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社長のブログ ~100年続く企業を創る~

理念浸透は、科学法則的にも重要です

記事作成日2025/06/16

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整理整頓をしないといけない、食生活に気を付けないといけないなど、頭では常識として正しいと思っているのになかなかできないということはないでしょうか。その理由は、子供の頃の躾や自分の体験に基づいて作られた常識が、あまりにも当たり前すぎて意識されていないからかもしれません。

しかし、その「自分にとっての常識を守れないこと」が科学的な法則であるとしたらどうでしょうか。科学法則であることを知ることで、「やらなければいけない!」と私たちの意識は変わるのではないかと思います。

エントロピー増大の法則とは

「エントロピー増大の法則」をご存じでしょうか。エントロピーとは「無秩序の度合いを示す量」のことですが、物事は常に「秩序から無秩序へ」という方向に進むということです。物理学では「熱力学第二法則」としても知られ、文系の私には馴染みがないものの、実は全ての物事に影響を与える普遍的な科学法則だそうです。

例えば、整理整頓された部屋(秩序)は、放っておくといつの間にか乱雑(無秩序)になっていくものであり、勝手に整理整頓されることはありません。水にインクを垂らせばインクは時間と共に水に溶けて混じり合っていきますが、インクが何かの拍子に一ヶ所に集まることもありません。つまり世の中は常にエントロピーが小さい状態から大きい状態へと進んでいくのであり、その逆は起こらないということです。

そして時間が経ちエントロピーが増大し続けると、混沌とした状態になり身動きできなくなってしまうのです。私たちは、物事は放っておけば手が付けられない状態になってしまい、元に戻すには相当のエネルギーが必要となる事を常識として知っています。

整理整頓された部屋を維持する、つまりエントロピーが小さい状態を維持するだけでもエネルギーは必要です。部屋が大きければ大きいほど、物が多ければ多いほど、自然に任せているとエントロピーはどこまでも増大していくのです。

このことは、私たちの企業についても同様です。企業として経済活動をすれば必ずエントロピーは増大します。

エントロピーは増大という一方向にしか進まず、その逆は無いからこそ、私たちは意思を持って無駄にエントロピーが増大しないようコントロールしなければいけません。社内に目を向けマネジメントするということは、エントロピーが増大しないようにエネルギーを注ぐということです。

エントロピーと100年企業

昨年、帝国データバンクが発表した調査結果によれば、創業から100年を超える老舗企業は日本全国で4万5284社だそうです。これを売上高別にみると「1億円未満」が42.7%と半数近くにのぼる一方「100億円以上」は5%であり、100年の歴史を積み重ねたとしても大きく成長することはとても難しいことが分かります。

エントロピー増大の法則に従って考えれば、1億円未満の会社は、家族経営や地域密着など、低エントロピーであることを意識し続けた結果として100年続くことができたのかもしれません。

一方で100億円以上の会社は、取引規模の拡大、社員数の増加、組織の複雑化に合わせ増大し続けるエントロピーを、上手くコントロールすることに成功した企業ではないでしょうか。

企業が存続し続けるためには、秩序を保ちエントロピーの増大を抑えることが必要です。一方で企業が活動すれば必ずエントロピーは増大します。成長しながら永続するためには、放っておけば増大し続けるエントロピーを減少させるため、弛まぬ努力が必要だということです。

中でも極めて重要なのは、社員の意識を揃えることでエントロピーを減少させていくことであり、経営理念の浸透ではないでしょうか。

エントロピー増大の法則が科学法則であるということは、同様の条件下では常に同じ現象が起きるということです。自社だけは大丈夫ということはないからこそ、手遅れにならないうちに、今すぐエントロピーの減少に取り掛かりましょう。


TOMAコンサルタンツグループ株式会社 
代表取締役社長 
市原 和洋
代表メッセージはこちら

<チェックポイント>

□物事は常に「秩序から無秩序へ」と進む(=エントロピーが増大する)
□企業のエントロピーを減少させるために、経営理念の浸透を通して社員の意識を揃えることが重要
□エントロピーは必ず増大するからこそ、エントロピーを減少させるためのマネジメントに力を入れましょう