人事労務のなんでも質問集
異動
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Q1
【転勤命令】会社には人事権があるので自由に転勤命令をすることができる?
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A1
就業規則又は雇用契約書において勤務場所の変更があることが明記していれば、毎回転勤の度に本人の同意を取ることなく転勤させることができます。
但し、次のような場合は、権利濫用として転勤命令は無効となります。
①業務上の必要性が存しない場合
②他の不当な動機、目的を持ってなされた場合
③社員に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合
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Q2
【出向命令】関連会社への出向は、会社から一方的に命じることができる?
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A2
出向命令は、転勤命令同様、あらかじめ就業規則に定めがあれば、都度の個別の同意を取らなくても出向させることができます。
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Q3
【転籍命令】関連会社への転籍は、会社から一方的に命じることができる?
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A3
転籍命令は、雇用主である会社が変更となるため、たとえ就業規則に転籍命令の規定があったとしても、個別に同意を取らなければ無効となります。
なお、転籍を拒否したからといって業務命令違反として懲戒することはできません。
労働時間
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Q1
【出張先への移動時間】自宅から出張先へ直行する時間は労働時間として賃金を支払わなければならない?
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A1
直行における自宅から客先までの移動時間は通勤時間となります。客先から直帰する場合も、同様の扱いです。但し、労災保険上の取扱いは異なります。
自宅から客先までの移動時間は業務命令によるため、事故や怪我があった場合は、業務災害となります。
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Q2
【休日の出張移動時間】遠隔地への出張で休日に移動した場合は休日労働になる?
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A2
原則として休日労働になりません。実際には、出張に伴う時間が会社の指揮・命令からどれくらい解放されているかで判断します。例えば、月曜日の朝9時から客先で打合せがある場合、前日の日曜日(所定休日とする)に前泊しなければ間に合わないような場合で、単に移動だけであれば、休日労働とはなりません。
例外として、貴金属を運ぶなど、常に監視をしなければならない業務が業務命令として出されているのであれば移動中の行動の自由性はありませんので、会社の指揮・命令下にあることとなり、労働時間となります。
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Q3
【残業命令と36協定】時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)を締結せず、残業命令すると罰則を受けることがある?
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A3
36協定を締結していなくても、就業規則において時間外労働について規定していれば残業命令を出すことができます。しかし、36協定の締結がなく、法定の労働時間以上に働かせた場合は、労働基準法違反として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を受けることがあります。
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Q4
【1日の休憩時間】8時間勤務の場合の休憩時間は1日1時間与えなければならない?
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A4
休憩時間は、1日につき下記の基準にしたがって付与する必要があります。
実労働時間 6時間超: 45分
実労働時間 8時間超: 60分
6時間以下の労働の場合は、休憩がなくても構いません。また、8時間を超え、残業になったとしても、すでに60分の休憩が与えられていれば、改めて休憩を与える義務はありません。
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Q5
【振替休日】振替休日は同一月のうちに振り替えれば割増賃金を支払わなくてよい?
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A5
1日の所定労働時間が8時間の場合、同一週内で振り替えた場合は、週40時間を超えないため、割増賃金(時間外労働又は休日労働)は不要ですが、同じ賃金計算期間に振り替えた場合は、割増賃金と通常の賃金との差額(0.25時間分または0.35時間分)の支払が必要です。なお、同じ賃金計算期間を超えた振り替えの場合は、割増賃金の支払が必要です。
休日・休暇
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Q1
【部長職の休日】労働時間・休憩・休日の規定が適用されない部長職は、1日も休日を与えなくてもよい?
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A1
労働基準法における、労働時間・休憩・休日の規定が適用されない管理監督者は、時間外・休日労働に制限がないだけでなく、休日も取らせる必要はありません。
但し、労働者であることに変わりは無いため、長時間労働などに対する安全配慮は必要です。
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Q2
【有休休暇の取得順位】年次有給休暇は、繰越分から取得させなければならない?
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A2
一般的に有給休暇は繰越分から消化すると思いがちですが、請求された有給休暇は、就業規則で定めがない限り当年度に付与したものから消化していきます。当年度分から消化すれば、繰越分は先に時効で消滅するので、会社にとって有利です。
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Q3
【有給休暇の半日付与】年次有給休暇を半日単位で請求された場合、認めなければならない?
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A3
労働基準法上、有給休暇を半日付与とする義務はありません。また、時間単位の有給休暇についても、労使協定の締結がなければ付与しなくても問題ありません。
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Q4
【パートの有休休暇】週2日1日5時間勤務のパートに対しては年次有給休暇を与える必要はない?
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A4
週30時間未満または週4日以下の勤務形態のパートについては、勤務形態に応じて比例付与しなければなりません。(週30時間以上または週5日の勤務は通常付与)。
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Q5
【有給休暇の当日取得申請】急な体調不良で年次有給休暇の取得日当日に申請をしてきた社員に対して、取得を拒否できる?
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A5
有給休暇は、遅くとも取得する前日までに時期を指定しなければならないため、急な体調不良など、当日の取得申請を認める必要はありません。一般的には、会社が任意に認めています。
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Q6
【夏季・年末年始休暇】夏季休暇や年末年始休暇は与えなければならない?
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A6
法律上与えなければならない義務はありません。労働基準法において、週1日または4週で4日の休日が確保されていれば、夏季休暇や年末年始休暇、祝日などを休ませる必要はありません。但し、このような労働条件の差異が、他社と比較して大きいと、優秀な人材を確保できないことにもなるので、一般的には多くの会社で付与しているのが現状です。
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Q7
【裁判員休暇】裁判員休暇は有給で与えなければならない?
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A7
裁判員として選抜され、公務を行う場合であっても、ノーワークノーペイの原則により、休暇を無給としても問題はありません。なお、裁判員に選抜されると、裁判所から所定の日当が支払われます。
休職
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Q1
【休職制度】病気で働けなくなった社員に対して、休職は必ず与えなければならない?
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A1
休職制度は労働基準法で義務づけられているものではありません。就業規則において休職制度や休職制度適用範囲、休職期間などを自由に設計できます。
したがって、入社1年未満の社員を制度の適用除外とすることも可能です。
但し、優秀な新入社員まで適用除外とすることは得策ではないため、特別の事情がある場合は、入社したばかりでも認めるような運用規定を整備しておく方が良いでしょう。
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Q2
【休職中の賃金】休職中の社員の賃金は、復職するまで会社が補償しなければならない?
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A2
会社が賃金を補償する義務はありません。休職期間中の賃金の補填として、業務上の傷病の場合は、労災保険から休業(補償)給付として平均賃金の8割相当が支給されます。また、業務外の傷病の場合は、健康保険から傷病手当金として標準報酬日額の2/3相当が支給されます。
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Q3
【数回にわたる休職】病気がちな社員が、休職と復職を繰り返している場合、退職させることができない?
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A3
複数回にわたり休職を繰り返している社員に対しては、概ね2通りの方法で退職させることが可能です。
1つは病気による正常な労務提供不全を根拠とする解雇、もう1つは、休職に通算規程を設け、複数回の休職を1つの休職期間として取り扱うようにすることで休職期間満了へ導く方法です。
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Q4
【休職期間満了の解雇】休職期間を満了しても復職できない場合、満了の30日前に予告する必要がある?
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A4
解雇予告が必要となるため、満了30日前に通知が必要です。
解雇予告ができない場合は、解雇予告手当の支払が必要になります。休職制度は、制度そのものが解雇猶予措置という位置付けになっているため、事実上の解雇予告をしているのと同じことになります。休職期間満了をもってしても復職できないのであれば、自然退職として扱うように就業規則に規定すれば、改めて解雇予告手当の支払いや解雇予告通知の必要はありません。
育児・介護
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Q1
【職場復帰意思のない育児休業】育児休業に入る前から職場復帰の意思がないと分かっている社員の育児休業を拒否できる?
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A1
育児休業は職場復帰を前提としているため、当初より職場復帰意思のない社員の育児休業の申し出を拒否することは可能です。但し、育児休業の取得をするにあたり、復職を確約する誓約書を書かせることや、休業中に復職意思がなくなったからといって退職を迫るような対応は好ましくないとしています。
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Q2
【男性の育児休業】育児休業は、女性のみ取得できるもので、男性には認めなくてよい?
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A2
男性にも認める必要があります。育児休業は、会社の規模に関わらず、一定の要件に該当するすべての男性・女性社員に認められた権利です。なお、現在は、夫と妻が同時期に育児休業を取得することも認められています。
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Q3
【育児休業中の賞与】賞与算定期間中の1/2が育児休業となった社員に対して、賞与を全額カットしてもよい?
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A3
賞与の支給において、賞与算定期間のうち育児休業期間があると言う理由で、育児休業期間以上に算定期間を控除して賞与を計算し支給することは、不利益な取り扱いになるためできません。
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Q4
【介護休業】介護認定を受けていない家族を介護するための介護休業はできる?
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A4
介護休業は、介護保険上の介護認定を受けていなくても、育児介護休業法における要介護状態にある対象家族を介護するための休業であれば認められます。
なお、対象となる家族の範囲は次の通りです。
①配偶者(事実婚を含む)
②父母及び子
③同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫
④配偶者の父母
服務規律・懲戒
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Q1
【就業規則にない懲戒処分】無断で遅刻や早退・欠勤を繰り返す社員に対して、就業規則に定めは無いが、懲戒処分できる?
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A1
懲戒処分は刑法と同様に罪刑法定主義であり、就業規則の懲戒事由にない懲戒は行うことはできません。労務の不提供を理由とした普通解雇が可能となる場合はあります。
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Q2
【会社指定の教育研修の強制】賃金を支払えば、会社はどんな研修でも強制的に受講させることができる?
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A2
会社が指定する教育研修の内容が、業務に関連する内容でなければ、研修受講は強制できません。
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Q3
【男性に対するセクハラ】女性から男性に対するセクハラは成立する?
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A3
セクハラ行為は性別に関係なく成立します。なお、セクハラ行為があった場合に、会社は適切な措置を講じる義務があり、義務を怠った場合は不法行為または債務不履行責任に基づき損害賠償責任を負うことがあります。(指針(平成18年厚生労働省告示第615号)参照)
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Q4
【始末書の提出】始末書に反省の意を書かせることを強制できる?
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A4
始末書に謝罪や反省の意思を強制的に記載させることは、社員の人格や意思決定を無視し、不当に制限するものは無効、という判例があり、強制することはできません。
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Q5
【始末書未提出による懲戒処分】懲戒処分として始末書の提出を求めたが、未提出のため、懲戒処分としてよい?
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A5
始末書の提出に応じない社員に対する懲戒として、さらに重い懲戒処分とすることは可能です。
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Q6
【減給処分の金額】減給処分の額は、会社の判断で自由に決めることができる?
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A6
減給処分は、労働基準法によって下記の範囲内と規定されています。
1回の減給処分 平均賃金の1日分の半額まで
複数の減給処分 総額が1賃金支払期の給与総額の1/10まで
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Q7
【減給処分の賞与からの控除】減給処分を、賞与から行うことはできる?
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A7
賞与から減給処分することは可能です。1回の減給処分はQ「減給処分の額は、会社の判断で自由に決めることができる?」の通りですが、複数の減給処分があった場合、1賃金支払期の給与総額=1賃金支払期の賞与額と考えることができるため、賞与額が給与総額より多い場合は、減給処分の限度額が上がることが考えられるため、その分多く制裁を課すことが可能です。
減給処分のルールを、就業規則にしっかり明記しておくことも重要です。
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Q8
【損害賠償請求】会社の高価な備品を壊した場合、損害賠償として全額請求できる?
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A8
会社は、明らかに故意または重過失があった場合を除き、原則として社員に対して損害の全額を賠償請求することはできません。これは、会社は社員の労務提供により事業を営み、利益を上げていることから、原則として社員に対して実際の損害額をそのまま弁償させることは難しいとの考えからです。
退職・解雇
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Q1
【解雇予告手当】30日分の解雇予告手当を支払えばいつでも解雇できる?
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A1
解雇予告手当を支払ったとしても、解雇の理由が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効となります。解雇を行う場合は、就業規則に具体的な事例を列挙しなければなりません。解雇は、列挙された理由のみを解雇理由とすることができることにも注意が必要です。
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Q2
【仕事中にFX・株取引をする社員】仕事中に会社のインターネットでFX・株取引をしている社員を直ちに解雇できる?
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A2
すぐに解雇することは難しいでしょう。仕事中にFX・株取引をしていたことは労務を提供していないことになるので、労働契約不履行であり、解雇理由として合理性はあります。
実際に解雇とするためには、行為が発覚する都度、指導を行い、改善がなければ懲戒処分として始末書を取り、複数回行ってもなお改善の見込みがない場合に初めて解雇が認められます。
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Q3
【行方不明社員】2週間無断で欠勤した音信不通の社員を懲戒解雇できる?
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A3
解雇は、その意思が社員に伝わって初めて成立するため、音信不通の社員に対して無断欠勤をもって懲戒解雇とすることは原則としてできませんが、法的に会社の意思を伝える方法として裁判所に公示送達手続きを取ることで、解雇することが可能です。
賃金
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Q1
【割増賃金の算定基礎~皆勤手当】皆勤手当は、割増賃金の算定基礎として含めなければならない?
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A1
割増賃金の算定基礎から除外できる手当は、次の7つです。
①家族手当 ②通勤手当 ③別居手当 ④子女教育手当 ⑤住宅手当 ⑥臨時に支払われた手当 ⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
したがって、皆勤手当は割増賃金の算定基礎に含めなければなりません。
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Q2
【割増賃金の算定基礎~住宅手当】30,000円を社員に一律に支給している住宅手当は、割増賃金の算定基礎として含めなければならない?
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A2
住宅手当といえども、下記のような性質を有する住宅手当は、割増賃金の算定基礎から除くことはできません。
①社員全員に一律に支払われる手当
②扶養家族の有無で金額が異なる手当
③住宅の形態ごとに一律に定額で支給することになっている手当
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Q3
【割増賃金の算定基礎~インセンティブ・歩合】営業社員の成績に応じたインセンティブや歩合給は、割増賃金の算定基礎に含めなくてもよい?
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A3
割増賃金の算定基礎から除外できる手当は限定列挙のため、それ以外の手当であるインセンティブ・歩合給も算定基礎に含めます。計算方法は、下記の通りです。
(インセンティブ・歩合給/実労働時間)× 0.25 × 時間外労働時間
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Q4
【年俸制社員の残業】年俸制を適用した社員に対しては残業代を支給しなくてもよい?
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A4
年俸制であっても、残業した場合は手当の支払いを免れませんので、通常の時間外労働と同様に計算した残業手当を支給しなければなりません。残業代を含めた年俸とした場合は、残業代部分を明確にしておくこと、残業代部分が法定で計算した割増賃金額以上に支払われていることが必要があります。
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Q5
【パート社員に対する残業】パート社員に対して時給×労働時間数で計算した額を支給すれば何時間働いても割増賃金不要?
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A5
月給制だとしても時給制だとしても1日8時間以上、週40時間以上であれば、25%増しの割増賃金を支給しなければなりません。
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Q6
【許可なく行なった残業】会社の許可なく残業した場合に、割増賃金の支給をしなければならない?
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A6
会社に許可もなく残業した場合は、原則として割増賃金を支給する必要はありません。
但し、残業を明確に命じていなくても、例えば残業しなければ到底終わることのできない仕事を与えていたり、残業しないと嫌味を言われたり、不利益な扱いをされるなど、黙示の命令があると判断されれば、たとえ自主的に残業した場合でも、時間外労働にあたります。
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Q7
【会社が把握できない残業に対する手当】社員に帰宅ついでに顧客へ書類を届けるよう指示した場合、労働時間には該当せず、残業代も不要?
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A7
帰宅途中という業務上では会社が全く状況を把握できない中で行われていますが、会社が顧客へ書類届けるよう指示している点から、帰宅経路であっても、会社の指揮命令がおよんでいると考えられるため、残業代の支払いが必要です。
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Q8
管理職の深夜手当】時間外・休日手当の支給対象とならない部長職に対しては深夜手当も支払う必要がない?
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A8
労働基準法上の管理監督者に該当する管理職の場合、労働時間・休憩・休日に関する労働基準法の規定は適用されません。但し、深夜業に関する規定は適用除外となっていないため、労働時間が深夜帯に及んだ場合は、深夜手当の支給が必要です。
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Q9
【30分未満の残業時間】1日30分未満の残業時間を切り捨てているが、問題ないか?
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A9
残業時間は、たとえ1分であっても計算しなければなりません。したがって1日の残業時間に応じて残業代を支給する必要があります。ただし、給与計算処理の簡便化のため、1か月における時間外労働等の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げるような端数処理は認められています。
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Q10
【仕事が遅い社員の残業】仕事が遅い社員が所定時間に仕事が終わらず残業した場合は残業代を払わなくて良い?
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A10
残業代は、労働時間で計算しなければならないため、たとえ、仕事が遅く他の社員より残業をした場合であっても、残業代を支給しなければなりません。
残業代を支給しないためには、仕事が遅い社員に対して教育的指導をして能力を上げてもらうことや、残業にならないように業務量を調整するなどの対策が必要です。
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Q11
【固定残業代の相当性】残業代を毎月固定で支給する「固定残業代」は、法律上認められる?
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A11
固定残業代として認められるには、下記を満たしている必要があります。
①賃金(基本給や手当)に含まれる残業代を明確にし、それが何時間分の割増賃金にあたるのかを就業規則や雇用契約書に明示すること
②実際の残業が固定残業代に含まれる時間を超える場合は、その差額を支払うことを就業規則や雇用契約書に明示すること。
安全・衛生
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Q1
【健康診断費用】定期健康診断の診断費用は会社負担しなければならない?
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A1
厚生労働省の通達によれば、健康診断の費用については、法律で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然事業者が負担すべきものであるとされています。
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Q2
【健康診断の受診義務】健康診断の受診について、本人が受けたくない、という理由で受診させなくてもよい?
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A2
労働安全衛生法の健康管理義務規定には、企業は常時使用する全ての社員に対して、毎年1回医師による定期健康診断を実施しなければならないと規定しています。
仕事が原因の脳疾患・心疾患及び精神疾患が現在急増している中、管理不行き届きによって会社に責任を問われることにもなりかねません。忙しいからこそ、社員に徹底して受けさせる必要があります。
労災保険
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Q1
【臨時アルバイトのケガ】臨時で雇ったアルバイトが仕事中にケガをした場合は業務災害となる?
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A1
労災保険は、雇用形態(社員、アルバイト、パ-ト)や名称にかかわらず、労働の対価として賃金を受ける者すべてが対象となります。したがって、夏休みだけアルバイトをしているような者や学生なども仕事中に事故・ケガがあれば、労災保険の請求ができます。(通勤災害も同様)
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Q2
【通勤経路と異なる経路上での事故】会社に報告した通勤経路と異なる経路で通勤中にケガをした場合、通勤災害となる?
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A2
通勤として、異なる経路が、合理的な経路および方法であれば通勤災害と認められる可能性が高いです。合理的な経路および方法は、社会通念を著しく逸脱したものでなければ認められますが、当日の交通事情により迂回して取る経路、マイカー通勤者が貸切りの車庫を経由して通る経路など、通勤のためにやむを得ず取る経路も合理的な経路となります。
しかし、特段の合理的な理由もなく、著しい遠回りとなる経路を取る場合などは、合理的な経路とはなりません。
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Q3
【独身者の帰宅時の事故】独身者が退勤後、自宅近くのレストランで食事し、その後ケガをした場合は通勤災害になる?
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A3
通勤の途中で通勤に関係のない行為をした場合は、原則としてその後の経路は通勤となりませんが、下記のような行為であれば、その行為中を除き、元の通勤経路に戻った後は通勤となります。
①日用品の購入その他これに準ずる行為
②職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
③選挙権の行使その他これに準ずる行為
④病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
独身者の場合、食事後に通勤経路に戻った場合は、通勤災害として認められます。
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Q4
【妻帯者の帰宅時の事故】退勤後、妻が自宅にいるにも関わらず、帰宅途中で食事をし、その後事故にあった場合は通勤災害になる?
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A4
妻が自宅で夕食を作っているにもかかわらず、帰宅途中で食事を取った後の事故は認めらません。
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Q5
【帰宅時に飲酒後の事故】会社を退勤し、長時間の飲み会に参加して自宅へ帰る途中に事故にあった場合に通勤災害になる?
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A5
長時間飲酒後の帰路は通勤災害とはなりません。なお、労災となるかは飲酒後、通常の通勤経路に戻った場合で、下記のような事例により判断されます。
①認められた事例:帰宅中、喉の渇きを覚え、短時間、通勤経路上で缶ビール等を飲んだ
②認められなかった事例:帰宅途中、喫茶店やバーなどで長時間飲酒をした
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Q6
【自宅の庭先でのケガ】自宅の庭先でつまづいて転んでケガをした場合は通勤災害になる?
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A6
戸建の自宅と通勤の境界線はその住宅の「門戸」のため、戸建住宅の玄関ドアを出た後の事故であっても、そこが、門戸より中である場合(庭など)は、自宅敷地内の事故ということで、労災保険法上の通勤災害とは認められません。
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Q7
【マンションの共有部分でのケガ】マンションの共用部分である階段を踏み外してケガをした場合は通勤災害になる?
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A7
マンションと通勤の境界線はそのマンションの「玄関ドア」のため、マンションの玄関ドア前の共用部分である階段での災害は通勤災害となります。
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Q8
【会社に無断で車通勤したときの事故】会社に無断で車で通勤したときに、事故を起こした場合、通勤災害になる?
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A8
鉄道、バス等の公共機関、自動車、バイク、自転車、徒歩等、通常考えられる通勤手段は、社員が常日頃、用いているか否かにかかわらず一般的に合理的な方法と認められます。したがって、たまたま自動車で通勤したとしても、そのことだけをもって、合理的な方法でないとはみなされません。
雇用保険
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Q1
【自己都合退職者の離職理由変更】自己都合で退職する社員の希望で、失業給付がすぐにもらえるように離職理由を会社都合としてもよい?
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A1
自己都合退職の場合、雇用保険の失業給付は、離職後、3ヶ月間の支給制限期間があり、すぐに失業給付が受給できません。一方、会社都合による退職の場合、支給制限期間が無く、その分早く失業給付を受給することができます。
こうした理由から、離職者本人が、会社都合扱いで離職票を作成するよう申し出がある場合があります。本来であれば自己都合である離職理由を会社都合にすることは、不正手続きとなり、受給者は、支給された失業給付の返還を含め、最大3倍返しをしなければなりません。
また、会社にとっても、不正の届出をしたことになりますので、6ヶ月以下の懲役又は30万円未満の罰金に処せられる可能性があるだけでなく、離職理由を会社都合にしたことで、受給中またはこれから受給する予定の助成金の支給が受けられなくなる場合があります。
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Q2
【有期雇用者の雇い止め】3年で満了の社員が更新を希望したが、会社が更新しない時の雇用保険上の離職理由は会社都合となる?
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A2
雇用契約の更新により、3年以上雇用されている場合と、3年未満雇用されている場合で取扱いが異なります。
①3年以上の雇用:
会社都合の退職として特定受給資格者となり、支給制限期間無しに失業給付を受給
②3年未満の雇用:
正当な理由のある自己都合退職として、特定理由離職者となり、支給制限期間無しに失業給付を受給(平成24年3月31日までの離職の場合、特定受給資格者と同様の給付日数)
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Q3
【使用人兼務役員の雇用保険】役員でありながら一般の社員と同様に勤務している使用人兼務役員は、雇用保険に加入できる?
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A3
登記簿上役員であっても業務執行権を有さず、実際は社員と同様に仕事をし、就業規則や給与規程の適用、タイムカードなど労務管理上も同様に取り扱いを受けている場合は、雇用保険の適用があります。ハローワークに「兼務役員雇用実態証明書」を提出し、確認を受けます。その際、出勤簿や賃金台帳、登記簿謄本、役員となることを決定したときの議事録、就業規則などを添付します。(詳細は管轄はハローワークへ確認)
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Q4
【雇用保険の加入】2か月間の期間雇用なので雇用保険に加入させなくてもよい?
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A4
雇用保険は、次の条件を満たせば、期間雇用であっても加入義務があります。
①1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
②31日以上雇用される見込みがあること。
社会保険
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Q1
【社会保険の加入】パートタイマーが希望しない場合、社会保険に加入させなくてもよい?
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A1
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入は、本人で任意に選択できるものではないため、要件に該当した場合、会社は必ず加入手続きをとらねばなりません。
本人が加入したくない、という理由で会社が社会保険に加入させなかった場合は、加入の届出を怠った会社に責任が及びますので、注意が必要です。
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Q2
【試用期間中の社会保険】入社して最初は試用期間なので社会保険に加入させなくてもよい?
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A2
試用期間中といえども、社会保険の加入要件に該当した場合は、加入させなければなりません。どうしても加入させたくなければ、入社当初は、加入義務の無い2ヶ月間の期間雇用契約として様子を見ます。2ヶ月経過後、問題がなければ、改めて期間の定めのない雇用契約を申込みます。
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Q3
【未加入者の社会保険加入】社会保険の加入要件を満たした社員を、加入させていなかった場合、最大2年前まで遡及加入となる?
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A3
社会保険の加入要件を満たしている社員を加入させていなかったことが発覚した場合、最大2年前まで遡及加入となります。また届け出義務を怠った会社には、罰則が適用されることがあるため、注意が必要です。
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Q4
【傷病手当金の請求】自分の不摂生で風邪を引き、1週間寝込んだ場合、傷病手当金の請求ができる?
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A4
傷病手当金は、下記要件に該当すれば、自己の不摂生や不注意による病気やケガの場合も支給されます。
①療養のためであること(医師の指示による自宅療養を含む)
②労務に服することができないこと(医師の証明による)
③連続4日間以上欠勤していること(公休日や有給取得日を含む)
したがって、一週間の欠勤であれば、4日間分の傷病手当金を申請できますが、この4日間に、会社から給与を貰っている場合(有給休暇を含む)は支給されません。
なお、最大1年6ヶ月支給されます。
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Q5
【退職後の傷病手当金】社員が在職中に私傷病で欠勤し、仕事ができないまま退職した場合、傷病手当金をもらうことができる?
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A5
下記の要件に該当すれば、退職後も引き続き傷病手当金が支給されます。(最大1年6ヶ月)
①退職日までに、1年以上被保険者であること
②退職日までに傷病手当金の支給を受けていたこと(又は受けられる状態であったこと)
受けられる状態であったこととは、退職日において、Q「自分の不摂生で風邪を引き、1週間寝込んだ場合、傷病手当金の請求ができる?」の要件に該当していることを指します。
労働紛争
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Q1
【未払い残業代】残業代の未払いで裁判になった場合、過去2年分以上の金額を請求されることがある。
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A1
賃金債権の消滅時効は2年ですので、残業代としての支払いは、過去2年分が上限となります。
しかし、労働基準法第114条に「裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第6項の規定による賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払い金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。」とあります。
つまり、付加金とは言うなれば「倍額払い」ということです。
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Q2
【労働組合への加入】社員が望めば一人でも労働組合に加入し、会社と団体交渉することができる。
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A2
労働者には、憲法・労働組合法で、労働組合に加入する権利が保証されています。
一人でも加入できる労働組合(いわゆるユニオン)が、数多く組織されており、組合員を募集しています。社員がこうしたユニオンの組合員になってしまい、団体交渉を要求されたときは、それに応じる義務、つまり着席義務が発生します。
会社が正当な理由なくこれを拒否すると不当労働行為として、労働組合や労働者は労働委員会への申し立てや裁判への訴訟の提起されることになります。