企業では、組織力の向上や業務の効率化を目指すために組織再編を行うことがあります。この場合、企業をまたにかけた組織再編が主になります。ここでは組織再編の種類について触れ、それらのメリットやデメリットを掘り下げてまいります。
目次
合併
合併は、2つ以上の会社が契約を行い、合体して1つの企業として運営をするという手法です。合併にも2つの種類があります。
①吸収合併
会社の合併によって母体となる1社のみが存続し、母体以外の会社の事業が吸収されることを指します。吸収された会社は解散し、母体となる会社は解散した会社の財産や社員を受け入れることになります。留意点としては残る母体企業は吸収相手の会社に負債がある場合それも受け入れる必要があります。
②新設合併
会社の合併によって、合併に合意したすべての会社が解散すると同時に会社を新規に設立して1つの会社として成立させることを指します。
◇合併のメリット
・合併をすることで包括承継の効果が生まれる
・合併による権利義務に関する手続きや契約関係、従業員を承継させるための手続きは原則不要
・合併により法人格を一体化できるため、それぞれの会社のノウハウを事業に生かせる。相互補完ができることによってビジネス面で大きな結果が得られる。
◇合併のデメリット
・企業統合時に当事者の会社間のルールの違いを整理する必要がある
・合併に反対する株主が行使する株式買取請求権の受け入れ
・官報公告など債権者保護手続き
・株券を発行している株式会社の場合、株主を招集して株主総会特別決議を行う必要がある
株式交換・株式移転
株式交換や株式移転は親会社・子会社という形で提携を結ぶ場合に用いられる方法です。こちらは合併という形ではなく、それぞれ独立した企業体を保ちます。
①株式交換
親となる会社が子会社の株式を100%取得し、子会社の株主へは親会社が発行する株式を渡すという仕組みです。この株式の交換によって完全な親子関係を構築します。
②株式移転
組織再編を検討する複数の株式会社が、完全親会社(ホールディングカンパニー)を設立。それぞれが保有する株式を親会社に移転し、自ら設立した会社の完全子会社となることで、その対価として株主は親会社が発行する株式の割り当てを受ける仕組みです。
◇株式交換・株式移転のメリット
・いずれの場合においても、会社の資産や事業の変更を伴うことなく、「支配関係」のみを変更することができる
・完全子会社側は、会社自体は消滅しない。(存続可能)
・株式を交換・移転するだけなので資金調達や長期にわたる調整も不要
◇株式交換・株式移転のデメリット
・親会社、子会社ともに手続きが煩雑化しやすい
・非公開株式の交換の場合は、株式の現金化が困難。親会社の株式が非公開だった場合、完全子会社の株主の利益に影響をきたすことがある
・いずれの場合も株主構成が変わってしまう可能性もあり、経営に影響をきたすことがある。
会社分割
会社分割は、会社が有する事業の権利義務の一部または全部をほかの会社に包括的に継承させる仕組みです。会社自体は合併や消滅はなく、事業のみが引き継がれます。
会社分割には2つの種類があります。
①吸収分割
既存の会社が相手先の事業の権利義務を引き継ぐ手法です。
②新設分割
新会社を設立し、その事業を新会社が引き継ぐ手法です。
また、承継会社が権利義務を引き継ぐことの対価として交付する財産等の受け取り方法によっても細分化されます。
③分社型分割
分割した会社が承継会社から財産(株式など)を受け取ります。
④分割型分割
分割した会社の株主が承継会社からの財産(株式など)を受け取ります。
◇会社分割のメリット
・一般的に分割継承の対価として株式を交付するため、現金を必要とする場面は少ない
・一部権利の包括的な承継のため契約の見直し等は原則的に不要
・分割側としては、不採算部門などの切り離しに成功するため、今後不採算部門から損失を生み出すことがなくなる
◇会社分割のデメリット
・承継企業が引き継いだ事業に債務や不要な資産があっても、それも同時に引き継がれることになる
・簿外の債務も引き継いでしまうリスクがある
・承継会社の資格によっては、あらかじめ行政からの許認可を取得しないと、引き継げない事業も存在する。
事業譲渡
事業譲渡とは、一部またはすべての事業を第三者に譲渡または売却することを指しています。契約によって、財産や権利関係の類を移転させる手続きとなります。
なお、譲渡する事業とは、これらのすべてを網羅します。
・一定の目的のために組織化された、有形・無形の財産や債務
・人材と事業組織
・ノウハウやブランド
・取引先との関係性
なお、資本関係を結ばない場合は、譲渡の対価として現金などの金銭が伴うことが一般的です。
◇事業譲渡のメリット
・新規事業に乗り出そうとした場合に、既存のノウハウやブランドをピンポイントで手中に入れることができる。(譲渡される事業の取捨選択も可能)
・譲渡する側としては負債や不採算事業を切り離すことができる場合がある
・合併ではないため、譲渡する側の法人格は残せる
◇事業譲渡のデメリット
・目安として、その事業が生み出す正常利益の3~5年分という多額な譲渡費用が必要
・事業を譲渡した会社には競業避止義務があり、譲渡後は同様の事業を行うことが制限されることがある
まとめ
組織再編の種類とそのメリットやデメリットに関してまとめました。企業側としては大きな利益をもたらすものとして受け止めるべき改革といえるでしょう。
慎重にならざるを得ない部分もあるため、専門家の意見を仰ぐことはもちろん、社内協議も重ねる必要があります。
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