社については、「特例有限会社」と呼ばれる株式会社の一種として存続することが認められています。つまり、現在有限会社を名乗っている会社は、法的には実は株式会社の一種であるということになります。
特徴として、役員の任期に制限がない、株式の譲渡制限がかけられている、設置できる機関の種類が少ない等々、一般的な株式会社と比べて簡素で小規模な会社に適した形態となっています。
※ 以下、有限会社でない(一般的な)株式会社のことを、単に「株式会社」と書きます。
有限会社から株式会社への移行には各種手続きの手間や費用がかかりますが、それ以外にも敢えて有限会社のままでいることにどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
「有限会社」と「株式会社」事業承継における違い
有限会社は基本的に株主の交代を予定していないため、こと事業承継の場面に限って言えばどうしてもデメリットのほうが目立ちます。具体的には、以下のようなものがあります。
1.株式の譲渡制限とその例外
有限会社の株式には譲渡制限がかけられており、その譲渡(無償の場合も含む)をするには会社の承認が必要となります。ただし、「株主間の譲渡」についてはその制限がかけられません。つまり、例えば親族数名で株式を分け合っている場合、その親族間での譲渡は容易にできるということになります。
親族間で会社経営の意見が分かれているようなケースでは、株式会社に移行してこの制限をかけておくほうがいい場合もあるかもしれません。
2.組織再編の制限
有限会社の存続はあくまで経過措置であることから、組織再編に制限がかけられています。具体的には、株式交換を行うことや吸収合併における存続会社になること等ができません。事業承継の手段としてM&Aを考えている場合、株式会社同士のM&Aに比べて選択できるスキームが制限されることになります。
なお、他社に吸収してもらう形での吸収合併(=消滅会社となること)はできます。
3.上場できない
新規株式公開(IPO)をするには株式の譲渡制限を外す必要があるため、上場による承継を考えている場合は株式会社への移行が必須となります。
4.信用力の低さ
最大のデメリットといえるのが、対外的なイメージです。法的にはなんら根拠はないのですが、有限会社というだけで株式会社より信用されにくいという風潮があります。承継者を探すという場合に、『有限会社は継ぎたくない』と言われてしまう可能性がないとは言い切れません。
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事業承継で迷った時は・・
今回は事業承継の場面に限って話をしたので、有限会社のままでいることはデメリットばかりという印象を受けてしまったかもしれません。しかし、承継前後のことまで考えると、株式会社では必要な決算公告や定期的な役員登記が必要ないなどのメリットもあります。有限会社の事業承継を考えている方、株式会社への移行を考えている方は、一度専門家にご相談されてみることをおすすめします。
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