BLOG

専門家によるブログ

社長のブログ ~100年続く企業を創る~

進化には協力関係が欠かせない

記事作成日2025/03/06

X
facebook
copy

今年は巳年(へび年)です。蛇が古い皮を新しくするため脱皮するように、新しい自分に生まれ変わろうとか、変化を求めて新しいことにチャレンジしようと気持ちを新たにした方は多いのではないでしょうか。私自身もその一人です。「脱皮できない蛇は滅びる」というのはニーチェの言葉ですが、私たちTOMAも従来の殻から抜け出すため、様々な取り組みを行っています。

進化の原理

どんな会社でも、環境に合わせて変化することが求められますが、ここでダーウィンの「進化論」が引き合いに出されることがあります。私のこれまでの「進化」に対するイメージは、人間が脳を発達させ、考えたり会話をしたりすることができるようになったように、多機能化し複雑な構造になるというものでした。

しかし東京大学大学院の市橋伯一先生の著書『協力と裏切りの生命進化史』(光文社新書刊)によると、ダーウィンが提唱した進化というシステムは、必ずしも複雑な生命を生み出すために適したものではないそうです。むしろ多くの生物は、進化に際し不要な機能をなくし単純になっていくのです。

進化の原理は「生物には多様性があって、その中から環境に適応して最もたくさん子孫を残すものが自然に選ばれる(自然選択される)」ことであり、単純である方がたくさんの子孫を残すことができる、つまり自然に選ばれやすいということなのです。

それでは、私たち人間のような複雑な生物への進化はなぜ起こったのでしょうか。驚くことに「たまたま」なのだそうです。ある生物が増えて多様性が生まれると、何かのきっかけで複雑な生物が生まれることがあります。そのうち一部が環境に適応し生き残った結果、ごくわずかな生物だけが複雑になっていったということなのです。

進化した生物のほとんどは単純化することで自然に選ばれたということになります。これは会社であれば、例えば環境へ適応するため新規事業に取り組んだところ既存事業は縮小し、組織としては大きくなっていないし生産性も上がっていない、しかし生き残ることはできたという状態ではないでしょうか。

協力関係の進化

私たちの会社が環境に適応し進化していく方向性は、新たな機能を加え複雑化していくことでしょうか。それとも不要な機能を減らし単純化していくことでしょうか。

環境に適応して生き残る事だけが目的であれば単純化していくべきかもしれません。しかし、より豊かになるために、高機能で複雑な組織へ進化することを目指すのであれば、なぜ複雑な進化を成し遂げた生物が生き残れたのか、ここに注目すべきだと思います。

実は複雑な進化を成し遂げた生物に共通することが、協力関係を進化させてきたということでした。動物や昆虫など、協力することで子育てをしたり餌を獲ったりする生物は存在しますが、その範囲は血縁関係など一定の範囲に留まります。

しかし私たち人間は、相手に共感することで信頼関係を築くことができ、血縁関係を超えた協力ができるという社会性を備えた生物です。協力することで生き残りやすくなり、複雑化することで単純な生物とは競争しなくて済むようになるのです。

単純な生物ほどのスピードで増殖することはないものの、自分たちの生きる道をその都度新たに作り出してきたのが複雑な進化を遂げた生物であり、その最たるものが私たち人間なのです。会社を一つの生物だと考えれば、より複雑で多機能なものに進化していくためには協力関係が欠かせないということになります。



私たち人間はお互いに協力することができます。この他の生物にはない特性を最大限に活かし、協力関係を進化させ、そして協力関係を維持する仕組みをつくっていくことが、人では生み出せない価値を生み出し、自社を次の段階へ進化させるために欠かせないことなのです。


TOMAコンサルタンツグループ株式会社 
代表取締役社長 
市原 和洋
代表メッセージはこちら

<チェックポイント>

□複雑な進化を成し遂げた生物は、協力関係を進化させてきた
□複雑化することで単純なものとは競争しなくて済むようになる
□価値を生み出し自社を進化させるために、協力関係を進化・維持する仕組みをつくる