BLOG

専門家によるブログ

社長のブログ ~100年続く企業を創る~

経営のセンス、磨けていますか?

記事作成日2024/08/14

X
facebook
copy

自分が思い描いたように物事が進まない時や、起きた問題に対する判断を誤ってしまった時、つくづく自分はセンスが無いなあと思う時があります。

センスのある経営者であれば、どんな問題、どんな状況であっても成果を出すでしょうし、迷うことなく正しい決断を下せるのではないかと思うのです。

環境が目まぐるしく変化し、立てた計画があっという間に陳腐化してしまう時代だからこそ、どんな状況でも臨機応変に対応できる「センス」という能力が必要ではないでしょうか。

ブリコラージュとエンジニアリング

皆さんの身近でセンスが良いなと思える人は、どんな人でしょうか。

料理のできない私にとって、妻は料理に関する優れたセンスの持ち主です。
今日はお肉が食べたいなと思ったら、冷蔵庫にあるものを上手く使って料理を作ってくれます。必要な材料や調味料が無くても代わりの物で代用し、感覚的に味付けをして出来上がる料理は、レシピ通りに作ったものより美味しく出来たのではないかと思うこともあります。

このように限られた持ち合わせの材料と道具を間に合わせで使い、目下の状況で必要なものを作ることを「ブリコラージュ」といいます。フランスの社会人類学者レヴィ=ストロースが、人類が古くから持つ「野生の思考」を説明するのに用いた例えで、器用仕事などと訳されます。

これに対し、最初に目的を明確にし、そのために必要な手段を考え計画的に実行することを、レヴィ=ストロースはエンジニア(技師)の仕事に例えました。まず献立を決めたらレシピを用意し、足りない材料はスーパーに行って買い揃え、レシピ通りに目的の料理を作り上げる。これはエンジニアリング的な行為ということになります。

ブリコラージュとエンジニアリング。どちらかというと私たちはエンジニアリングの方が合理的であると感じるのではないでしょうか。しかし、思い描いた通りにはなかなかいかず、日々何とかしようと試行錯誤をしながら、様々な経営判断を繰り返しているのが経営の現実です。

レヴィ=ストロースはブリコラージュの方がより普遍的な思考であると主張しましたが、実際は、どんな経営者でもブリコラージュしているのです。設計図に基づかないブリコラージュでできあがるものは、常に当初の意図とずれるものの、当初の意図を超える結果を生み出す可能性があるのもブリコラージュの方なのです。

センスは誰でも手に入れられる

上手にブリコラージュするためにはどんな能力が必要でしょうか。私はそれがセンスや感性といったものではないかと思います。

そうすると、センスは生まれつきの才能だから自分には難しいと思うかもしれません。しかしセンスは決して生まれつきの才能ではなく、誰でも手に入れられる能力なのです。

くまモンの生みの親として有名なクリエイティブディレクター水野学氏によれば「センスとは知識の集積である」ということになります(『センスは知識からはじまる』水野学著・朝日新聞出版より)。

世の中に生み出される企画の多くは、「あっと驚く、売れない企画」だそうです。しかし本当に売れるものを生み出そうと思ったら、あまり驚かないけど売れているもの、つまり「誰でも見たことのあるもの」という過去に存在していたあらゆるものを知識として蓄えることが必要なのです。

知識が多ければ多いほどクリエイティブの土壌が広がり、あっと驚くアウトプットが可能になるということです。自分の好き嫌いや思い込みを外し、様々なことに興味を持って知識を吸収する。それがセンスを磨くための第一歩なのです。



自社の企業価値を最大化するために、私たちは経営センスを磨き続け、そのセンスを活かしたブリコラージュにより、設計図のない世界を生きていかなければいけません。

そのためには、アイデアが降りてくるのを待つのではなく、まず知識を蓄えること。あらゆるものに興味を持って学び続けることが大事だと思うのです。

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 
代表取締役社長 
市原 和洋
代表メッセージはこちら

<チェックポイント>

□変化の激しい現代の経営には、臨機応変に対応できる「センス」が必要
□ブリコラージュには当初の意図を超える結果を生み出す可能性がある
□センスを磨くために、あらゆるものに興味を持って学び続ける