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事業承継による消費税の納税義務や相続との違いを解説

記事作成日2017/09/13 最終更新日2023/08/04

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事業を営んでいて年間の課税売上高が1,000万円以下であれば、免税事業者として消費税の納税義務はありません。ですが、免税事業者の対象とならなければ、当然消費税の納税義務が発生します。この消費税の納税義務は、事業承継の後も引き継がれるのでしょうか?今回は、事業承継の納税義務についてご紹介します。

事業承継とは

事業承継とはその名の通り、営んでいる事業を後継の経営者に承継させることです。法人であれ個人事業主であれ、事業承継は発生しますが、今回は個人事業主の事業承継をメインに紹介していきます。

個人事業主が事業承継をする場合は、事業主が生きている間に後継者に承継する場合と、事業主が亡くなった後に後継者に相続する場合の2つのパターンがあります。消費税の納税義務の条件は、ケースによって異なります。

消費税の仕組み

まずは消費税の仕組みについて確認しておきましょう。消費税は冒頭にも書いた通り、年間の課税売上高が1,000万円以上かそれ超えるかによって納税義務の有無が分かれますが、いつの課税売上高で判断するかというと、「2年前」の課税売上高となります。

個人事業者の課税期間は、1月から12月となっていますが、対象となる年の1月から12月にかけての課税売上高が1,000万円を超えた場合は、2年後に消費税の納税義務が課税されるというわけです。

生前に事業を承継した場合の後継者の消費税納税義務

消費税の納税義務について、事業主が生きている間に後継の経営者に事業承継した場合を見ていきましょう。個人事業主の場合は、生きている間に事業承継をするということは、「譲渡者の事業の廃止」と「譲受者(後継者)の事業の開始」を意味します。

後継者が事業承継する前になんらの事業も起こしていないとするならば、事業承継をすることで「開業」をすることになります。

そして消費税に関しては、原則として、開業後2年以内は消費税の納税義務が発生しないことになります。また、開業して何年たっても、課税売上高が1,000万円以下であれば、その後も消費税の納税義務は発生しません。

事業を相続した場合の後継者の消費税納税義務

では、譲渡者が死亡した後に事業承継を受けた、いわゆる「相続」があった場合はどうなるのでしょうか?

この場合も「譲渡者の事業の廃止」「譲受者(後継者)の事業の開始」であることに変わりはありませんが、消費税の計算をするにあたっては生前に事業承継が行われた場合とは違い、譲渡者の課税売上高についても後継者が引き継ぐことになります。

例えば、平成28年に譲渡者が死亡し、その年の譲渡者の課税売上高が600万円、後継者の課税売上高が500万円だったとするならば、譲渡者と後継者の課税売上高を合計すると1,100万円となります。
そのため、後継者は消費税の納税義務者となり、2年後の平成30年に消費税を納める必要が出てくるのです。

消費税に関して必要な届出について

消費税の納税に関しては、基本的に必要な手続きはありません。課税売上高が1,000万円以下であれば自動的に納税義務が免除され、1,000万円を超えた場合にはこちらも自動的に納税義務が発生します。ただ、手続きが必要なケースもあります。それが、譲渡者が課税事業者になっていた場合です。

相続後の後継者の課税売上高が1,000万円以下の場合は、原則として消費税の納税義務は発生しません。しかしこの場合でも、譲渡者が生きている間に課税事業者になっていたならば、消費税の納税義務が発生してしまいます。

課税されないようにするためには、課税事業者から免税事業者に戻るための手続きを行う必要があります。これを「消費税課税事業者選択不適用届出手続」といいます。ただ、この手続きは始まってしまった課税期間には適用になりませんので注意してください。

個人事業主の事業承継による消費税の納税義務は、譲渡者が生きている間に事業承継が行われたのか、そうでないのかによって変わってきます。もしも譲渡者が課税事業者だった場合は、生前の事業承継の方が後々消費税を節税できますので、できるだけ早い段階で事業承継を考えることをおすすめします。

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