前回説明した「グループ会社の青色欠損金を引き継いで節税できるかも?」の続きとして別の要件による青色欠損金の引継ぎ(合併を前提)を説明します。
みなし共同事業要件による青色欠損金の引継ぎ
みなし共同事業要件による青色欠損金の引継ぎは適格要件を満たすが支配継続要件を満たさない場合における青色欠損金を引継ぐための要件です。
このみなし共同事業要件は(1)から(4)までの全ての要件を満たすか、(1)と(5)の両方の要件を満たす場合に適用されます。
(1)事業関連性要件
適格合併に係る被合併法人の被合併事業(主要事業)のいずれかの事業とその適格合併に係る合併法人の合併事業のいずれかの事業とが相互に関連するものであること。
(2)事業規模要件
被合併事業と合併事業のそれぞれの売上金額、従業者の数、適格合併に係る被合併法人と合併法人のそれぞれの資本金の額若しくは出資金の額又はこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと。(いずれかの割合が5倍を超えなければ良い。(2)及び(3)においても同様である。)
(3)被合併法人の事業規模継続要件
被合併事業が被合併法人支配関係発生時からその適格合併の直前の時まで継続して営まれており、かつ、その被合併法人支配関係発生時とその適格合併の直前におけるその被合併事業の規模の割合がおおむね2倍を超えないこと。
(4)合併法人の事業規模継続要件
合併事業が合併法人支配関係発生時からその適格合併の直前の時まで継続して営まれており、かつ、その合併法人支配関係発生時とその適格合併の直前の時におけるその合併事業の規模の割合がおおむね2倍を超えないこと。
(5)特定役員引継要件
適格合併前における被合併法人の一定の特定役員と合併法人の一定の特定役員であったものが、適格合併後にその合併法人の特定役員となることが見込まれていること。
以上がみなし共同事業要件ですが、以前こちらのブログでもご紹介した『ヤフー事件で争点となった「特定役員引継要件」』という内容で、みなし共同事業要件が最高裁で争点となったケースがありました。これは、被合併法人の青色欠損金を引継ぎ利用するためだけにみなし共同事業要件を満たした行為として否認された事例です。
法人税法上の規定に「組織再編成に係る行為又は計算の否認」という以下の規定があります。
「合併等の法人の行為又は計算で、これを容認した場合に法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。」(一部省略。)
形式的には要件を満たしているが、実質的には青色欠損金を引継ぎ利用すること以外にその行為・計算を行うことの合理的な事由が存在せず、経済的行為として不自然・不合理なものとして否認されたものです。
このように形式的に要件を満たしていた場合においても、実質的に経済的行為としての合理性があるかどうか見極めることがとても大切です。
まとめ
2回にわたって、青色欠損金の引継ぎについて説明しましたが、実務上は要件を形式的及び実質的に満たしているかの判定がとても重要になります。また、組織再編はメリットだけではなくデメリットもあり、その法人によって検討しないといけないことが多々ありますので、組織再編にご興味のある方はぜひご相談下さい。