BLOG

専門家によるブログ

行政書士業務ブログ

役員の損害賠償責任免除の方法

記事作成日2018/06/22 最終更新日2019/12/17

X
facebook
copy

取締役や監査役等の役員は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負うとされています(会社法第423条1項)。

会社に対する責任とは、任務懈怠責任、利益相反取引に係る責任、競業避止義務、剰余金の配当等に関する責任等があげられます。

1)総株主の同意による免除

取締役や監査役等が任務を怠ったことにより生じた株式会社に対する賠償責任(会社法第423条1項)は、総株主の同意があれば免除することができます(会社法第424条)。

2)株主総会の特別決議による責任の一部免除

取締役や監査役等が任務を怠ったことにより生じた株式会社に対する賠償責任(会社法第423条1項)は、当該取締役等が職務を行うことにつき、善意でかつ重大な過失がないときは、株主総会の特別決議によって、法定の額まで免除することができます(会社法第425条1項)。

3)責任限定契約による免除

会社法423条1項の賠償責任を負う役員が善意で重過失がない場合は、定款で定めた額の範囲内であらかじめ会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を、賠償の限度額とする旨の契約を業務執行権のない取締役や監査役等と締結することができる旨を定款で定めることができます(会社法427条1項)。

この責任限定契約を締結している業務執行権のない取締役や監査役等の責任は、その規定に従って限定することができますが、代表取締役や業務執行取締役とは責任限定契約を締結することができません。

責任限定契約規定の定款記載例

(責任限定契約)

第30条 当会社は、会社法427条1項の規定に基づき、社外取締役との間で会社法423条1項の賠償責任を限定する契約を締結することができる。ただし、当該契約に基づく賠償責任の限度額は、法令が定める額とする。

4)取締役会決議による責任免除

株主総会の特別決議による責任の一部免除と同様に、責任を負う取締役等につき、その職務執行が善意でかつ重大な過失がなく、責任の原因となった事実の内容、当該取締役等の職務の執行の状況その他の事情を考え、特に必要と認められることが条件となっています。

①取締役2人以上の監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社であること。

②役員等の任務懈怠責任であること

③職務を行うにつき善意・無重過失であること

④定款の定めがあること

取締役等による責任の一部免除をするためには、定款において定めなければなりません。

この規定については、責任限定契約に関する定めと同一条文に規定されることもあります。

取締役等による責任の一部免除の定款の記載例

(取締役の責任免除)

第20条 当会社は会社法第426条第1項の規定により、取締役(取締役であったものを含む。)の同法第423条第1項の賠償責任を、法令の定める限度において、取締役会の決議によって免除することができる。

2 当会社は、会社法第427条第1項の規定により、取締役(業務執行取締役を除く。)との間に、同法第423条第1項の賠償責任を限定する契約を締結することができる。ただし、当該契約に基づく責任の限度額は、法令が規定する額とする。