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事業承継を信託するメリット・デメリットとは

記事作成日2017/09/13 最終更新日2021/01/22

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親族内承継、親族外承継、M&A等、事業承継を考えた際に思い浮かぶワードは複数あると思いますが、近年、事業承継の円滑化の手法として関心を持たれているものに、「信託」があります。今回は、メリット・デメリットを含め、事業承継における信託についてご紹介します。

事業承継における信託とは?

6 事業承継を信託するメリット・デメリットとは「信託」とは、財産を持つ者(委託者)が、信託行為(信託契約や遺言)によって財産を託し、財産を託された者(受託者)は、定められた目的(信託目的)に従って、財産を管理・処分し、その財産から生ずる利益を委託者から指定された者(受益者)に与えることを約束する法律関係を言います。

信託は受託者を誰にするかによって、「民事信託」と「商事信託」に大別されますが、もともとは信託会社や信託銀行が、信託業法のもとに受託者となって信託報酬を得る、営利目的の「商事信託」が主流でした。

民事信託とは?

民事信託とは、財産管理手法の1つとです。「契約」により、資産保有者(委託者)が、信頼できる相手(受託者)に対し、資産を移転し、信託目的に従い、特定の人(受益者)のためにその信託財産を管理・処分することです。

平成19年の改正信託法施行によって、様々な制度が創設され、民事信託(営利目的でない信託)の活用がしやすくなったことで、事業承継においても、信託を活用できる幅が広がりました。受益権の権利行使の実効性や機動性を高めるための措置や、受託者義務の適切な要件下での合理化、多様な信託の利用形態に対応するための制度の整備など改正前から大きな変更がありました。

商事信託とは?

商事信託とは、営利を目的としない民事信託と異なります。会社や信託銀行は営利目的で「信託報酬」を受け取ります。信託会社や信託銀行は、財産の所有者から財産を託され(受託者となり)、管理や承継を行います。

事業承継における信託の種類

受託者の違いによる大別

前述しましたが、信託は受託者を誰にするかで「民事信託」と「商事信託」に大別されます。「商事信託」は、内閣総理大臣の免許又は登録を受けた信託会社等が、営利目的で受託者となる信託を指します。「民事信託」は、受託者について基本的に制限はなく、営利目的でなければ、免許等を持たない個人や法人でも受託者となることができます。

遺言代用(型)信託

経営者が、生前に自社株を対象に信託を設定し、信託契約において、自らを当初の受益者として、経営者死亡時に後継者が議決権行使の指図権と受益権を取得する旨を定めるものです。これにより、議決権の分散化が防止でき、後継者が確実に経営権を取得できることになります。

他益信託

経営者が自社株を対象に信託を設定し、信託契約によって後継者を受益者と定めつつ、議決権行使の指図権については経営者が保持することを定める方法です。これにより、経営者は経営の実権を保持しつつ、後継者の地位を確立させることができます。

後継ぎ遺贈型受益者連続信託

経営者が自社株を対象に信託を設定し、信託契約によって、後継者を受益者と定めつつ、当該受益者である後継者が死亡した場合には、その受益権が消滅し、次の後継者が新たに受益権を取得すると定める方法です。これにより、経営者は、現後継者の次の後継者まで定めておくことができます。

事業承継を信託するメリット・デメリット

メリット

・後継者が経営権を確実に取得することや、地位を確立させることで、事業承継の円滑化が図れる。
・後継者の地位を確立させつつ、経営者が経営の実権を保持することができる。
・後継者の次の後継者まで定めておくことで、経営者の意向を守ることができる。
・経営者の死亡と同時に、議決権行使の指図権や受益権が移動するため、経営の空白期間が生じない。

信託契約によって財産の使い方を指定できることは、信託の大きな特徴であり、この点が事業承継に活用できるメリットと言えます。自社株という財産を、「議決権行使の指図権」と「受益権」に切り離し、使い方や渡す相手を定めることで、経営権を保持しつつ後継者の地位確立を進められますし、経営者亡き後の配偶者の生活不安を解消する活用も可能です。

また、信託法は民法の特別法であることから、現行民法では無効である次々世代への承継(後継者の次の後継者)まで定められることも、経営意向を存続させたい経営者にとっては大きなメリットと言えるでしょう。

デメリット

・受託者には、「信託事務遂行義務」「善管注意義務」「忠実義務」「公平義務」等の義務があり、これらを遂行するに相応しい人材が親族内や関係者に見つからない場合がある。

・遺留分減殺請求をされた場合の対処について見解が定まっていないことによる不安。(信託で後継者に財産全てを渡すと定めても、後継者以外の親族から遺留分を請求された場合の問題。信託法は民法の特別法であり、信託法に従うから遺留分は発生しないとする意見と、遺留分を認めないことは相続人の権利の侵害であるとの意見が対立し、見解が定まっていない)

・事業承継に信託を活用することへの理解を得るために、労力がかかる場合がある。

信託が比較的新しい手法であるために、上記のようなデメリットが考えられますが、専門家の協力によって解決が可能です。ちなみに、商事信託の場合は、信託報酬が発生する、審査がある、途中解約は難しいなどのデメリットもあります。

以上、事業承継における信託と種類、そのメリット・デメリットをご紹介しました。

信託は法改正によって事業承継への活用の幅が広がり、近年では、認知症による経営者の判断能力低下への対応策としても注目されています。しかし、法改正から10年足らずの新しい手法のため、遺留分減殺請求との兼ね合いをはじめ、法解釈や活用方法には、未知の部分があります。

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