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会社法改正のポイント及び中小企業への影響について

記事作成日2021/02/05 最終更新日2021/02/06

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2019年12月4日、会社法の一部を改正する法律が成立し、同月11日に公布されています。
改正法は、主として上場企業・大企業に影響のある内容が多いものの、会社補償・役員等賠償責任保険契約に関する規律の整備など、中小企業にも関係する内容が一部含まれています。
今回は、中小企業が影響する箇所をピックアップし、概要及びポイントについて紹介します。

改正会社法の概要

今回の会社法改正は、2005年に成立した会社法の施行後、2014年の改正に続く2度目の本格的な改正です。
会社法改正案の提出理由は、株主総会の運営及び取締役の職務執行の一層の適正化等を図ることを目的とした、各種の制度や規律の導入です。
改正法の施行は、公布から1年6か月後である2021年3月1日と施行時期が迫っております。ただし、改正内容中、株主総会資料の電子提供制度、および会社支店所在地における登記廃止は、システムを整える関係で公布から3年6か月を超えない時期に施行されます(改正法附則1条)。

株主総会に関する規律の見直し

①株主総会資料の電子提供制度の創設

現行法では原則として紙での提供が必要な株主総会資料(株主総会参考書類、計算書類、事業報告など)を、あらかじめ定款で定めることによって、株主総会資料をウェブサイトに掲載し、株主に対してそのアドレス等を書面で通知する方法で提供することが可能となる制度が創設されました。
なお、この改正点については、公布から3年6か月以内の日から施行されるため、施行はもう少し先になります。
上場会社は、この制度を利用することが義務づけられます。非上場の中小企業は、義務ではないものの、この制度を利用することができますが、株主数が限られていることの多い非上場の中小企業には、利用するメリットはそれほどない場合が多いと思われます。
なお、非上場の中小企業であれば、通常は、1週間前までに株主総会招集通知を発すれば足りるところ、電子提供制度を利用する場合には、これが2週間前までとなり、株主総会資料のウェブサイトへの掲載も3週間前までには行なう必要があることなどにも注意が必要です。

②株主が株主総会に提案できる議案数の制限

総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有する等の株主は、株主総会の日の8週間前までに会社に通知することで、総会に議案を提出することができます(株主提案権)。
しかし、1人の株主から非常に多くの提案がされるなど濫用される場合もありました。
そこで改正法は、取締御役会設置会社の場合、1人の株主が1つの株主総会で提案できる議案の数を10個までに制限されました(305条5項)。
ただし、取締役や監査役の選任議案は人数にかかわらず1個の提案とされます(305条4項)。これは、取締役等の人数が多いときに1人の取締役等につき1個の議案と数えられると、すぐに10個が埋まってしまうからです。
この改正も、非上場の中小企業に適用されます。

取締役等に関する規律の見直し

①取締役の金銭でない報酬等に関する規律の見直し

取締役の報酬として株式または新株予約権を与える場合は定款または株主総会決議でその上限数を決めなければならず、株主総会に提出する取締役の報酬に関する議案が適正なものであることを会社は株主総会で説明しなければならないとされました(361条1項、4項)。
非上場の中小企業においても、報酬として株式または新株予約権を与えることはあると思いますので、その場合は、法定の事項の決議が漏れないように注意する必要があります。

②会社補償・役員等賠償責任保険契約に関する規律の整備

役員等に対して責任の追及が行なわれた場合の費用や賠償金を会社が補償する契約を締結する際、取締役会決議が必要であるなど手続が明確化されました。
なお、役員等の故意または重大な過失による責任などについては補償できないことも定められています。
また、会社が役員等を被保険者とする役員等賠償責任保険に加入する際も、取締役会決議が必要であるなど手続が明確化されました。
非上場の中小企業の場合も、役員等の人材を確保するために、改正法に定められた手続に従って、会社補償や役員等賠償責任保険契約を利用することも考えられます。

③業務執行の社外取締役への委託

株式会社が社外取締役を置いている場合で、当該株式会社(株主)と取締役との利益相反状況があるときに、当該株式会社が、社外取締役に対して、その都度、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、当該株式会社の業務を執行することを委託することが可能となりました。
非上場の中小企業においても、社外取締役を設置している場合は利用できそうです。

④取締役等の欠格条項の削除及びこれに伴う規律の整備

取締役等の欠格事由とされていた成年被後見人および被保佐人であることが削除され、成年被後見人や被保佐人でも、各々(成年被後見人の同意を得た上での)成年後見人が成年被後見人に代わって取締役等への就任の承諾をすることや保佐人の同意を得ることで取締役となることができるようになります。

その他の改正

①株式交付制度の創設

現行法上、自己の株式を対価として他の会社を子会社化する場合、株式交換という制度がありますが、完全子会社化する場合でなければ利用できません。
そこで、改正法により、完全子会社化する場合ではなくても利用できる、株式交付という制度が新設されます。他の会社を子会社化する場合の選択肢が増えることになります。
株価の算定など難しいところもありますが、キャッシュに余裕がない非上場の中小企業間での企業買収(事業承継)でも利用できそうです。

②議決権行使書面の閲覧謄写請求の拒絶事由の明文化

株主が、議決権の行使書面の閲覧等を請求する場合に、この請求の理由を明らかにすることが求められるようになりました。また、当該請求を拒否できる事由が新たに定められました。

③会社の支店の所在地における登記の廃止

現行法上、会社が支店を設けた場合には、支店の所在地における登記が必要となりますが、改正法により、不要となります。
非上場の中小企業においても、支店を出している場合は、支店の所在地での登記が不要になるので、手間とコストが軽減できそうです。

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