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社長のブログ ~100年続く企業を創る~

組織に必要なのは、正しさか信頼か

記事作成日2026/04/10

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先月、毎年恒例の幹部研修を実施しました。忙しい幹部の時間を押さえるのは大変なのですが、私を含む幹部全員が同じ時間を共有し一緒に学ぶことは、とても大切なことです。

今回は外部講師を招き、部下のキャリア形成を支援するためのコミュニケーションのあり方を学んだのですが、研修をきっかけに、改めて大切なことに気づけたように思います。

理想的なコミュニケーション

講師の話は先ず、組織心理学の父とされるエドガー・H・シャインが提唱するキャリア・アンカーの説明から始まりました。キャリア・アンカーは、「これだけは譲れない」という核となる価値観のことです。

部下が自分の強みを活かし、やりがいを持てる仕事ができるようになるためには、自分の価値観を把握した上で主体的にキャリアを考えてもらうことが必要です。そしてキャリアには、➀昇格(マネジメント)、➁ゼネラリスト(仕事の幅・職種を広げる)、➂スペシャリスト(仕事を深く極める)という3つの方向性があります。

従って上司は、部下の価値観や得意分野を把握した上で、今後どのような方向に歩んで欲しいのか、自分の考えを伝えられるようにしておかなければなりません。

次はフィードバックです。部下の行動に対する評価、助言などを、対話を通じて伝えることは上司の重要な役割です。

そのためには、部下の良い行動や成果を褒めたり感謝する「ポジティブフィードバック」と、良くない行動を叱ったり指導することで改善を促す「ギャップフィードバック」を、状況に応じて使い分けることが必要です。

ここで大事なのが、フィードバックは「自他尊重の姿勢で伝える」ということです。相手のために行うのがフィードバックですから、自分の言いたいことを伝えた結果、相手が不愉快に感じるとか、逆に言いたいことが言えずに自分が我慢するということではいけません。アサーティブ・コミュニケーションと言うそうですが、お互いを尊重しながら意見を交わすということがとても大切なのです。

心理的安全性についても、改めて学びました。心理的安全性が高いとは、決して甘えや馴れ合いではありません。活発な意見交換が行われ、メンバーと協力して成果を出すことができるのが「心理的安全性の高い職場」なのです。

心理的安全性を高めるためには、日頃の挨拶や言葉づかい、柔らかい雰囲気で接するといったことが重要です。「心理的安全性は凡事徹底です」という講師の言葉が、とても印象的でした。

情けは人の為ならず

今回学んだことを幹部が実践し社内に定着したら、どんなに良い会社になることでしょう。

しかし研修を実施したからといって、現実にはそう簡単なことではないと思っています。それは、今回学んだことの多くが、相手との信頼関係がベースになっており、相手を信頼するということは、ルールや仕組みで強制することができないからです。

信頼のように、強制できないが欠かしてはいけないことを組織にどうやって埋め込んでいくのか。私たちはそのことを真剣に考えなければいけません。

「情けは人の為ならず」という諺がありますが、この意味は「情けは他人の為だけではなく、いずれ自分にも返ってくるものだから、誰にでも親切にせよ」ということです。

「情けをかけることは、結局は相手のためにならない」という意味ではありません。もし誤解があるとしたら、相手のためにならないという文脈の背後にあるのは「厳しくても自分で乗り越えることこそが正しい」という考えではないでしょうか。その考え自体は間違っていないかもしれません。

しかし、辛い時に正論を突き付けられると人は息苦しさを覚えるということを、私たちは経験から知っています。「情けは人の為ならず」に対する誤解は、信頼より正しさを優先してしまった結果かもしれません。

信頼を得たいのであれば、先ず自分が相手を信頼することではないでしょうか。上司が部下を信頼していないのに、部下が上司を信頼するということはないでしょう。研修で学んだようなことが実践されている強い組織には、必ず上司と部下の信頼関係があるのです。


TOMAコンサルタンツグループ株式会社
代表取締役社長
市原 和洋
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<チェックポイント>

キャリア形成のため、部下の価値観や強みを理解し、今後の成長の道筋を示すこと
□フィードバックは「正しさ」ではなく「自他尊重」の姿勢で行うことが重要
□上司と部下の信頼関係は、強い組織をつくるうえでの基盤となる