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事業承継における黄金株の活用方法

記事作成日2020/02/05 最終更新日2023/09/20

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事業承継により会社を存続させるときには、できるだけ早く後継者に経営を任せたいところです。しかし後継者には、財産・技術・理念などを総合的に引き継いで発展させる能力が求められます。そうした理由から、後継者にしたい人物がまだ経営者として経験不足であることに不安を感じていませんか?

後継者がまだまだ未熟である時期に、できるだけ失敗のリスクを回避していく方法があります。それが黄金株の活用です。黄金株は現経営者の気持ちの整理に役立つため、まさに事業承継向きの株式といえます。ここでは黄金株とは何かを解説し、発行方法と活用方法をご紹介します。

黄金株とは

黄金株とは、いわゆる「拒否権付株式」のことです。種類株式の一種であり、重要な決定事項の議決権に対して拒否権をもつものです。

黄金株を1株でも発行すれば、2~3年は後見人的な立場で議決に介入できます。さらにいうと黄金株が1株でも発行されれば、普通株主総会で決められた内容でも、黄金株を有する株主の許可が下りないかぎり決議が成り立ちません。黄金株には、そのような強力な決定権があるとされています。

黄金株の発行方法

黄金株を発行するには、まず株主総会の際に「種類株式の発行を定める手続き」を行わなければなりません。株主総会で定款を変更し、株主総会議事録を法務局に申請します。費用については、司法書士を介さない場合、登録免許税3万円を法務局に納めるだけです。

以下では、黄金株の発行方法をもう少し詳しくご説明します。

◇黄金株の内容と発行可能株式総数を定める

特別決議として株主総会を開催し、定款変更の決議を行います。決議の条件は、議決権を持つ株主の半数以上が出席し、出席株主の3分の2以上の賛成を得ることです。

さらに、「種類株式(黄金株)の内容」と「発行可能株式総数」を定める必要があります。内容と総数を決めるのは、通常の募集株式発行手続きと異なる点であるため注意してください。ちなみに非公開会社では、発行可能株式総数の上限はありません。

◇法務局に変更登記の申請を行う

無事に株主総会で黄金株の決議が通れば、後は法務局に変更登記の申請を行うだけです。法務局で承認されれば、黄金株を発行できます。

手続きに関しては、株主総会と同じ日に行っても問題ありません。もちろん、別の日に単独で変更登記の申請を行い、種類株式として発行してもよいです。

事業承継における黄金株の活用方法

黄金株の活用方法としては、後継者に株式と経営権の移転を行うタイミングが合わないときにおすすめです。後継者の年齢が若く、まだまだ経営ノウハウが乏しい場合、会社を任せることに抵抗を感じる現経営者も多いでしょう。

そこで、黄金株をあらかじめ発行しておきます。そして黄金株を現経営者が保有し、それ以外の普通株式を後継者へ譲渡または贈与しましょう。こうすれば大事な決議を現経営者がコントロールしつつ、頃合いを見計らって後継者に経営権を委ねられます。

後継者が誤った方向へ進みそうなときのみ、先代が黄金株の効力を発揮するイメージとなります。最終的な判断を先代が行う環境を整えることが大切です。環境が整えば、後継者は臆せず経営を行えます。

黄金株のデメリット

会社を守るための拒否権を有しており、たった1株でも株主総会の決議を覆せるのが、黄金株です。絶大な効果がある分、取り扱いに十分注意しなければなりません。もし部外者の手に黄金株が渡れば、金銭を要求されるリスクがあります。

そのほかにも先代の経営者が亡くなってから黄金株が見つかる、といったケースもあるため気をつけてください。トラブルに巻き込まれないためにも、「現経営者の死後に黄金株を会社が買い取る契約(取得条項付種類株式の発行)」を視野に入れたほうがよいです。

また、黄金株を発行すると「中小企業経営承継円滑化法」を利用できないといったデメリットがあります。中小企業経営承継円滑化法が適用されれば、例えば以下の3つが受けられます。

・承継のための金融支援
・贈与株式等の評価額の固定化
・取引相場のない株式等の納税猶予制度

中小企業ならばこういった承継支援があるため、むやみに黄金株を取得してよいわけではありません。さらに黄金株の相続税評価額は、通常の株式と変わりません。特別な価値を持つわけではなく、1株は1株として数えます。強い効力をもつ黄金株といえども、あまり過信しない姿勢も重要です。

まとめ

事業承継では、後継者へいかに議決権を集中させるかがポイントです。ただし拒否権を有する種類株式、つまり「黄金株」の発行には注意が必要です。強力な株式という認識を甘く見ていると、会社の脅威になりかねません。黄金株は取得条項付株式にするなど対策をしておくようにしましょう。

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