海を越えた人材の行き来が当たり前になった現代、海外進出する企業も多くあります。そんな中、2017年12月に「平成30年度税制改正大綱」の公表 がありました。これにより国際課税はどう影響を受けるのか、そもそもPE(恒久的施設)とは何かについて、詳しくご紹介していきます。
目次
PE(恒久的施設)とは
PEとは、事業を行うための一定の場所を指します。具体的には、支店・出張所・事業所・工場・倉庫業者の倉庫などのことです。ただし、保管・展示・引き渡しなどの補助的業務のみを行う場合はPEに該当しません。また、PEは3つの種類に分類されます。
これまでのPEの3つの種類~支店・建物・代理人~
日本の税法上、PEは「支店PE」「建設PE」「代理人PE」の3種類に分けられます。(租税条約では別途規定されています)
支店PE
支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫、鉱山・採石場等天然資源を採取する場所はPEに含まれます。ただし、資産を購入したり、保管したりする用途のみに使われる場所、あるいは広告、宣伝、情報の提供、市場調査、基礎的研究等、その事業の遂行にとって補助的な機能を有する活動を行うためにのみ使用する場所は含まれません。
建設PE
建設、据付け、組立て等の建設作業等のための役務の提供を、1年を超えて行う場合のその場所は、PEとみなされます。
代理人PE
非居住者のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、常にその権限を行使する者や在庫商品を保有しその出入庫管理を代理で行う者、あるいは注文を受けるための代理人等はPEとみなされます。ただし、代理人等が、その事業に係る業務を非居住者に対して独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合の代理人等はPEとみなされません。
(JETRO日本貿易振興機構「恒久的施設(Permanent Establishment: PE)とは」より引用 https://www.jetro.go.jp/)
PEにまつわる一番の問題は「PE認定回避」
PEは、そのPEがある国から課税されます。つまり、日本企業がインドでビジネスを行うに当たり、PEがないからと申告せずにいたにもかかわらずPEありと認定された場合、本社がそのインドビジネスの所得について現地で課税されてしまうことになります。
そのため、PEの定義に抵触しない活動だけを行う「PE認定回避」の動きが問題となっていました。例えば、建設PEの認定を逃れるため、10ヶ月に1度人を変え契約し直すことで「1年を超える役務の提供」という条件から意図的に外れる、等の動きです。
平成30年度の税制改正で何が見直されたか
この問題を受けて、政府は主にPEの認定基準を見直しました。どのような見直しがあったのか、ご紹介していきます。
保管・展示・引き渡しなどを目的とした施設でも、補助的機能でない場合はPEに認定
この条件はこれまでも支店PEについて明記がありましたが、改めて強調の意味で明文化されたものです。補助的機能である施設はPEに該当しない、ということをより強く示しています。
PE回避を目的とした契約期間の分割は、合算して判定する
建設PEの判定条件から逃れるために短期間で契約をし直しても、実態として役務の提供が続いていれば合算してPE認定する、ということです。見かけ上を変えるだけではPE回避できないよう、改正されています。
代理人PEの認定条件が厳しく
在庫保有代理人および注文取得代理人に関する規定を削除するとともに、常習代理人に関する規定が厳しくなりました。非居住者の事業に関する契約に加え、資産の所有権の移転に関する契約を継続・反復する代理人は代理人PEに認定されるようになったのです。人為的なPE認定の回避が問題になっていたことに対し、認定条件を厳しくした形です。
税制改正の結果、PE認定の条件は更に厳しいものになりました。とはいえ、租税条約にある「PEなければ課税なし」という原則は変わりません。これから海外へ進出しようとしている企業の方や既に進出している企業の方は、情報収集をしっかりと行い社内の税務体制を見直すなど、予期せぬトラブルがないよう、十分に備える必要がありそうです。
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