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外国人の新卒採用のポイント

記事作成日2019/12/09 最終更新日2023/01/18

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人手不足や政府の外国人労働者の受け入れ拡大施策の影響もあり、日常生活や職場でも外国人労働者を見かけることが多くなりましたが、企業側にとって外国人留学生の新卒採用はなかなかハードルが高く、即戦力ではない新卒留学生を日本人と同じように教育していくことに抵抗感がある企業が多いようです。しかし、コロナ禍で企業が採用活動を控えている今、優秀な人材を獲得するチャンスでもありますので、この機会に外国人採用を検討してみてはいかがでしょうか。

ビザとは

日本には現在29種類のビザがあり、日本で行う活動によって取得するビザが異なります。このビザで認められる活動以外の活動は原則認められず、場合によっては不法就労となり国外退去となる可能性もありますので、外国人本人はもちろん、外国人を雇う企業も本人が持っているビザで認められる活動の範囲を十分に理解する必要があります。今回は、一般的に日本の企業に雇用されて働く外国人が取得するビザである、「技術・人文知識・国際業務」についてご説明いたします。

「技術・人文知識・国際業務」の要件一覧
技術・人文知識・国際業務の要件一覧表

学歴・実務経験について

学歴と実務経験はどちらかを満たしていれば問題ございません。

※大学と同等以上とは

海外の教育機関には日本の大学や短期大学等には当てはまらない独自の教育機関が存在することがありますが、その場合でも「大学と同等以上」と記載することで学歴要件を満たす余地を与えています。その教育機関の修業年数、課程、学位の授与、卒業論文の制度等について書面で説明することで、大学と同等以上であることを申請人が立証する必要があります。

業務内容について

どんな仕事でもできるわけではなく、業務内容には制限があります。大きく分けて「技術・人文知識」分野と、「国際業務」分野に分けられますので、それぞれの職種例を見ていきます。

【技術】

理系分野の仕事で、職種は以下のようなものが挙げられます。

・プログラマー
・システムエンジニア
・設計士 など

【人文知識】

文系分野の仕事で、職種は以下のようなものが挙げられます。

・企業法務
・コンサルタント
・営業企画 など

【国際業務】

外国人特有のスキルを生かした仕事で、職種は以下のようなものが挙げられます。

・ホテルでの外国人観光客対応者
・海外進出の為の現地取引先開拓
・英会話教室の先生 など

認められる業務内容について、法律上は「理学、工学そのほかの自然科学分野もしくは法律学、経済学、社会学その他人文科学分野に属する技術もしくは知識を要する業務、外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」と明文化されていますが、一言で表現するとすれば、「専門的な知識や技術を使う業務」「外国人特有のスキルを生かす業務」であると言えますが、会社によって仕事の内容は千差万別で、実務上、業務内容については最も判断が難しい要件でもあります。

また申請先である出入国在留管理局(以下、入管)は認められるかどうかについて、事前に判断することはなく、実際に申請してみないと結果はわからないため、業務内容について判断に窮する場合は専門家に問い合わせることをおすすめいたします。

学歴・実務経験と業務内容との関連性

従事しようとする業務に必要とされる知識や技術に関連する学歴又は実務経験が求められます。例えば経済学部を卒業した方がプログラミングの仕事でビザの申請をした場合、学歴と業務内容との関連性がないと判断され、不許可となる可能性が高いです。「技術・人文知識・国際業務」で想定している活動は知識や技術を要する業務ですので、その知識や技術が備わっているかを証明することは実務上重要です。

手続のスケジュール

実際のビザ申請にかかる時間は、手続きの種類や申請人の状況、会社の規模等によって変動しますので、留学生の4月新卒採用時のスケジュールを例にとり説明いたします。

~10月:内定

通常の日本人採用と同じように内定を出しますが、内定通知の前にビザの要件を満たしているか確認します。

~12月:必要書類の収集

本人と会社側、それぞれの必要書類の収集及び申請書類の作成をします。申請書類には、入社後の業務内容を記載しますので、この時点でどのような仕事をさせるかを具体的に決めておく必要があります。

12月~1月:出入国在留管理局(以下、入管)へ申請

申請者は原則外国人本人ですが、申請取次制度があり弁護士、行政書士でも申請可能です。申請後、内容について疑義が生じた場合入管から直接申請者や企業宛に問い合わせが入る場合があります。入管から問い合わせが入った場合、その回答も審査の対象となりますので、その場でむやみに回答せず、後日回答する等丁寧に対応することが重要です。

※申請取次の場合、原則取次者に問い合わせが入ります。

2月~3月:結果交付

入管での審査期間は1~2か月程度ですが、書類の不備や入管の混雑状況等によってさらに時間を要する場合もあります。特に新卒採用時の申請は入管が混み合うことが予想されますので、余裕をもって申請することが大切です。

3月下旬:新しい在留カードの受取

日本に中長期滞在する外国人は在留カードを持っています。ビザが変わる時や更新の時は在留カードも変わりますので、3月の卒業後、卒業証明書をもって入管に新しい在留カードを受取に行きます。

外国人材の探し方

①人材紹介会社に依頼する

その企業や仕事に合った外国人材を代わりに探してくれますので、最も手間がかからない方法ですが、その分コストもかかります。

②自治体のサービスを利用する

各自治体で外国人の就職サポートを行っている場合があります。

※ご参照

・外国人雇用サービスセンター
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyoforeigner/gaikokujin_center_goannai/center/center_goannai.html

・東京外国人材採用ナビセンター
https://tir-navicenter.metro.tokyo.lg.jp/

まとめ

「技術・人文知識・国際業務」のビザは要件が細かく定められていますが、実際に申請するとなると判断が難しい場面が多くあります。申請に必要な書類についても入管のHP上で確認できますが、素直に必要書類を集めただけでは許可交付とはならない場合が多々あります。

1度提出した申請書類は入管ですべて保管されていて、更新や変更の際にも参照されますので、過去の申請書類と齟齬があると不許可となったり、1度の申請で申請人側、企業側の今後の申請に悪影響が出てしまうこともあります。

特に初めて外国人の採用を検討している会社様は専門家と相談しながら進めることをおすすめいたします。

※参考資料「外国人の新卒採用のポイント」レジュメ