クラウドストレージはインターネット環境さえあれば社内外のどこにいてもサーバーにアクセスできる便利なシステム。リモートワークなどが普及する現在のビジネスシーンにおいて必須アイテムとなっています。
しかし、最新情報をクラウドにアップロードするのが人間の場合、アップロード漏れが発生して業務に支障が出ることも少なくありません。
今回は、クラウドストレージへのファイルの自動アップロードとダウンロードを自動化した事例について解説します。
目次
医療現場での単純作業には課題が山積
今回は定期検診を主に行うクリニックを営んでいるお客様です。TOMAのセミナーに参加されてから業務改善コンサルをお申し込みいただきました。業務フロー図を作成し、具体的な改善策を模索する中で、業務の一部を自動化した方が良いのではという事でRPAの導入が決まりました。
検診の現場では、患者様のデータやレントゲン、エコー、心電図といったデジタル画像が毎日発生します。お客様のクリニックでは日によって異なりますが、1日に10社ほどの企業が健診を受けられるそうです。そのデータを医師に確認・診断してもらうため、規定のフォルダへアップロードするのが毎日の日課でした。
手作業で行なっていた頃のアップロード手順
まず、事務社員が医療用管理システムから画像データと受診データを出力し、USBへ保存します。プライバシーの観点からネットには未接続で行う必要がありました。次に、USBからファイルサーバーのデータ格納フォルダへ一時保存した後、クラウドストレージにファイルをアップロードします。画像データの容量が大きい場合、データの移行に時間がかかることもしばしばあり、その間担当者はじっと待っているのが常でした。
データを確認する担当の医師は複数在籍しているため、アップロード先は曜日によって変わるという状況でした。その他にも、ヒアリングをすると様々な課題が上がりました。
課題1.アップロードをする担当者が決まっていない
事務社員は複数いますが、同じ曜日に同じ社員が必ずいるという現場ではなかったそうで、
データをアップロードする担当者が決まっていませんでした。
その時々で『手の空いた人がする』という曖昧なルールでした。
課題2.アップロードを忘れる、重複する
手の空いた人がするというルールだったため、事務社員が忙しい時、休暇をとっている時などはアップロードを忘れることも度々あったそうです。担当者が決まっていないため、「他の誰かがやっているだろう」という油断も発生しやすい状況でした。反対に、同じファイルを重複してアップロードするというロスも頻発していたそうです。
課題3.アップロード先を間違える
画像を診察する担当医師のフォルダを間違えてアップするというヒューマンエラーも発生していました。
以上のように、手作業で行なっていた際には複数の課題がありました。アップロードを間違えると、医師のチェックが遅れ診断結果の納品も遅れてしまいます。また、ミスからコミュニケーションの問題が発生するリスクがありました。
RPAによってヒューマンエラーが解消
これらの課題をクリアするためにRPAの導入を実施。手順はUSBからクラウドストレージにファイルをアップロードするまではこれまで同様、手作業になります。以後はRPAのボタンを押せば、あとは全て自動化で担当医師のフォルダにデータが格納されます。
いつ、誰のフォルダに何のデータが格納されたかはエクセルファイルに記録されるようになっており、事務の責任者が確認することで、アップロードの漏れや重複を防ぎます。
自動化によってアップロードの重複や格納ミスがなくなっただけでなく、アップロードが完了するまでの待機時間も無くなりました。ヒューマンエラーがなくなったことで、社内のコミュニケーションも以前より良好になりました。お客様の現状をヒアリングするところからRPAの構築まで、かかった期間は約2ヶ月です。
毎日決まった情報を、時間をかけてアップロードする場合、RPAの自動化は大変効果的です。導入をする際は、人間が作業した時の工数と導入にかかる費用を鑑みて進めるのが良いでしょう。
医師がチェックしたデータも自動でダウンロード
このお客様の会社ではもう一つ、前述のアップロードした画像を医師がチェックした後、ダウンロードする自動化も導入しました。
導入前の作業は以下になります。
【1】医師がチェックしたCSVファイルを指定のフォルダにアップロードします。
【2】CSVファイルを事務社員が所定のフォルダにダウンロードします。
【3】バッチファイルを実行して、ダウンロードしたファイルを所定のフォルダに移動、基幹システムへ取込む形式にファイルを変換します。
【4】変換されたファイルを基幹システムに取り込みます。
【5】取り込んだデータが正しいかどうかを事務社員がチェックします。
この一連の作業にかかる時間は5分程度です。1日に約10社のファイルが存在するので、50分程度かかります。月に換算すると約17時間です。
この作業もアップロード同様に担当者が決まっていないため、ダウンロード漏れが頻発したり、重複してダウンロードするというロスが発生していました。
RPA自動化で年間200時間の工数を削減
RPAの導入によって上記の【2】〜【4】の作業が自動化しました。RPAが実行した内容はエクセルにまとめられるため、事務社員は情報がしっかりと実行されたかを確認するだけで良くなり、年間200時間の工数削減につながりました。
こちらの自動化にかかった期間も2ヶ月程度です。データのアップロード、ダウンロードをしたかどうかの確認作業や、作業漏れによる遅延、社員同士の関係性の改善によって業務ストレスが解消されました。
RPAの費用は『人件費』として考えることが大切
お客様はこのほかにも自動化したいことがたくさんあったようですが、費用面との兼ね合いで今回の2シナリオを自動化しました。現在、TOMAとは保守契約という形でお付き合いをしております。保守契約とは、RPAのシナリオを改善・修繕をするサポート契約です。今回の場合、新しい医師が加わるとシステムを修正する必要があるからです。
社内に情報システム部などITに特化した部署があれば、自社でRPAを導入することは可能ですが、コンサルタントとして現場の最前線にいると、それができる企業はまだごく一部です。
しかし、今後業務改善を考える際、RPAは必要不可欠のツールとなるのは確実です。近年TOMAにもRPAに対する問い合わせ件数は増加傾向にあります。しかし最もネックとなるのが導入費用のようです。
今回の2つの業務シナリオを自動化した場合、費用は1シナリオ50万円程度です。Microsoft Power Automate など安価なサービスも登場してきましたが、結局は使う側の人間に自動化を構築するだけの技術と経験がなければ使いこなせません。
過去のブログでもRPAは事務用品などのコストではなく、人材の替わりと捉えることが大切だとお伝えしました。人間はもちろん様々な業務を行えますが、人によって能力に大きな差がありますし、仕事を覚えても退職リスクやハラスメントリスクを孕んでいます。
一方でRPAは単純作業であれば、ほぼ100%正確に行います。退職、ハラスメントとも無縁というのもメリットです。
今回紹介したRPA導入支援に関するサービスの詳細は以下になります。
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