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AIにその判断を任せられますか?

記事作成日2024/10/15

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少し前になりますが、パリ五輪は日本人選手の活躍もあり、改めてスポーツの素晴らしさやその力を感じる良い機会となりました。しかし一方で、誤審と疑われるような判定の多さから、常に状況が変化するスポーツの現場で人間が判断を下すことの難しさと限界を感じる機会でもあったのではないでしょうか。

このようなミスが許されない重要な判断こそAIに任せるべきだと考える人は多いと思います。今回は、重要な判断をAIに委ねた時に人はどう感じるのか、私なりに考え気付いたことをお伝えします。

AGI が実現する未来

AGI(Artificial General Intelligence)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

最新のテクノロジーに疎い私は最近知った言葉ですが、人間のように汎用的な知能を持つ人工知能(汎用人工知能)を指し、今後私たちの社会や生活に革命的な変化をもたらすと言われています。

AIと言えば最近ではChatGPTが思い浮かびますが、AGIは人間の指示に従って特定のタスクをこなす従来のAIとは異なります。試しにChatGPTに「あなたはAGIですか?」と質問してみたところ、「いいえ、私はAGIではありません。私は特定のタスクに特化した人工知能モデルであり、自然言語処理を用いてユーザーとの対話や情報提供を行います。」という回答がありました。

指示やルールに基づいて特定のタスクを実行するのではなく、人間のように幅広い知識や技術を総合的に活用し、様々なタスクや状況に柔軟に対応し、しかも学びながら自己進化することもできるのがAGIなのです。

このような人間と同レベルの汎用的な知能を持つAGIは現在の技術ではまだ実現していませんが、実は数年以内にも実現するのではないかと言われているのです。

本当にこのAGIが完全なものとして実現するのであれば、冒頭のスポーツにおける判断をAIが行うことができるかもしれません。極めて微妙な難しい判断から人間が解放されるという未来も夢ではないかもしれないのです。

決定には責任が伴う

ここで、本当にAIに重要な判断を任せたらどのようなことが起こるでしょうか。

スポーツであれば、極めて微妙な状況でAIに負けと判断されてしまった選手やチームを想像してみてください。

AIは負けたと判断しているが自分は負けたとは思っていない、しかもなぜAIが負けと判断したのかその理由が分からないという時に、それでも私たちはAIの判断に従うことができるでしょうか。

また、AIが企業の経営戦略を考えるようになる未来を想像してみてください。

AIが導き出した経営戦略と自分の考えが異なっているが、AIが下した判断の理由が分からないとしたら、私たちはAIに重要な経営判断を委ねることができるでしょうか。

スポーツにおいても企業経営においても、人間は重要な判断を完全にAIに委ねることはできないのだろうと私は思います。なぜなら、AIは自分で責任を取るということが無いからです。

このことは、重要な判断を下すことには責任が伴うという当たり前のことを私に思い出させてくれました。

物事は重要かつ複雑であればあるほど、決定者の存在が必要になります。判断し決定するという行為は責任が求められるからこそ決定者は権限を持つ必要があるのです。五輪をはじめスポーツにおける審判は、責任感に基づき重要な判断を下していると思えるからこそ、その判断を尊重できるのではないでしょうか。


私たち経営者にも、決定する責任があるということを忘れてはいけません。AGIの登場は、間違いなく社会に重要な影響を及ぼし、私たちの生活を大きく変えることになるでしょう。

大事なのは、やはりAIを補完的に使うということが正しい使い方だということです。そして決定権は責任を取る人だけが有する権限だということです。

どんなに優れたAIが登場しようとも、私たち経営者は重要な判断の主体であり続けなければいけないのであり、だからこそ私たちは自分の判断基準を磨き続けなければいけないということではないでしょうか。

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 
代表取締役社長 
市原 和洋
代表メッセージはこちら

<チェックポイント>

□判断し決定するという行為は、責任が求められる
□責任感に基づき判断していると思えるからこそ、その判断を尊重できる
□経営者は判断の主体であり続けるために、判断基準を磨き続けなければならない