事業を譲り受ける会社がもともと宅建免許を持っている場合、事業譲渡後もそのまま免許を維持できます。
では、事業を譲り受ける会社が宅建免許を持っておらず、事業譲渡により宅建業を譲り受ける場合、事業を譲渡する会社の宅建免許も引き継ぐことができるでしょうか。
目次
<Q&A>
Q:X社は宅建免許をもっておらず、Y社は宅建免許をもっています。
X社はY社の不動産部門を譲り受けることを検討しています。
事業譲渡により、X社はY社の宅建免許も引き継ぐことができるのでしょうか。
A:X社とY社は別会社なので、X社はY社の宅建免許を引き継ぐことはできません。
X社が宅建免許を取得したい場合は、X社自身が免許取得の申請をする必要があります。
<ポイント>
1)事業譲渡により、他社の宅建業を譲り受けても、その会社の宅建免許も一緒に引き継ぐことはできません。
2)事業を譲り受ける会社(X社)が、宅建免許を取得したい場合は、その会社(X社)自身が宅建免許の申請をして、免許を取得する必要があります。
3)宅建免許の申請をしてから、免状が発行されるまで、一定の時間がかかるので、事業譲渡後の事業開始日の調整が必要な場合があります。
4)宅建免許を取得するためには、一定の条件を満たす必要があるため、事業譲渡と同時に許可を取得することは難しいケースが多いのが実情です。
5)宅建免許の取得とともに、法務局への営業保証金供託又は保証協会への分担金納付が必要です。
<事業を譲り受ける会社(X社)が宅建免許を取得するためには、何をすればいいのか>
1)まず、宅建免許の条件を満たすことが必要です。
主な条件は、以下のとおりです。
○専任の取引主任者がいること
宅建業を営む事務所に常勤し、もっぱら宅建業の業務に従事する取引主任者(専任の取引主任者)を配置する必要があります。
一つの事務所に配置する人数は、宅建業務に従事する従業員5名につき専任の取引主任者1名以上です。
○宅建業を営む事務所が独立していること
同一フロアに他社が同居している場合は、他社を通ることなく事務所に出入りできることが必要です。
○代表取締役又は政令で定める使用人が事務所に常勤していること
代表取締役が事務所に常勤できない場合は、その事務所の代表者として「契約を締結する権限を有する使用人(政令で定める使用人)」を常勤させる必要があります。
2)スケジュールの管理を行うことが重要です。
免許申請の準備期間、申請後の審査期間、保証協会への加入手続期間の見通しをたて、免許取得日の見込みと事業の開始時期のスケジュールを立てましょう。
申請後の審査期間(標準処理期間)は以下の通りです。
○都道府県知事免許(宅建業の事務所がひとつの都道府県内にある場合):約30日~40日
○国土交通大臣免許(宅建業の事務所が複数の都道府県にまたがってある場合):約3ヶ月
※ただし、保証協会に加入する場合は、保証協会の審査が完了してから免許が交付される。
○保証協会への加入手続:約2ヶ月
事業を譲り受ける会社(X社)は、1)の条件が整って初めて宅建免許の申請をすることができます。その後、審査期間を経て許可されます。
事業譲渡から免許日まで一定の時間を要するため、その間宅建免許がない状態になります。(つまり、下記の①から⑤まで期間、宅建免許がなく、宅建業を行えない状態になります。)
①事業譲渡→②免許申請→(②‘保証協会加入申込)→③審査→(④営業保証金供託)→⑤免許証交付
3)法務局への営業保証金の供託 又は 保証協会への加入・分担金納付
宅建業を開始するにあたり、①法務局への営業保証金の供託 又は ②保証協会への加入・分担金納付が必要です。
①法務局に営業保証金を供託する場合
宅建免許申請の審査終了後、保証金を供託します。
供託が確認されると、免許証が交付されます。
②保証協会に加入・分担金を納付する場合
宅建免許申請後、保証協会に加入の申し込みをします。
宅建免許申請の審査が完了し、かつ保証協会での審査、分担金の納付が確認されると、免許証が交付されます。
原則として、事業譲渡会社(X社)の供託、保証協会での地位を引き継ぐことはできないため、事業を譲り受ける会社が新たに手続をする必要があります。
<事業譲渡の前後を通して、宅建業を行うためにはどうしたいいのか>
1)事業を譲り受ける会社(X社)が事業譲渡前に宅建免許を取得する
いずれにしても、事業を譲り受ける会社(X社)が宅建免許を取得しなければなりませんので、事業譲渡前に、X社が宅建免許を取得しておく必要があります。
そのためには、事業譲渡前のX社が前述の条件を満たさなければなりません。