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DX推進を成功に導くビジョンとは?成功事例も紹介

記事作成日2025/09/01

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DXを推進していこうと試行錯誤するが、なかなかうまくいかない。当初の計画から方向性が徐々に変わってしまっている気がする。その場合、DXを推進するための『ビジョン』を明確にすることが大切です。

確固たるビジョンがあれば、「なぜDXを推進するのか?」という原点に立ち返ることができるからです。今回はDXのビジョンとは何かという基本から、実際にビジョンを策定後にDXを成功させた事例もご紹介します。

DXとは何か?基本をおさらい

DXとは、デジタルトランスフォーメーション=Digital Transformationの略で、デジタル技術や先進技術を活用し、企業が成長するあるいは他社に負けない競争力を備えることです。

単純にデジタル技術を現場に採用するだけでなく、技術を用いて「新しいビジネスモデルを創出」したり、「時代の流れに合わせてビジネスを変化させる企業になること」を指します。

デジタル技術については次世代セキュリティ、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、IoT、コグニティブ(認知)AI、ロボティクス、3Dプリンティングなどがあります。

DXについてより詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。

ビジョンとは何か?基本をおさらい

ビジョンとは、自社が数年先の未来において、どんな企業でありたいのか、何を成し遂げたいのかを明文化したものです。会社の進むべき方向性、将来像と言い換えても良いでしょう。

ビジョンを定めることによって何を頑張れば良いかが明確になります。また、同じゴールを目指す仲間意識が芽生え、士気の向上、一体感の醸成につながります。ビジョンについてより詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

DX推進におけるビジョンとは

DX推進ビジョンとは、「DXによって○年にどんな企業を目指すのか」「デジタルを浸透させた自社の業務で社会にどう貢献していくか」を明文化したものです。

例えば、DXのビジョンを「デジタルの力で空腹で困る子どもをゼロに」とした場合、推進する途中で今行っていることは「本当に子どもたちのためになるのか」と、原点に立ち戻ることができます。

DXを推進する際に、まずこのビジョンを策定することで「やるべきこと」「目指すべきゴール」が明確になり、導入すべきシステムやロードマップを描けるようになります。

DX推進にビジョンが必須な理由

なぜDXにビジョンが必要なのか、その理由は大きく2つ挙げられます。

進むべき方向を明確にするため

DX推進のビジョンがないと、ただのシステム導入で終わってしまう可能性があります。業務のデジタル化はデジタイゼーションであってデジタルトランスフォーメーションではありません。失敗に陥る事例で多いのが、デジタル化に執着してしまい何のためにDXに取り組んでいるのかを見失ってしまうことです。

社内での意思統一を図るため

DX推進のビジョンを作成することで、関わる社員全員の意識を統一することができます。目指す理想像が明確になるため、DXが単発で終わったり、プロジェクトが頓挫するリスクを下げることができます。また、DXはトップダウンではなく、社員同士でプロジェクトを組み、ボトムアップ方式で推進することも大切です。

DXビジョンと経営ビジョンの違い

経営ビジョンは会社がどんな姿を目指すのかに対し、DXビジョンはDXを実現するためにどのような姿を目指すのかを表すものです。

また、DXビジョンは経営に関する視点だけでなく、ITに関する視点が必要になるのも大きな違いです。経営ビジョンを達成するための手段の一つ、経営ビジョンを補強するものがDXビジョンと考えても良いでしょう。

近年では、DXの重要性が増しているため、企業や業種によってはDXビジョンと経営ビジョンは同じと考えるケースもあります。

DX推進ビジョンの作り方

では、どのようにしてDX推進のビジョンを作成すれば良いのでしょうか。

【手順1】自社の強みを明確にする

まずは自社の基本理念や経営ビジョンをもとに、自社の存在目的、価値基準から、自社の強みを明確にしましょう。市場において、自社がどんな点で優れているかを見える化し、競争力の源泉を洗い出します。

「自社はここが他社より劣っているから補強したい」ではなく、「強みをさらに伸ばして絶対負けない競争力を獲得する」
というマインドでビジョンを策定した方がうまくいくケースが多いです。

なぜなら、弱みを克服するためには、これまで取り組んでいなかった新しいアクションが必要になることが多く、社員の負担が大きくなるからです。

例えば、幼少期から野球一筋だったプロ野球選手ならば、引退後も監督や解説者など野球に関する仕事を続ける(長所を伸ばす)方が良いでしょう。

大谷選手は160キロの球を投げる剛腕投手でありながら、ホームラン王を狙えるスラッガーでもある。一昔前には誰も想像しなかったような他にはないレアリティを身につけたことで唯一無二の人気を獲得しました。

ビジネスにおいても長所を伸ばすだけでなく、他を寄せ付けない競争力の獲得、差別化に繋がるのであれば、新たな分野に挑戦してみる価値があります。

DXは自社の業務や事業に変革を起こし、新たなビジネスを生むきっかけとなるもの。DX推進のビジョンは今後の自社の在り方に大きな影響を及ぼすものになるはずです。ビジョンを掲げる際には一部のプロジェクトメンバーだけでなく、全社員にその意義とDXを強く推進することで会社が変わる、という意志を共有することが大切です。

【手順2】将来の技術動向を予測する

DX推進のビジョンを策定する際には、「現在」の市場を注視するだけでは足りません。デジタル技術は日進月歩で進化をします。10年後、20年後の社会でどんなテクノロジーが発展しているか、それにより顧客ニーズにどんな変化が起きるかを予測することも大切です。

例えば、今はネットで本や日用品を購入する人が増えています。フリマサイトなども活況です。それにより、運送業界では人手不足が加速し、「置き配」を基本にしようと国交省が検討するとも伝えられています。

もちろん、未来が予想通りになる確証はありませんが、未来を考えて動くことでしか得られないチャンスがあります。新しい技術が自社の競争力の強化にどのように寄与するか、新しい市場が生まれる可能性を考慮することが大切です。

一方で、未来を想定してビジョンを作ることはリスクも孕んでいます。サブスクが台頭したことで、CDを購入する消費者が激減したように、新しい技術の誕生で現在自社の強みとなっている製品やサービスが代替されてしまうこともあります。将来の技術動向を予測する際には、複数の世界線を想定してビジョンを策定するのも一つの手段です。

DX推進ビジョンの成功事例

実際にDXを推進するためにビジョンを作成した企業の成功事例をご紹介します。

【成功事例1】株式会社ブリヂストン

「DX銘柄2025」によると、タイヤ、ゴルフ用品、自転車、建設資材など、幅広い事業を展開する株式会社ブリヂストンでは「より大きなデータで、より早く、より容易に、より正確に」をビジョンに掲げました。

市場・顧客データをはじめ、経験則にもとづく実験・実証で得られた技術、開発データといった長年現場で培われたデータと先進の「デジタル」を融合し技術革新などイノベーションを加速させました。

デジタル技術でコア事業がさらに発展、新規事業も

コア事業であるプレミアムタイヤ事業では独自アルゴリズムに基づくシミュレーションやAIによるアルゴリズムを開発。タイヤの性能を一段と進化させ、新たな価値を備えた商品を開発しました。

また、探索事業では、独自のシミュレーション技術や機械学習によりパンクの不安がなく、空気充填をも不要という、次世代タイヤ「AirFree」の開発に着手。グリーンスローモビリティの実現に向けた次世代のタイヤの開発などを推進しています。「AirFree」は耐久性10年、10万kmを設定し、2026年の社会実装予定で開発が進められているそうです。

【成功事例2】株式会社ふくおかフィナンシャルグループ

同じく「DX銘柄2025」では、金融機関である「株式会社ふくおかフィナンシャルグループ」の事例も紹介されています。この企業のDX推進ビジョンは「お客さまを中心に据えた自己変革」です。将来にわたって選ばれ続けるためには、お客さまを深く理解することが何よりも大切だと考え、さまざまなサービスを展開しています。

個人、事業者と利用者に合わせたデジタルサービスを提供

個人向けには残高照会や振込、金融商品へのアクセスといった機能を備えたバンキングアプリ。事業者向けのデジタルチャネル「BIZSHIP」は経営診断やデジタル通帳、オンライン手続きなどの機能を実装し利便性を向上しています。また、次世代型の銀行サービス「みんなの銀行」といった新たなビジネスも創出しています。

顧客増に加え、年間3,500時間の業務削減

個人向け、法人向けともにデジタルの接点を強化することで、個人バンキングアプリの口座登録ユーザーが2025年3月時点で約126万人、BIZSHIPの利用ユーザーが約33,000先に達するなど、順調に利用者数を増やしています。また、稟議意見書AI補助サポートシステムの導入によって、年間3,500時間の業務削減を達成しています。

参考:経済産業省「DX銘柄2025

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