先日ある上場企業の経営者の方から、会社にも3つの成人病があることを教わり、ハッとさせられることがありました。
健康には日ごろの生活習慣が大切であることは分かっているつもりですから、会社という組織が成人病にかかっているのであれば、今すぐ悪い習慣を見直さなければいけません。
皆さんの会社であれば、自社のどんな習慣を見直すべきでしょうか。
会社の成人病とは
会社の成人病の一つ目は「ルーティーンワーク依存症」です。
この病気にかかると、いつもと同じ目の前の作業をこなすことで満足してしまい、新しいことにチャレンジしたり、より良い成果を出すために工夫したりすることができなくなってしまいます。上司の指示を受けて仕事をすることが多い一般社員は注意が必要です。
二つ目は「予算未達平気病」で、これは部門長がかかりやすい病気です。
目標を達成できないことが続くと、いつの間にか目標達成に対する意欲を失ってしまい、目標達成のための作戦を考えたり部下を励ましたりすることができなくなってしまいます。部門長がこの病気にかかると、組織全体にまん延していく可能性があるので、とてもやっかいです。
そして三つ目が「チマチマ病」です。
これは、細かいことが気になって部下をマイクロマネジメントしたり、自分がやらなければと手を出しすぎてしまっている状態です。もし役員がこの病気にかかると、大局的な視点で会社全体をとらえることができなくなってしまいますし、部下は仕事へのモチベーションが下がってしまうでしょう。
皆さんの会社ではいかがでしょうか。
私自身は、社内のチマチマしたことに時間を取られることが多いと感じており、もっと自分にしかできないことに時間を割かなければいけないと考えていたところでした。ルーティーンワーク依存症や予算未達平気病についても、思い当たることが幾つかあります。
成人病とは上手く言い表したものですが、人間であれば偏った食事や運動不足、喫煙といった生活習慣の影響が大きい慢性疾患であり、様々な病気を引き起こすリスクを高める要因となるものです。自社が会社の成人病にかかっていないかを見極めるためには、まずは社員一人ひとりの発言や行動に注意深く目を向けることが必要です。
変化への抵抗を乗り越える
3つの成人病についてよく考えてみると、どれも新しい取り組みや変化することへの抵抗によるものだということに気づくのではないでしょうか。心理学でもコンフォートゾーンという言葉があるように、誰でもストレスや不安を感じずにいられる慣れ親しんだ仕事や場所、仲間により、快適な精神状態でい続けたいものです。
しかし、人や組織が成長するためには、コンフォートゾーンから抜け出し挑戦しなければいけません。私たち経営者はそのために何をすべきでしょうか。
まずは危機感を活用するという方法があると思います。コロナ収束から既に2年が経過していますが、あの時の危機感を忘れている会社は多いのではないでしょうか。このままでいると自分たちはどうなるのか、危機感をバネに変化への抵抗を乗り越え、新しい取り組みへの挑戦に着手することが必要です。
また、変化が当たり前のこととして受け入れられるよう、日ごろから変化を経営に組み込んでいくことも大切です。組織を変える、名称を変える、場所を変える、若手の登用など、とにかく変えてみることで、変化が当たり前という企業文化ができていくものだと思います。
他にも、評価制度についても工夫が必要です。評価制度が成果に偏りすぎており、新しいことに挑戦し失敗すれば評価が下がるということであれば、誰も進んで挑戦する人は現れないでしょう。

人間も会社も、成人病にならないためには習慣を改善することが大切です。
進行が緩やかで、気づいたときには治療に長期間を要する状態になってしまう恐れがあるからこそ、社員の日頃の発言や行動に目を向けてみてください。成人病は予防できるのです。
TOMAコンサルタンツグループ株式会社
代表取締役社長
市原 和洋
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<チェックポイント>
□会社にも3つの成人病がある
□会社の成人病も、予防するために日頃の習慣を見直すことが大切
□コンフォートゾーンから抜け出し挑戦できる環境や仕組みを整える