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高い競争力・生産性の源泉は何か

記事作成日2024/09/09

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IMD(国際経営開発研究所)というスイスのビジネススクールが6月に発表した2024年の世界競争力ランキングで、日本は昨年から順位を3つ落とし、67ヶ国中過去最低の38位という結果でした。

1位はシンガポールで2位がスイス、3位がデンマークです。アジア勢では香港、台湾、韓国、人口の多い中国やインドネシアも日本より上位であり、それぞれ昨年よりも順位を上げています。国際競争力という点で日本が優位性を失っている現状を受け止めるなら、私たちはここから何を学ぶべきでしょうか。

人生の優先順位

日本の国際競争力の足を引っ張っているのは「ビジネス効率」という項目で、その順位はなんと51位です。ビジネス効率はさらに幾つかの項目に分けられますが、そのうち「経営プラクティス」に至っては65位です。

これは変化し続ける環境に対して、日本の会社経営が敏感に反応できていないということを意味しています。このビジネス効率で1位の評価を得ているのがデンマークですが、興味を持って調べてみて驚きました。

「午後4時には仕事を切り上げ、家族や友人との団欒を楽しむ」というのがデンマーク人のライフスタイルであり、オフィスの風景は午後4時過ぎには清掃員が掃除をし、午後5時には空っぽになるそうです(『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』針貝有佳著・PHPビジネス新書より)。

著者のデンマーク人へのインタビューを通じて気づくのは、「働き方を決めるのは『仕事の仕方』ではなく、『人生の優先順位』なのだ」ということです。デンマーク人にとって「ワーク」の目的は「ライフ」を充実させることにあるから、短時間で最大限の成果を出せるのだそうです。

またデンマーク人は、決定したプランに固執せず、状況に合わせて軌道修正していくことを得意とし、マイクロマネジメントによる具体的な指示がなくても成果を出せるそうです。これはデンマーク人が自分で考えることに慣れており、社員一人ひとりが失敗の許される環境で自立した働き方ができているからだそうです。

そんなデンマークも、ちょっと前の世代までは、今ほどワークライフバランスが重視されていたわけではありませんでした。

昔は多少無理をしたり、上司との関係性も考えながら働いていたそうですが、時代の変化とともに少しずつ働き方が変わってきたのです。今のデンマークは、私たちがお手本とすべき日本の未来の姿なのかもしれません。


外に出る積極性と魅力的な環境

世界競争力ランキング2位のスイスは、同じIMDが発表する世界人材ランキングの1位でもあります(日本は43位)。

以前、在日スイス大使館に勤務する日本人にお会いした時に教えてもらったことは、スイスの高い競争力や生産性の理由は「国外に打って出ようという積極性の高さと、国外から優秀な人材や投資が入ってくる魅力にある」ということでした。

アウトバウンドとインバウンドの両方を高いレベルで実現できているということです。日本でも「海外展開を長期で進めてきた企業は売上高や収益へのプラス影響が強い傾向にある」(中小企業白書2024)という調査結果があります。

一般に中小企業が海外展開による生産性向上の効果を得るには数年かかると言われていますが、だからこそ私たちは未来に目を向けなければいけません。

優秀な人材や投資を獲得するためには魅力がなければいけないのはその通りですが、ある程度時間がかかる取り組みです。

本当に大切なことは、目先の生産性だけを追っていると気づかないものではないでしょうか。

千葉県より人口の少ないデンマーク、九州とほぼ同じの面積のスイス、国民性も異なる日本とはもちろん事情は異なるものの、その考え方には私たちも参考にすべきことがあると思うのです。

競争力や生産性それ自体が目的ではなく、人生の優先順位、働く人のモチベーション、魅力的な環境などが結果として高い競争力と生産性を生むということに、改めて気付かされました。

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 
代表取締役社長 
市原 和洋
代表メッセージはこちら

<チェックポイント>

□仕事の仕方ではなく、人生の優先順位が働き方を決める
□目先の生産性だけでなく、未来を見据えた取り組みを行う
□自社や社員にとって何が競争力・生産性の源泉なのかを掴む