自分自身の財産について「どの財産をだれに渡すか」を決めるには「遺言書の作成」が必要です。しかし他にも「死因贈与」という方法で財産を渡すこともできます。今回は死因贈与契約と遺贈の違いやポイント、登記申請の注意点などについて解説します。
死因贈与契約とは?
贈与する人の死亡という条件がついた贈与契約を死因贈与契約といいます。死因贈与契約は贈与者(財産を与える者)の死によって有効になる生前契約の贈与です。具体的には、「私が死んだら300万円を贈与する」というような内容になります。
不動産(土地・建物)を贈与によって取得した場合、受遺者(贈与を受けた者)は、贈与者の死亡後にその旨の登記をしなければ第三者に対して自分の権利を主張することがきません。
遺贈との大きな違い
①当事者間の合意があるか
死因贈与契約は、贈与者と受遺者で贈与契約を結ぶ必要があり、受遺者の承諾が得なければ、契約を成立することができません。それに対し遺贈は、遺言による財産の贈与のことで、遺贈者の一方的な意思表示により行うものであり、予め受遺者の承諾を得ておく必要はありません。
②書面があるか
遺贈は自筆証書遺言・公正証書遺言など書面の作成が必ず必要となります。それに対し、死因贈与契約は書面での契約書を取り交わす必要は無く、口約束で死因贈与の契約が成立します。なお、死因贈与契約は、方式の定めがない分、遺贈と比べて、方式違反により無効となる可能性は低いと言えます。
但し、契約書を取り交わさない場合、その内容が贈与者・受遺者当人以外は確認できないため、公正証書で契約書を作成しておくのがよいでしょう。
③取り消し(撤回)ができるか
遺贈については、遺言書をいつでも撤回することができ、書き直しも自由です。これに対し、死因贈与契約については「その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する」とされており、基本的にはいつでも撤回することが可能です。
但し、受遺者が、贈与を受ける代わりに、贈与者の生活の面倒を見る等の義務を負うという「負担付き死因贈与契約」である場合は、受遺者がその義務の全部又はそれに類する程度の履行をしたときには、死因贈与契約の撤回が認められないことがあります。これにより、受贈者は、「負担・義務などを負わされたあとに契約を撤回される」というリスクを軽減できるとされています。
死因贈与契約の登記申請に関する注意点
死因贈与契約の場合、登記申請時には贈与者がすでに死亡していることから後のトラブルを防止するため、登記原因証明情報となる死因贈与契約書には、執行者を定め、公正証書で作成しておくことが望ましいといえます。
申請者に添付する印鑑証明書は、執行者の定めがある場合は、遺言執行者のものを、定めがない場合は贈与者の相続人全員のものが必要となります。また、相続人が登記義務者となる場合は、被相続人や相続人の戸籍謄本等、相続があったことを証する書面を添付する必要があります。
なお、執行者の定めがある場合、その者の権限を証する書面として、死因贈与契約書が公正証書で作成されている場合は公正証書、私署証明(公務員以外の者が作成した契約書など)の場合は、当該文書に押印した贈与者の印鑑証明書または贈与者の相続人全員の承諾書と印鑑証明書の添付が必要になります。
遺言と死因贈与契約、どちらを選べばいいか
遺贈との違いで紹介した通り、大きな違いとしては、死因贈与契約は双方の契約行為で口頭での契約で成立するのに対し、遺贈は一方的な意志表示と書面が必要だという点です。なお、死因贈与契約について、口頭で成立しますが、それを証明するにあたりトラブルが発生するリスクが高いです。そのため、できれば書面で証拠を残すのが望ましいでしょう。
両方とも法的効力についても大差はないので、個々の事情や税務面等、総合的な観点から判断してくれる専門家に相談するのが望ましいでしょう。