◆建物構造による借入金額の制限
賃貸マンションなどの不動産収益物件を売買する際に、このところ投資家にとって一番の障壁となっているのが、建物の建築後の経過年数です。一般に金融機関の貸し出し基準としては、法定耐用年数の残存期間とローン返済年数の限度を同等に考えますので、耐用年数の残存期間がローンの償還期限となるケースが多いようです。そこで問題となるのが中古の賃貸マンションなどを購入する場合です。借入れ申込者の資産背景にもよりますが、基本として、月々のご返済額と家賃収入とが逆転しないことを前提に融資限度額を定めるため、この残存期間によっては不動産価格に占めるローン割合が大きく制限されることになります。また、家賃収入自体も全額(全室が満室の状態)を収入とは想定しませんので、貸し出し基準はさらに厳しくなります。
◆自己資金が70%以上必要な場合も
例えば、築年数が30年の鉄骨造の賃貸マンションの場合は、建物の減価償却期間に占める残存年数がわずか4年となってしまいます。そのため、借入れ返済額に見合う家賃収益から逆算すると、物件価格の1/3ほどしかローン調達ができない場合があります。建築後30年で売買価格が3,000万円の鉄骨造アパートが売りに出ていたとします。表面利回りが満室想定で年間10%の場合であれば、家賃収入は年間300万円になります。空室リスクを15%、管理経費を5%とすると、このアパートの想定年間家賃収入は240万円とされます。これに対して、借入れ金利を0.8%で(残存期間の)4年完済とし、年間返済額限度を想定年間家賃収入である約240万円とした場合、借入れ可能資金は約950万円になります。3,000万円のアパートと仮に購入諸費用200万円の3,200万円を購入ご予算とした場合は、30%未満しかローンが組めませんので2,250万円(約70%)の現金資金が必要です。この現実が、購入可能者を絞り込む結果となり、価格下落の要因になったりします。
◆後から気付く構造部の重要性
新築の賃貸物件を計画されている方は、その主要構造部に注意してください。SRC造やRC造よりも減価償却年数が短い鉄骨造の方が売れにくい場合があるのです。実際に建物に傷みが生じ、構造部が劣化する事象とは無関係に、建物価値は主要構造部で判断される場合があります。「うちは売却処分することはないから関係ない」と考えている方も、例えば相続税の納税資金として、または遺産分割の対象として、共有資産の分割手段として、不動産売却を迫られる事態も想定しておかなければなりません。現実に、RC造に近い建設コストの鉄骨造もあったりします。同じコストの場合は、売却想定としての資産価値比較も大切な要素です。