事業承継で金庫株を活用する方法とは「会社に自社株式を買い取ってもらうこと」を指します。これによって、例えば経営者が亡くなった時も、株式の分散を避けることができます。株式の分散を避けることは、会社の分裂防止も意味します。今回は金庫株を事業継承に活用するメリットや注意点、スムーズな事業継承を行うための準備方法などを解説します。
目次
金庫株とは
金庫株とはいわゆる自社株式のことです。具体的には、企業発行の自社株を買い戻すなどして保有している状態を指します。平成13年の商法改正により、自社株の自由な買い戻しが可能となり、従来のように回数、時期、取得目的などの制限はなくなりました。
このように自由に自社株式を取得、保管することができるイメージから、「金庫株」という呼称が定着したようです。
金庫株を事業承継に活用するメリット
この金庫株(自社株式)を買い取ることがなぜ事業承継対策になるのでしょうか。それは経営者が亡くなった時に、株式が分散する恐れがあるからです。
金庫株を適切に処理しないまま経営者が亡くなったとします。すると株式は相続の対象となり、相続人へ分散することになります。仮に良い後継者がいた場合も、経営権の移譲がスムーズに行われず、会社の経営に大きな影響を及ぼす可能性がある他、最悪の場合分裂に至る恐れもあります。
また、平成18年施行の会社法により「売渡請求」ができるようになったことも、自社株の散逸を防ぐのに役立っています。これは、相続人より自社株を強制的に買い取ることができるもので、定款に盛り込む必要があるものの、事業承継におけるトラブル回避に一役買っていると言えるでしょう。
なお、相続株式の自社売却については所得税課税の特例があります。非上場企業の場合、相続税申告期限より3年以内に会社へ相続株式を売却すれば、譲渡益全体への譲渡益課税の適用となります。譲渡益課税は20%ですが、これは上限50%の累進課税(みなし配当課税)よりも優遇されており、この点もメリットと言えます。
金庫株を買い取るときの注意点
もちろん、金庫株を買い取るときには注意点があります。
まず「剰余金の分配可能額を満たすか」をチェックします。剰余金の分配可能額とは「累積されてきた税引後利益の合算」ですが、この範囲でしか金庫株の買い取りはできません。
ただし、これがクリアできても、実際に金庫株を買い取るときの現金(キャッシュ)がなければどうしようもありません。ただ、この問題については生命保険を活用して買い取り資金を準備する方法もあります。また、方法によっては会社のキャッシュフローに悪い影響が出てしまう恐れがあるため、きちんと調整しつつ、適切なタイミングでの買い取りを目指す必要があります。
会社法で規定された制度を活用することで、分散した株式を買い取り、会社の経営の安定化を図ることができます。金庫株を活用すると、自社株を後継者に集中させることができ、円滑な事業承継が期待できるようになるのです。
自社株の引き継ぎは、特に同族経営の中小企業などにとっては重大問題ですから、金庫株の活用は最大限に考えるべきと言えます。ただし、金庫株の活用方法を知り、それを今すぐ実践したいと思っても、常に金庫株の買取ができると言うわけではありません。財務内容によっては、それが不可能なケースもありますので、金庫株の活用を考える人は長期的なプランニングをしておく必要があります。
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