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事業承継における役員の構成と取締役の選定

記事作成日2017/05/31 最終更新日2021/06/24

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事業承継時に、どのような役員構成にするか、取締役会は設定するか、役員規程はどう規定するか、について検討しましょう。

(1)役員の構成について

どのタイミングでどのような役員構成にするかについても検討しておきましょう。

後継者はどのようなことが得意なのか、不得意なのか、それによってどのような右腕を配置したらいいのか、ある事業の責任者は従業員からの登用がいいのか、会社としての意思決定はどのような体制で行うのか、などを総合的に考慮して、検討します。

・代表取締役は一人にするか、会長を立てるのか。

(代表取締役会長、代表取締役社長の二人体制にするか)

・当面、相談役として現役員を残すのか。

・従業員から役員を登用するのか。

・社外からブレインとなるような役員を登用するのか。

(2)取締役の構成と取締役会

○取締役のメンバーの検討

取締役のメンバーを検討する際、以下のポイントを参考にしましょう。

・現経営者はいつまで代表取締役・取締役でいるか

・後継者は、どのタイミングで取締役・代表取締役に就任するか

・だれが後継者のサポート役になるか

・現在の事業、今後参入したい事業の責任者を取締役にするか

・経営方針や経営体制について、維持すること、改善することは何か

・維持するためにどのような人材が必要か

・改善するためにどのような人材が必要か

○取締役会の設置、非設置

現行の会社法では、取締役会を設置しないという設定が可能です。

取締役会を設置する場合、取締役のメンバーは3名以上必要で、監査役も必ず置かなければなりません。

一方、取締役会を設置しない会社の場合、取締役のメンバーは「1名以上」と設定することが可能です。1名でも3名でも10名でもかまいません。

取締役会を設定しない場合、「取締役会」という組織がない状況になります。株主も役員も親族だけで構成されているような会社は、わざわざ「取締役会」という組織を組成しなくとも、親族の意思が会社の経営に反映されるので取締役会がなくとも通常問題はありません。

一方、親族以外の方を取締役に選任する場合、「所有と経営の分離」が明確になり、オーナー一族とは別の組織体である「取締役会」をつくり、そこで日々の経営に関する決定をしていくほうが実効的です。

(3)代表取締役、役付取締役の選定

取締役の中から代表取締役を選定します。また代表取締役以外に、専務取締役、常務取締役、取締役会長、というような役付取締役を選定することも可能です。

取締役会の体制を検討するにあたり、役付取締役の設定をどうするか、ということもあわせて検討しましょう。

それぞれの役に応じて機能を設計することで、経営体制の構築が分かりやすくなることがあります。

○代表取締役、役付取締役

登記簿では、「取締役」「代表取締役」という表記だけがされ、会長や専務という表記はされません。

どのような役付けの場合、どのような役割を果たすかということは、それぞれ役員規程などに規定しておきましょう。

また、代表取締役を1名ではなく、2名以上選定することも可能です。事業承継時は、「代表取締役社長」と「代表取締役会長」とを設定している会社をよく見かけます。先代を後見的な立場として「代表取締役会長」にし、代表取締役社長とともに代表権を行使できるシステムです。

(4)社外取締役と責任限定規定の選定

 

社外から人材を登用する方法として、非常勤の社外取締役を選任する方法があります。

社外から人材を登用することで、これまで社内になかった知識や経験、考え方を取り込むことができるようになる、というメリットがあります。

非常勤の社外取締役を選任する場合、会社としてはその取締役のいいところを吸収する一方で、その方の責任を軽減するような待遇をとることで、社外取締役が存分にその知恵と経験と考え方を会社にもたらしてくれるケースがあります。

社外取締役の選任は、社内だけでは調達できない資源を取り入れる方法の一つです。

(5)役員規程、役員報酬規定

事業承継にあたっては、「役員規程」「役員報酬規程」などのルールを整備しておきましょう。先代が感覚で行っていた役員の統制や報酬決めも、後継者や第三者が役員になる場合はルールに則って行ったほうが運営がスムーズになります。役員にとっても見通しをもって働くことができるため、モチベーションがあがることがあります。

役員規程で、どこまで細かくルール化するのか、対象はどの役員までにするのか、どのような形で役員に周知するのか、ということは各社の事情によって異なります。

また、役員の報酬の設定の仕方も①~④のように様々です。

①役職ごとのテーブルをつくる。

②業績に連動させる。

③ストックオプションを付与する。

④コンピテンシーも考慮する。

いくつかの方法を組み合わせて報酬額を決定する会社もあります。

役員にどのように能力を発揮してもらいたいのか、働いた結果をどのように還元するのか、次のステップに向けてどのように動機付けするか、ということを長期的に考えて、具体的な導入の仕方を検討する必要があります。

専門の社労士、弁護士、行政書士に相談して、策定するようにしましょう。

(6)役員体制構築の検討

 

以上のとおり、役員体制を構築するには、以下の点を総合的に検討する必要があります。

・人数、メンバー構成

・取締役会設置の有無

・代表取締役と役付け取締役の設置

・社外取締役

・役員規程、役員報酬規程の導入