目次
概要
永住許可申請の要件の一つに、「日本での滞在歴10年以上」がありますが、高度専門職の在留資格を持っている場合、この10年の年数要件が緩和されます。この記事では高度専門職による永住許可申請について解説いたします。
永住許可要件について
まずは通常の永住許可申請の法律上の要件について解説いたします。
1、素行が善良であること(素行善良要件)
日本の法律に違反し、懲役、禁固または罰金に処せられていないか、素行善良と認められない特段の事情があるか等を審査されます。実務上、スピード違反等の軽微な道路交通法違反については、それだけでは素行善良要件を満たさないとは判断されないようです。
2、独立生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
申請人自身または配偶者の収入によって日本で安定した生活が見込まれるかを審査されます。生活保護受給者や、未納税があると不許可になる可能性が高いです。また年収はおおむね300万円以上であることが求められ、それに満たないと独立して生計が立てられないと判断されやすいです。
3、その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益適合要件)
原則として、引き続き10年以上日本に在留していることが必要です。「引き続き」とは、在留資格が途切れることなく在留を続けることを言います。再入国許可やみなし再入国許可で一時的に日本を離れている場合は在留が継続していることになりますが、出国中に再入国許可が失効したり、再入国許可を受けずに出国したりすると、在留が継続していることにはなりません。
また、再入国許可を受けての出国であっても、在留期間の半分以上を海外出張等により海外で生活しているような場合は、生活の本拠が日本にないと判断され、合理的な理由がない限り国益適合要件を満たさないと判断される可能性があります。
原則10年在留(国益適合要件)に関する特例
永住許可要件の1つである「原則10年在留(国益適合要件)」ですが、この10年の年数要件を緩和する特例があります。その1つが「高度専門職」です。
この高度専門職による特例について見ていきます。
高度専門職について
高度専門職は、ポイント計算表で計算したポイントの合計が70点以上の方に付与される在留資格です。出典:出入国在留管理局「ポイント評価の仕組みは?」
高度専門職を取得することによって得られるメリットは以下の通りです。
1. 複合的な在留活動の許容
2. 在留期間「5年」の付与
3. 永住許可要件の緩和
4. 配偶者の就労
5. (一定の条件の下での)親の帯同の許容
6. (一定の条件の下での)家事使用人の帯同の許容
7. 入国・在留手続の優先処理
高度専門職による永住許可要件の緩和
上述の通り、永住許可要件の一つに「原則10年在留」があり、永住権を取得しようとする外国人にとってはこの年数要件が1つの大きなハードルとなっています。しかし、高度専門職を取得することによってこの年数要件が大きく緩和されます。
①高度専門職ポイント計算表を行った場合に70点以上を有している者であって、次のいずれかに該当する者
Ⅰ 「高度専門職外国人」として3年以上継続して日本に在留していること
Ⅱ 3年以上継続して日本に在留している者で、永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職ポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること
②高度専門職ポイント計算表を行った場合に80点以上を有している者であって、次のいずれかに該当する者
Ⅰ 「高度専門職外国人」として1年以上継続して日本に在留していること
Ⅱ 1年以上継続して日本に在留している者で、永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職ポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること
ポイント計算で計算したポイントが70点以上であれば3年、80点以上であれば1年の在留で国益適合要件を満たします。
①-Ⅱ、②-Ⅱについて、日本での滞在歴はこの間、高度専門職の在留資格を保有している必要はなく、要求される滞在期間中についてポイント計算によるポイントを満たしていれば足ります。
仮に永住許可申請をする外国人の現在の在留資格が高度専門職ではなく、技術・人文知識・国際業務だったとしても、永住許可申請時からさかのぼって1年前から80点以上、もしくは3年前から70点以上であったことが証明できれば、永住許可申請時において高度専門職であることまでは要求されないこととなります。
まとめ
日本で働く外国人の中には永住権の取得を目標とする方は多いですが、高度専門職は平成27年に施行された比較的新しい在留資格ですので、高度専門職で永住許可申請の要件が緩和されることを知らない方も多くいらっしゃいます。
ビザの更新手続きが不要(在留カードの更新は必要)となることで、外国人を雇用している企業側にとってもメリットがありますので、この機会にぜひ自社の外国人従業員が永住許可要件を満たしているか、確認してみてもよいかと思います。
申請は必ず許可となるわけではなく、審査の上で判断されることとなります。特に永住許可申請は必要書類が多く、審査も長期間に渡ります。初めて申請される際は、一度専門家に相談することをお勧めいたします。