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社長のブログ ~100年続く企業を創る~

どんな組織でありたいですか

記事作成日2025/01/15

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産労総合研究所の調査によると、社員旅行を実施する企業の割合はコロナ前の時点で27.8%、同好会・サークル活動がある企業の割合は47.3%だったそうです。

コロナをきっかけに社内イベントが見直され、この実施率も今はもう少し高まっているかもしれません。TOMAでも同様の取り組みがあり、先日私も社員旅行に参加したところですが、このような取り組みが組織にとってどのような意味があるのかを考えてみました。

社会集団についての二つの概念

「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」という、社会集団について対をなす二つの概念を提唱したのは、ドイツの社会学者テンニースです。

このうちゲマインシャフトとは、地縁や血縁、精神的連帯などにより自然発生的なつながりで形成されるものであり、家族や村落、趣味の会などがそれに当たります。一方のゲゼルシャフトとは、利潤の追求など特定の目的を達成するために人為的に形成され、その代表が企業ということになります。

ゲマインシャフトは気の合った仲間などで構成され、組織の目的とメンバーの目的とが一致し、心地よく居られることが優先されますから、その人間関係はウェットであると言えるでしょう。これに対しゲゼルシャフトの方は、効率的に組織の目的を達成することが大切であるため、適材適所の考え方に基づき役割が分担され、その人間関係はどちらかというと利害関係に基づくドライなものとなります。

テンニースは、ゲマインシャフトを前近代的なもの、ゲゼルシャフトを近代的なものと、社会の歴史的な変化であると考えたようですが、現代に生きる私たちは、自分が所属する企業がゲゼルシャフトであると言い切れるでしょうか。

確かに企業はそれぞれの事業目的を達成するために人為的に形成され、企業存続の条件として利益を獲得しなくてはなりません。しかし社内の人間関係について多くの企業では、単なる利害関係に基づく関係性ではなく、お互いを認め高め合う、感情や情熱といった心理面に基づく親密な関係性であって欲しいと考えているのではないでしょうか。

つまり、多くの企業はゲゼルシャフトであると同時に、ゲマインシャフト的な側面を持っているということです。ゲマインシャフトとゲゼルシャフトを組織の中でどのように共存させるかということが、組織のあり方を考える上で重要なカギなのではないでしょうか。


重要なのは関係性

冒頭の社員旅行の話に戻りますが、TOMAの社員旅行は時期と場所を変えた複数のプランを用意し、社員が自由に選んで参加できる仕組みになっています。日帰りから2泊3日まで、国内・国外と多様なコースがあるので、企画する方は大変です。

このように社員が自分の意志で参加できる社員旅行は、ゲマインシャフト的であると言えると思います。同好会・サークル活動についても、社員が自由に立ち上げ、賛同する社員を集めて活動しており、会社はその経費の一部を負担するだけです。

社内イベントに限らなくても、「この課題解決策を考えよう」「このテーマについて研究しよう」というように自然発生的に人が集まって形成された集団は、ゲマインシャフトであると思います。

どんな組織でありたいかを考えるということは、社員同士がどんな関係性でありたいかを考えることでもあります。社員同士、心理的に親密な関係性を築いて欲しいと考えるのであれば、方針や目標という客観的な尺度に基づき組織される部門やチーム以外に、どうすれば自然発生的なゲマインシャフトを作り出すことができるかを考えることが重要だと思います。

社員旅行は一つの例ですが、参加して感じることは、普段の仕事における関係性とはまた違う、フラットな関係性の中で参加者一人一人が楽しんでおり、関係性の質に変化があるように思えることです。

社員同士の関係性の質に目を向けること、それが理想の組織になるために必要なことを考える上での重要なヒントではないでしょうか。

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 
代表取締役社長 
市原 和洋
代表メッセージはこちら

<チェックポイント>

□ゲマインシャフトとゲゼルシャフトをどう共存させるかが組織のあり方のカギである
□社員が自発的にゲマインシャフト(ウェットな概念)を作り出す方法を考える
□社員同士の関係性の質に目を向けることが重要