補償契約・役員等のために締結される保険契約
令和3年3月に、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律について一部追加・修正が行われました。今回は、その中の「補償契約・役員等のために締結される保険契約」についてご紹介します。なお、こちらについては一般社団法人だけでなく、一般財団法人、公益社団(財団)法人へも適用される内容となっております。
一般社団(財団)法人、公益社団(財団)法人は、役員が法令違反を疑われたり、責任の追及に係る請求を受けたりした際の防御費用や賠償金について、全部又は一部を当該役員に補償することが可能です。また、法人が役員賠償責任保険を契約することもできます。その場合、手続きが必要となります。必要な手続きや、どのような範囲の費用・損失を対象としているのかを、以下①費用・損失の範囲②必要な手続き③追加内容のポイントについて、詳しく説明します。
①費用・損失の範囲
補償できる費用・損失の範囲や保証できない費用の損失の範囲は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第118条の2項、3項で次のように定められています。
補償できる費用・損失の範囲
1.当該役員が、その職務の執行に関し、法令の規定に違反したことが疑われ、又は責任の追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用
2.当該役員等が、その職務の執行に関し、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合における次に掲げる損失
・当該損害を当該役員等が賠償することにより生ずる損失
・当該損害の賠償に関する紛争について当事者間に和解が成立したときは、当該役員等が当該和解に基づく金銭を支払うことにより生ずる損失
しかし、補償契約を締結している場合であっても、次に掲げる費用等は補償することができません。
補償できない費用・損失の範囲
1.補償できる費用・損失の範囲のうち、通常要する費用の額を超える部分
2.役員等が、職務を怠った部分に関する損失
3.役員等がその職務を行うにつき悪意又は重大な過失が合った場合、当該損失の全部
②必要な手続き
1.補償契約・役員等のために締結される保険契約の内容を決定するには、一般社団法人については社員総会(理事会)、一般(公益)財団法人については理事会の決議によらなければなりません。
2.理事が被保険者になることができません。
3.民法108条は当該締結には適用されません。ただし、決議によってその内容が定められたときに限ります。
※民法108条
同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
③その他のポイント
その他にも、下記のようなポイントがあります。
1.法人が役員等の賠償金等を補償した後、当該役員が自己や第三者の利益のため、又は法人に損害を加える目的で職務を執行したことを知った場合、補償した金額を返還することを請求することができます。
2.理事会設置一般社団法人及び一般(公益)財団法人においては、補償契約に基づく補償をした理事及び当該補償を受けた理事は、遅滞なく、理事会に報告する必要があります。
3.理事が自己又は第三者のために法人の事業の部類に属する取引、いわゆる競業取引に該当する場合の法人と理事との間の補償契約については、適用されません。
4.民法108条の規定は適用されません。
まとめ
今回は「補償契約・役員等のために締結される保険契約」についてご紹介しました。
不祥事がおきてしまった際の賠償金を法人が支払うことや、保険契約の被保険者を役員にすることは可能ですが、その範囲や手続きには注意が必要です。
さらに詳しい話を聞きたい方や、些細な疑問も大歓迎です。ぜひ、TOMA税理士法人にご相談ください。