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損をしないための不動産相続・売却のポイント 不動産時価の変動要因から逆線引きまで解説!

記事作成日2022/07/22 最終更新日2022/07/22

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相続した不動産の遺産分割や売却で損をしないためには、不動産の時価を正しく把握しておくことがポイントとなります。相続財産の分割をするときに、相続税評価額や地価公示価格などを参考にする場合も多いですが、これらの基準額は時価と大きくかけ離れている場合があるからです。

不動産は、個々の条件や売却タイミング・売り方などによって実勢価格(=時価)が大きく変動します。そのため、現在の時価をきちんと確認せず相続税評価額や公示価格だけに基づいて不動産の代償分割や売却をすると、不当に安い・または高い価格になり、損をする羽目になってしまうでしょう。

そこで今回は、不動産の遺産分割や売却で損をしないために知っておくべき不動産の時価に関するポイントを、不動産コンサルティング業務に携わっているプロの見地から解説します。

【この記事で解説するポイント】
・注意すべき不動産の個別事情とは
・不動産の時価とは
・不動産時価の主な変動要因
・不動産時価の調べ方
・不動産時価に影響する逆線引きとは
・あわせて気を付けたい契約不適合責任とは

上記の内容を確認しておくことで、不動産の時価について基本的な知識を身に付け、相続・売却で損をしないための立ち回りがわかるようになるでしょう。

不動産の相続・売却は、基本的なことを知らないだけで価格が大きく変動してしまうケースがあります。知らず知らずのうちに大損しないためにも、この機会に、損をしないためのコツをつかんでおきましょう。

不動産の遺産分割・売却で損しないため把握すべき個別事情とは

冒頭でもお伝えしたとおり、一言で不動産と言ってもさまざまな個別事情があります。これから相続・売却しようとする不動産がどのような状態にあるのかをきちんと把握しておくことが、損をしないための第一歩と言えるでしょう。不動産の遺産分割・売却で損をしないために、あらかじめ確認しておくべき個別事情の例としては、次のようなものがあります。

・不動産の時価
・これからも土地に建物が建築可能かどうか(逆線引き対象地になっていないか)
・建物登記の有無や名義人など登記の状態が正確であるか
・土地の境界は境界標などで明確になっているか
・以前に建てた建物が現在の法律などに適合しているか

例えば、時価を知らないまま相続不動産を代償分割した後で、実際の売買価格が代償金算定の参考にした価格より圧倒的に低かったら、不動産を相続した人は大きく損をしてしまいます。また、登記が最新の状態でない場合や隣地との境界が不明確な場合は、費用をかけて登記や境界の確定をしなければ売却手続きすらできないでしょう。

このように不動産の個々の状態を明らかにして必要な対応をしておかないと、遺産分割・売却で不利になったり、売却や土地の有効活用自体が難しくなったりするリスクがあるので、注意が必要です。今回は、これらの個別事情の中でも影響が大きい「不動産の時価」と、あまり知られていない「逆線引き」について、以下で説明していきます。

【損しないポイント①】不動産の時価について知ろう

不動産には、以下のとおり複数の評価額がありますが、相続した不動産を代償分割する際などにもっとも重要なのが「時価」です。
ここでは、時価についての概要や調べ方など、不動産を相続・売却するなら知っておきたい基本のポイントを解説します。

不動産時価とは

不動産時価とは、現在の市場で売買する際の価格です。実勢価格とほぼ同じと考えてよいでしょう。なお、実勢価格の目安については、国土交通省の「土地総合情報システム」で確認することができます。

ただし注意したいのが、売買時の価格なので、売買するタイミングや需要・売却先によって時価は大きく変動する場合があるという点です。個々の不動産の状態によっても変わるので、実際に売買しようとすると、目安どおりにはいかないケースが多いことを覚えておきましょう。不動産の時価額をできるだけ正確に把握し、相続時の遺産分割の適切な代償金額などを検討するためには、次項でご紹介する不動産時価の変動要因を把握したうえで、具体的に時価を見積もってみることが大切です。

不動産時価の主な変動要因

不動産時価の代表的な変動要因には、次のようなものがあります。

このように、さまざまな要因で時価は変動します。相続財産の取得時や売却するタイミングにおける社会情勢や対象不動産の近隣の状況などを、時価算定時の参考として活用するとよいでしょう。

不動産時価の調べ方

不動産時価を調べる方法の例として、次の3つがあります。

・一般的な時価額として公示地価を確認する
・不動産鑑定評価を鑑定士に依頼する
・取引事例を参考にする

まずは、毎年、国が地点ごとに発表している公示地価について調べる方法があります。公示地価は、一般的な土地売買の際の指標や公共事業で不動産を取得する際の基準となる価格です。公示地価は、国土交通省の「土地総合情報システム」で確認してください。また、相続税路線価は公示地価のおよそ80%程度で指定されるため、路線価格を0.8で割り戻すことで、簡易的な公示地価額を想定することもできます。

公示地価と鑑定事例を参照して不動産価格を算定すると、より正確な時価を知ることができるでしょう。時価を確認したい土地にもっとも近い公示価格に、複数の鑑定事例を組み合わせて検討する算定方法です。TOMAコンサルタンツグループでも、査定の裏付けとして採用していますので、詳しくお知りになりたい方は弊社までお問合せください。

なお、売却価格をもっとも高くしたい場合は、複数の不動産業者による競争売却が効果的です。TOMAが取り扱った事例では、相続税評価額のおよそ7倍で売却できたケースもあります。

【損しないポイント②】逆線引きに気を付けよう

不動産の評価額や時価を想定するうえで注意したいのが、都市計画の逆線引きです。逆線引きの対象地になってしまうと、新しい建物を建てることができないなどの制約が課され、時価が大幅に下がってしまう場合があります。ここでは、「逆線引きとは、どういうものなのか」「指定されると、具体的にはどうなるのか」「近年では、どのような理由で指定がなされているのか」などを確認しておきましょう。

逆線引きとは

逆線引きとは、いったん都市計画上市街化を推進すべきとされる「市街化区域」に指定されたにもかかわらず、後から市街化を抑制すべきとする「市街化調整区域」に指定されることです。市街地の環境を良好に保つためや、計画的な市街地整備を誘導するため、また近年ではコンパクトシティーを形成する目的などで指定を検討されたりしています。市街化調整区域に指定されても、当然、土地の見た目などは何も変わりません。遠隔地の不動産をご所有の場合、いつの間にか逆線引きの対象になっていたということもあり得るので、注意が必要です。

なお、売却価格をもっとも高くしたい場合は、複数の不動産業者による競争売却が効果的です。TOMAが取り扱った事例では、相続税評価額のおよそ7倍で売却できたケースもあります。逆線引きの対象地(旧暫定逆線引き区域)の主な特徴は、次のとおりです。

・既に指定された用途地域が廃止されている場合は既存建物の建替えなどに限定される(建物を建てる場合、都道府県知事や特定行政庁などの許可が必要になる)
・用途地域廃止の場合は建築や土地の利用方法に制限が生じるため、土地の資産価値が極端に下がる
・用途地域廃止の場合は固定資産税の評価額が下がり都市計画税も課税されなくなるので、税負担が軽減される
・区画整理事業などが決定された場合は、減歩(土地面積の減少)や負担金などが生じます。

このように逆線引きの対象地となり、指定用途が廃止されると、税負担が減って住む分にはメリットが大きくなりますが、建築や活用の自由度が下がり、資産価値も下がるため、売却にはデメリットが大きくなります。いつか売却する予定の使っていない不動産がある場合、逆線引きの対象地になる前のタイミングで売却しておくことが、損しないために重要です。尚、指定される前には行政機関から事前に周知がなされますので、遠隔地であるからと言って放置しておかないよう注意しましょう。

逆線引きの最近の動向

近年、逆線引きの制度が注目されていることから、指定が増加する可能性があることに留意しておく必要があるでしょう。注目されるのは、逆線引きの指定が、次のような用途で使えるからです。

・多発する豪雨災害や土砂崩れなどの被害を抑えるために、災害発生リスクの高い土地の市街化を抑制する
・公共サービスや医療・福祉関連のコストを抑えるために、公共交通機関に近いエリアへの人口集中を推進する
・鉄道やバスといった公共交通機関の利用や徒歩圏内での生活を推進し、脱炭素社会の実現をめざす

実際に北九州市では、災害の危険性を抑えコンパクトシティー化する目的で、市内の総面積のおよそ2%にあたる約1157ヘクタール(対象人口:約3万5200人、対象建物数:約1万8000棟)を、逆線引きの対象地として計画決定を目指しているといった事例があります。今後は、災害対策などの理由で大規模な逆線引きの指定が行われる可能性もあるということを念頭に、不動産の相続・売却を進める必要があるでしょう。

【損しないポイント③】契約不適合責任に注意しよう

いざ不動産を処分するという段階になって注意すべきことが、契約不適合責任です。せっかく不動産の評価をきちんと把握して良い条件で売却できそうな場合でも、契約不適合責任の範囲を明確にしておかないと、余計なコストが発生したり売却自体が難しくなったりしてしまいます。契約不適合責任の概要や、損しないためにはどうすればよいのかを、確認してみてください。

契約不適合責任とは

契約不適合責任とは、売主が、種類・品質又は数量に関して、契約の内容に適合しない目的物を引き渡した場合の売主の責任のことです。責任を問われると、代金減額請求・追完請求・損害賠償・催告解除・無催告解除の対象になります。不動産売買では、売却時に売買契約書などに書いていなかった問題点(例えば雨漏りなど)が後から見つかった場合に、修理代や売買代金の減額などを請求されるケースが想定されるでしょう。

他にも次のような場合に、契約不適合責任を問われる危険性があります。

・不動産の建物状況や隣地境界が不明な場合
・権利証・建築確認申請書・検査済み証・図面等が不明な場合
・建物の建築部材にアスベストなどの有害物質が含まれている場合など、解体除却費用の負担増が生じる場合
・地中埋設物や土壌汚染などが認められ、撤去や改修に費用が生じる場合

契約不適合責任を問われるリスクを減らすには、売買契約の段階できちんと不動産の状況を説明しておくことと、責任の範囲を明確にしておくことが大切です。責任の範囲については、次項でもう少し詳しく説明していきます。

契約不適合責任で損しないためには

契約不適合責任で損をしないためには、責任の範囲を明確にし、できるだけ免責する特約を結んでおくことがポイントになります。任意規定にあたる契約不適合責任は、売主が個人の場合、契約の当事者が合意していれば免責することもできるからです。

ただし、免責する場合は次の点に留意しましょう。

・「全部免責」のような定め方はできないので、個別に免責内容を明記する
・個人消費者を相手に「契約不適合責任免責」を条件とすると、売買代金を減額されたり、買ってもらえなくなったりするリスクがある

売主側は、契約不適合責任を免責することでリスクを減らせます。一方、買主側は、免責された分だけ自身のリスクが上がるので、売却をスムーズに進めにくくなります。このような場合、「契約不適合責任免責」でも可能な宅建業者への売却(とりわけ競争売却)を活用することで、希望通りの処分を実現しやすくなるでしょう。

【不動産の遺産分割・売却で損しないために】プロに任せて最高価格で売ろう

遺産分割の際に時価を把握していないと、大きく損をしてしまう場合があります。時価は自分でも算定できますが、より正確な金額を把握して有利に分割を進めるなら、プロに相談するのが一番です。不動産の相続・売却に関する費用対効果を最大化するなら、TOMAの不動産コンサルティングサービスをぜひご活用ください。TOMAの不動産コンサルティングは、各不動産の個別事情を丁寧に確認し、第三者目線での不動産価格査定や売却活動状況の管理を行うので、情報の精度が高く売却時も最高値を目指せるのが強みです。

不動産ごとに状態や最適な売り方が違うからこそ、オーダーメイド感覚で不動産売却活動の総合サポートが受けられるTOMAの不動産コンサルティングで、利益を最大化してください。まずは、時価の確認だけでも、お気軽にお問い合わせください。