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社会福祉法の改正~新しい体制について~

記事作成日2017/01/16 最終更新日2017/01/16

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社会福祉法改正が平成29年4月1日に施行されます。

改正内容のうち、「ガバナンスの強化」ついてポイントを解説します。

<社会福祉法の一部改正の概要>

福祉サービスの供給体制の整備及び充実を図るため、以下の2点の観点から改正を行う。

(1)社会福祉法人制度について経営組織のガバナンス強化(評議員会を必置とする、一定規模以上の法人への会計監査人の導入等)

①事業運営の透明性の向上(財務諸表、現況報告書、役員報酬基準等の公表にかかる規程の整備等)

②財務規律の強化(役員報酬基準の作成と公表、社会福祉充実残額の明確化、「社会福祉充実残額」を保有する法人に対して、社会福祉事業又は公益事業の新規実施・充実にかかる計画の作成を義務付け等)

③地域における公益的な取組を実施する責務

④行政の関与のあり方

(2)福祉人材の確保を促進するための措置を講ずる。

①介護人材確保に向けた取組みの拡大

②福祉人材センターの機能強化

③介護福祉士の国家資格取得方法の見直しによる資質の向上等

④社会福祉施設職員等退職手当共済制度の見直し

<経営組織のガバナンス強化について>

 社会福祉法人について、一般財団法人・公益財団法人と同等以上の公益性を担保できる経営組織とするため、以下のとおり改正する。

 (1)理事・理事長・理事会

<改正前>

①理事会による理事・理事長に対するけん制機能が制度化されていない。

②理事・理事長の役割、権限の範囲が明確でない

<改正後>

①理事会を業務執行に関する意思決定機関として位置付ける。

②理事・理事長に対するけん制機能を働かせる。

③理事等の義務と責任を法律上規定する。

 (2)評議員・評議員会

<改正前>

①評議員会は、任意設置の諮問機関であり、理事・理事長に対するけん制機能が不十分

<改正後>

①評議員会を法人運営の基本ルール・体制の決定と事後的な監督を行う機関として位置付ける。

②必置の議決機関とする(小規模法人について評議員定数の経過措置あり)

③決議事項・・・定款の変更、理事・監事・会計監査人の選任・解任、理事・監事の報酬決定等

 (3)監事

<改正前>

①監事の理事・使用人に対する事業報告の要求や財産の調査権限、理事会に対する報告義務等が定められていない。

<改正後>

②監事の権限、義務、責任を法律上規定

 (4)会計監査人

<改正前>

①資産額100億円以上もしくは負債額50億円以上、又は収支決算額10億円以上の法人は2年に1回、その他の法人は5年に1回の外部監査が望ましい。

<改正後>

②一定規模以上の法人に会計監査人による監査を義務付ける。

 (5)各機関の整理

①評議員会:法人運営の重要事項を決定する。例えば、定款の変更、理事・監事・会計監査人の選任・解任、決算の確定、重要な財産の処分など。

②理事会:法人の日々の運営に関する事項を決定する。例えば、予算の編成、予算の執行、業務執行の決定、理事の職務執行の監督など。

また理事の中から代表理事を選定する。

③監事:理事の職務執行を監督する。

④会計監査人:計算書類の監査をする。

<改正後の評議員と評議員会について>

(1)評議員会の位置付け

必置機関で、法人運営にかかる重要事項の決議機関(役員の選任等)

(2)評議員会の役割

法人運営の基本ルール・体制を決定するとともに、役員の選任・解任を通じ、事後的に法人運営を監督する機関として位置付けられる。

(3)評議員の資格

社会福祉法人の適正な運営に必要な識見を有する者

(4)員数

7名以上(理事の員数(6名以上)を超える数)

(5)選任方法

定款で定める方法(例)評議員選任・解任委員会)によって選任

理事が評議員を選任・解任する旨の定めは法律上認められない。

(6)その他

・理事との兼務:不可

・親族等特殊関係者の制限:各評議員・各役員について特殊関係に当たる者は評議 員になれない。

(7)評議員会の決議事項

・理事・監事・会計監査人の選任及び解任

・理事等の責任の免除(一部・全部)

・理事・監事の報酬等の決議

・役員報酬等基準の承認

・計算書類の承認

・定款の変更

・解散の決議

・合併の承認

・社会福祉充実計画の承認

<改正後の理事・理事会について>

(1)理事会の位置付け

評議員会が決定した法人運営の基本ルールに基づき、業務を執行する。

(2)理事の役割

①理事長は理事会の決定にもとづき、法人の内部的・対外的な業務執行権限を有する。

対外的な業務執行をするため、法人の代表権を有する。

②理事長及び業務執行理事は3ヶ月に1回以上(定款で毎会計年度に4ヶ月を超える間隔で2回以上とすることが可能)、

自己の職務の執行の状況を理事会に報告する。

③業務執行理事は原則として代表権がないため、体外的な業務を執行する権限はない。

④理事長及び業務執行理事以外の理事は、理事会における議決権の行使等を通じ、

法人の業務執行の意思決定に参画するとともに、理事長や他の理事の職務の執行を監督する。

(3)理事の資格

理事には、次に掲げる者が含まれなければならない。

①社会福祉事業の経営に関する識見を有する者

②当該社会福祉法人が行う事業の区域における福祉に関する実情に通じている者

③当該社会福祉法人が施設を設置している場合は、当該施設の管理者

(4)員数

6名以上

(5)選任方法

評議員会の決議による。

<改正後の監事について>

(1)監事の役割

①理事の職務執行の監査、監査報告の作成

②計算書類等の監査

③事業の報告要求、業務・財産の状況調査

④理事の行為の差し止め請求

(2)監事の資格

監事には、次に掲げる者が含まれなければならない。

①社会福祉事業について識見を有する者

②財産管理について識見を有する者

(3)員数

2名以上

(4)選任方法

監事の選任・解任は、評議員会の決議による。

理事が監事の選任に関する議案を評議員会へ提出する場合の監事の同意又は請求については監事の過半数をもって決する。

 <改正後の会計監査人について>

(1)会計監査人の役割

①計算書類等の監査

②会計帳簿等の閲覧・謄写、会計に関する報告要求

(2)会計監査人の資格要件

①会計監査人は、公認会計士又は監査法人でなければならない

②公認会計士法の規定により計算書類について監査することができない者は、会計監査人となることができない。

(3)選任方法

①会計監査人は、評議員会の決議によって選任する。

②理事が評議員会に提出する、会計監査人の選任・解任・会計監査人を再任しない ことに関する議案の内容は、監事の過半数をもって決定する。

(4)解任方法

会計監査人が以下のいずれかに該当するときは、評議員会の決議によって当該会計監査人を解任することができる。

①職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき

②会計監査人としてふさわしくない非行があったとき

③心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき理事が評議員会へ提出する会計監査人の解任に関する議案の内容は、監事の過半数をもって決する。

監事は上記の解任事由のいずれかに該当するときは、監事の全員の同意によって当該会計監査人を解任することができる。この場合、監事の互選によって定めた監事はその旨及び解任の理由を解任後最初に招集される評議員会に報告しなければならない。

<改正後の理事、監事、会計監査人、評議員と法人との関係>

①法人とその理事、監事、会計監査人、評議員は委任関係にある

②民法の規定により、委任を受けた者(理事、監事、会計監査人、評議員)は「善管注意義務」(善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務)を負う。

つまり、理事、監事、会計監査人、評議員は、常勤・非常勤、報酬の有無にかかわらず、その職責に応じた注意義務をもって職務にあたることが求められる。

③委任関係はその基礎に人的信頼関係があることが前提となる。法人が理事、監事、会計監査人、評議員を選任する場合は、そのような信頼関係を構築できる人かどうかを考慮する必要がある。

<評議員、理事、監事、会計監査人の報酬>

(1)評議員の報酬は定款で定めなければならない。

(2)理事の報酬は、定款にその額を定めていないときは、評議員会の決議によって定める。

(3)監事の報酬は定款にその額を定めていないときは、評議員会の決議によって定める。

定款又は評議員会の決議によって監事の報酬総額のみが決定されているときは、その具体的な配分は監事の協議(全員一致の決定)によって定める。

(4)会計監査人の報酬は、監事の過半数の同意を得なければならない。

(1)~(4)について、無報酬の場合は、その旨を定める。