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BEPSプロジェクト 税源浸食と利益移転

記事作成日2016/09/05 最終更新日2017/01/27

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BEPSとは

BEPSとは、Base Erosion and Profit Shiftingの略であり、企業が国際的な隙間や抜け穴を利用した租税回避行為を行うことにより、税負担を軽減している問題をいいます。

BEPSプロジェクトが始まったのは、リーマンショック以降、各国が税収の確保のために税負担率を高めていった一方、一部の多国籍企業が国際的な隙間や抜け穴を利用したタックス・プランニングを行うことにより、活動実態に比べて低い税負担しかしていないことがが、社会問題や政治問題となったためです。

OECDの租税委員会が2012年にBEPSプロジェクトを立ち上げ、2015年には最終報告書が出来上がっています。短期間で最終報告書の完成までたどりついたのは、各国がBEPSに対して重要な課題だと認識していたからと思われます。

BEPSプロジェクトの効果

BEPSの検討前は、各国は自らの課税権を守りながら、企業のグローバルな活動を妨げないように、国際的な二重課税を排除することを目的とした動きが多く見られました。

しかし、BEPSの検討が始まってからは、各国の課税権の網から逃れていた所得をいかに把握し、企業が本当に活動している場所で課税権を認めるか、という考えに変わっていっています。すなわち、各国の法人税引き下げ競争のような対立の考えから、お互い協力して所得の把握に努める協調の考えへ変化してきています。

納税者に与える影響

では、納税者はどのような点に気をつければいいのでしょうか。一つは、BEPSプロジェクトの考え方は、各国において税制改正を行うことで初めて実行されるということです。

日本においては、平成28年の税制改正で、移転価格の文書化義務についての大幅な改正がありました。この改正は、BEPSプロジェクトの提言を受けた改正であり、日本では早くもBEPSの考えが導入されました。このように各国の税制改正があって、はじめてBEPSの内容が導入されることとなります。各国の税制改正を確認することをお勧めします。

二つ目は、各国が協調して所得を把握しようとしているため、各国の税務当局で納税者の情報交換が活発になることが予想される点です。

例えば、日本の居住者が海外に銀行口座など資産を保有している場合は、日本の税務当局が他の国から口座の情報をより簡単に入手できることもでてくるでしょう。また、日本の税務当局も他国の求めに応じて情報を提供することもあります。このため、各国の納税者は所得の漏れがないように申告することがますます求められることとなるでしょう。