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遺言書の作成に関してこちらの資料をぜひご活用ください「遺言書作成の注意事項チェックリスト」
保管制度はどうしてできたか
相続問題に関心を持つ人の増加
近年、高齢社会の進展で、相続に関する関心が市民レベルで高まっています。公正証書遺言の作成件数は、概ね右肩上がりで増加しています。日本公証人連合会の統計によると、平成20年が76,436件なのに対し、令和元年は113,137件と、約10年で約1.48倍の作成件数となっています。
自筆証書遺言の弱点
・紛失などの危険
本人が自分で書く自筆証書遺言は、気軽に書ける反面、書いた後に紛失したり、改ざん・隠ぺいされたりというデメリットもあります。
・遺言書の検認手続き
自筆証書遺言の場合は、遺言者の死亡後に家庭裁判所で「遺言書の検認」という手続を経なければなりません。
遺言書の検認を受けなくても遺言書が無効になったりするわけではありませんが、検認を受けていないと銀行や不動産の相続手続を進めることができません。
・相続トラブル
相続人により遺言書の廃棄、隠匿、改ざんが行われるおそれがあり、これらの問題により相続をめぐる紛争が生じるおそれがあります。
・様式不備
民法第968条で定められた様式を満たしかつ自ら執筆することが求められます。もし、様式不備と判断されれば遺言書が無効になってしまいます。
法務局における遺言書の保管制度
今回の制度改正で自筆証書遺言の保管制度が新設され、自筆証書遺言を法務局で保管できるようになりました。この保管制度により、法務局で遺言書を保管するほか、遺言を書いた人が死亡した後であれば全国の法務局で遺言書の有無やその内容が確認できるようになりました。
遺言書の保管申請手続き
保管の申請の対象となるのは、自筆証書遺言に係る遺言書のみです。また、遺言書は、封のされていない、法務省令で定める様式に従って作成されたものでなければなりません。
遺言書の保管の申請場所については、次の場所を管轄する法務局で行います。(但し、既に他の遺言書を遺言書保管所に預けている場合は、その遺言書保管所になります)
・遺言書を書いた人の住所地
・遺言書を書いた人の本籍地
・遺言書を書いた人が所有している不動産の所在地
また、遺言者は、上記の管轄する法務局に自ら出頭して行わなければなりません。その際、申請人(遺言者)の本人確認書類が必要です。
遺言書以外には、法務省所定の申請書に必要事項を記入し、保管申請の前には予約をする必要があります。保管申請後は、遺言者の氏名、出生の年月日、遺言書保管所の名称及び保管番号が記載された保管証が渡されます。
遺言書保管官による遺言書の保管及び情報の管理
保管の申請がされた遺言書については、遺言書保管官が、遺言書保管所の施設内において原本を保管するとともに、その画像情報等の遺言書に係る情報をデータとして管理します。
遺言者による遺言書の閲覧、保管の申請の撤回及び変更
遺言者は、保管されている遺言書について、その閲覧を請求することができ、また、遺言書の保管の申請を撤回することができます。保管の申請が撤回されると、遺言書保管官は、遺言者に遺言書を返還するとともに遺言書に係る情報を消去します。
遺言者の生存中は、遺言者以外の方は、遺言書の閲覧等を行うことはできません。また、遺言者は、保管の申請時以降に氏名、住所等に変更が生じたときは、遺言書保管官にその旨を届け出る必要があります。
相続開始後の手続き
遺言書を書いた人が死亡して相続が始まった場合は、次のことができます。
・誰でもできる事項
→自分が相続人になっている遺言書の有無の確認(遺言書保管事実証明書の交付請求)
・相続人など関係者ができる事項
→遺言書の原本の閲覧
→遺言書の画像データの確認(遺言書情報証明書の交付請求)
遺言書の有無の確認と画像データの確認は、全国どこの法務局でも申請ができます。遺言書の原本の閲覧は、遺言書が保管されている法務局で申請します。
遺言書の原本の閲覧や画像データの確認の申請が行われると、法務局からすべての相続人に対して遺言書を保管していることが通知されます。なお、自筆証書遺言は家庭裁判所で検認手続きを行う必要がありますが、法務局で保管した自筆証書遺言は検認手続きが不要になります。
手数料
遺言書の保管の申請、遺言書の閲覧請求、遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付の請求をするには、手数料を納める必要があります。
手数料の金額は、公正証書遺言にかかる手数料よりは安価になります。
遺言書の保管の申請:一件につき3900円
遺言書の閲覧の請求(モニター):一回につき1400円
遺言書の閲覧の請求(原本):一回につき1700円
遺言書情報証明書の交付請求:一通につき1400円
遺言書保管事実証明書の交付請求:一通につき800円
申請書等・撤回書等の閲覧の請求:一の申請に関する申請書等又は一の撤回に関する撤回書等につき1700円
財産目録に限ってパソコン作成が可能に
自筆証書遺言に関してはもう1つの改正事項があり、自筆証書遺言のうち財産目録に限ってはパソコンで作成することが認められるようになりました。
自筆証書遺言は全文を自筆で書かなければなりませんが、財産の数が多い場合にそれらのすべてを自筆で書くことは大変な作業です。また、遺言書を書いた後で財産の内容に変更があった場合にそのつど訂正したり、全部書きなおしたりすることも手間がかかります。
そこで、自筆証書遺言の作成のルールが緩和されることになり、遺言書のうち財産の目録については自筆で書かなくても良くなりました。財産目録をパソコンで作成するほか、預金通帳などのコピーを添付することもできます。ただし、財産目録の各ページ(両面に記載する場合は両面とも)に署名・押印することが必要です。
保管制度を利用するメリット・デメリット
メリット
■遺言書の紛失・改ざんリスクの防止
→法務局にて自筆証書遺言を保管してもらうことで、遺言書が紛失・亡失されることを防ぎ、また、相続人等の関係者による遺言書の改ざん、廃棄、隠匿などのリスクも防ぐことができ、安心して確実に遺言を残すことができます。
■家裁での検認申立が不要
→自筆証書遺言については、遺言者が亡くなると、遅滞なく遺言書の発見者や保管者が家庭裁判所において、遺言書の存在や内容を相続人に知らせ、偽装・変造を防ぐ「検認の申立」という手続が必要です(民法1004条)。
しかし、今回の法務局にて保管される自筆証書遺言については、この検認の申立手続が不要となり、残された関係者や相続人の負担が少なくなります。
■公正証書遺言作成より費用が安い
→遺言の安全性、確実性から公証役場にて公証人が作成する公正証書遺言を作成される方も多くいらっしゃいます。
公証役場において公証人が作成する公正証書遺言は、財産(遺産)の金額や条件によって変動するので参考程度となりますが、財産1億円で約5~15万円程かかると言われています。その点、法務局にて自筆証書遺言の保管申請をする際の手数料は1通につき3900円と費用はかなり安くおさえることができます。
■形式的なチェックをしてもらえる
→申請時に遺言保管官が、遺言書が法務省令に定める様式に則っているかどうかを確認するので、様式不備によって、遺言が形式的に無効となることを避けることができます。
デメリット
■遺言文書作成の負担
→公正証書遺言を作成する場合は、公証役場において、公証人に遺言の内容を口頭で伝え、公証人がそれを文書にします。
他方、法務局における遺言書の保管制度の場合は、自分で遺言書を作成しなければなりません。したがって、自書できない人は、法務局における遺言書の保管制度を利用することができませんし、また、知識のない人が作成した遺言書は、意図した通りの効果が生じないことや無効となってしまうことがあります。
■遺言者本人の法務局への出頭が必要
→公正証書遺言の場合は、公証人に、病院や自宅に出張してもらって手続きをすることができますが、法務局における遺言書の保管制度の場合に遺言保管官が出張する制度は予定されていません。
まとめ
法務局による自筆証書遺言保管制度により、遺言書を自分で保管することに不安がある方は、この制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
但し、遺言書保管官が確認するのは、遺言書の形式面の不備に留まります。内容面も確実な遺言書を作成するには、専門家に遺言書案の作成を依頼した上で、本制度を利用するのがオススメです。
TOMAグループでは、新制度に対応した遺言書の作成や遺言の執行も行っております。
ご興味ある方は、是非お問い合わせください。