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遺言書の内容を実現するまでの流れと注意点を専門家が解説します

記事作成日2023/11/17 最終更新日2023/11/17

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遺言の内容を実現するためには、多くの手続きが必要になることがあります。そのため、そもそもどういった手続きがあり、どのように進めれば良いか、という点についてこの記事で解説します。また、手続きや流れの前に、遺言書とは何かという点についても記載しますので、ぜひご確認ください。

遺言書とは

遺言書とは、亡くなった方が相続人に対し自身の遺産をどのように分割するのかの意思を書面に記したものです。遺言書は、大きく分けて3種類あります。

自筆証書遺言

自分が手書きにより作成する遺言書です。単独で手軽に作成することができますが、法律上の要件を満たさなければ無効となる恐れがありますので、注意が必要です。また、紛失や偽造、変造などのリスクもあります。

公正証書遺言

公証人が証人2名以上の立ち合いのもと、作成する遺言書です。遺言者が遺言内容を公証人に口頭で伝え、公証人が作成します。そのため、手数料がかかりますが、法律の要件を満たした遺言書が作成されるため、信用性が高く、安全で確実な方法といえます。

また、公正証書遺言の原本は、公証役場に保管されるため、改ざんや紛失のおそれもありません。最もお勧めできる遺言書です。

秘密証書遺言

公証人と証人2名以上の立ち合いが必要とされる点は、公正証書遺言と同じです。遺言書の存在のみを公証役場に記録し、遺言内容を誰にも知られたくない場合に有効な遺言書です。遺言書自体はパソコンで作成しても問題ありませんが、公証人は遺言内容を確認しませんので、法律の要件を満たしているかどうかは担保されません。

また、秘密証書遺言の原本は、公証役場に保管されないため、紛失のおそれがあります。よって、あまり利用されない遺言方法です。

遺言書の内容を実現するまでの流れ

遺言書の確認

亡くなった方が、遺言書を残しているかどうか確認しましょう。遺言書がある場合、勝手に開封せずに家庭裁判所の検認を受けましょう。検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です(遺言の有効・無効を判断する手続ではありません)。

検認の要否は、遺言の種類によって異なります(以下表を参照)。

遺言の種類 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
検認の要否 必要(※) 不要 必要

※法務局に保管されている自筆証書遺言は検認不要

戸籍謄本等の収集

遺言書の検認が済んだら、亡くなった方と相続人の戸籍謄本等を収集し、相続人を確定しましょう。

①亡くなった方について

出生から死亡までの戸籍謄本等を役所で取得しましょう。遺言により遺産を分割する場合、死亡したことが分かる戸籍謄本(除籍謄本)のみで足りることがありますが、金融機関によっては出生から死亡までの戸籍謄本等を求められることもあります。

また、相続税の申告においても、出生から死亡までの戸籍謄本等が必要になります。

②相続人について

現在の戸籍謄本を本籍地のある役所で取得しましょう。

遺産の確認

相続人全員で遺言書の内容を確認し、亡くなった方の遺産を確認しましょう。場合によっては、財産目録等を作成するとよいでしょう。遺言書に記載のない遺産が発覚した場合、当該遺産に遺言の効力は及びません。よって、相続人間で遺産分割協議により解決することになります。

遺言執行者の選任

相続が遺言書どおりに実行されるように必要な手続きを行う人のことを、遺言執行者といいます。遺言者は、遺言により、1人又は数人の遺言執行者を指定することができます(民法第1006条1項)。遺言書に指定がない場合、申し立てにより、家庭裁判所が遺言執行者を選任することができます。

未成年者と破産者を除き、誰でも(法人も可能)遺言執行者になることができますが、煩雑な相続手続きを円滑に進めるため、専門家を遺言執行者として指定しておくことをお勧めします。

遺言書どおりに遺産を分割するかどうかの検討

相続人は、必ず遺言書どおりに遺産を分割しなければならないのでしょうか?相続人全員の合意があれば、遺言書によらず、相続人全員で遺言書と異なる内容の遺産分割協議書を作成し遺産を分割することができます。遺言執行者が選任されている中で遺言書によらずに遺産を分割する場合は、遺言執行者を解任(辞任)する必要があります。

遺産の名義変更

遺言書をもとに、不動産の名義変更や預貯金口座の解約などを行います。ここでは、預貯金口座の解約方法を説明します。

①金融機関に対し亡くなった事実を伝えましょう。これにより、預貯金口座は凍結され、入出金が一切できなくなります。

②金融機関から口座解約に必要な書類の提出を求められますので集めましょう。

・亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等の原本
・相続人全員の現在の戸籍謄本の原本
・相続人全員の印鑑証明書の原本
・相続人全員の実印
・遺言書の原本
・検認済証明書の原本(公正証書遺言、法務局に保管されている自筆証書遺言の場合は不要)
・金融機関所定の相続手続依頼書

※各種原本は一旦金融機関に提出した後、返却されます。

③必要な書類を金融機関に提出しましょう。

上記②に記載の書類が揃ったら、金融機関に提出しましょう。書類に不備がなければ、数週間/から1か月程度で指定した口座に振り込まれます。

手続きの完了

遺言書に従って遺産を分配したら、手続きは完了となります。

債務はどうなるのか

亡くなった方に借金等の債務(マイナスの財産)があった場合、法定相続人間で法定相続割合に応じて分割されます。仮に遺言書に特定の相続人に対し債務を全て負担させる条項があったとしても、債権者に対してはその効力は及びません(民法第902条の2)。

まとめ

遺言書の内容を実現するためには、公的書類の収集等、煩雑で慣れない作業が必要となりますので、専門家に相談しながら進めていくことが大切です。TOMAでは、遺言書の作成から遺産の名義変更までサービスを提供しておりますので、是非ご相談ください。